2018.12.14 06:41/ Jun
先日発売された新刊「残業学」ですが、おかげさまで、AMAZONのマジメント・人事管理分野などのカテゴリーで1位、総合18位を記録することができました。本当にありがとうございます。
残業学ー明日からどう働くか、どう働いてもらうのか?(AMAZON)
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ご購入をいただいたみなさまに、この場を借りて、心より御礼を申し上げます。長時間労働是正の問題に、もしご興味がおありな方は、ぜひ、ご笑覧くださいませ。
現場で働くすべての人々、マネジャーの皆様、経営者の皆様、そして、分野は異なりますが、長く労働時間問題に苦しむ教育現場の皆様にも、お読みいただける本だと思っております。どうぞご高覧のほど、お願い申し上げます。
ところで、もう1日だけ、もう1日だけ・・・この「残業学」のお話をさせてください(笑)。
このブログに、文字に残しておきたいものとしては、「残業学にかけた個人的な思い」ーここ数年の「僕の研究を貫くモティーフ」についてです。
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ここ数年の主な著作を改めてみかえしてみますと、実は、複数の作品に共通するモティーフが浮かび上がってきます。それは何だと思われますか? ま、いきなり、朝っぱらから、そんなこと言われても、わかりませんよね。
ここ数年、僕がひそかに自分の研究に賭けてきた思い。
それは文字にしてしまいますと、あまりに月並みなのですが、
「多様性との格闘」
です。
もう少し具体的に申しますと、僕は、ここ数年、意識的に、下記のようなことを問う研究をしてきたつもりです。
1.多様な働き方をのぞむ人々が
2.いかにして、ワクワクと働くことができるのか?
3.多様な働き方を迎え入れるためには
4.職場や会社は何を改善しなくてはいけないのか?
5.そして日本社会はどのように変わらなければならないのか?
を、微力ながら、様々な共同研究を通して、志をともにするみなさまと明らかにしたいと願ってきました。
「残業学」では、多様な働き方の障害となりうる「長時間労働」の問題を扱いました。
「女性の視点みなおす人材育成」では、ジェンダーを皮切りにしつつ、誰もが参加しやすい職場とは何かを考えました。
「アルバイトパート人材育成入門」では、人材不足を敢えて社会背景にみすえ、雇用形態にかぎらず「誰もが労働参加できるような人事の仕組みをつくること」を主張しました。
「組織開発の探究」では、多様な働き方をのぞむ人々を迎え入れる会社や組織が、いかにしてひとびとをチームアップするのかを論じました。
要するに、論じたかったことは、すべて「多様性との格闘」なのです。
大学院の指導学生の浜屋祐子さんらの書籍出版にも参加できたこともよい思い出です。この本で、浜屋さんは、「育児をしながら働く人々」に「引け目」を感じる必要はない、それは長い目でみれば「仕事の役に立つ」ことを実証なさいました。
次から次へと、何の脈絡もなく、研究をしているわけではございません(笑)
僕には、5年ごとくらいに、すべての研究を統一するモティーフがあります。
この5年は、志をともにする方々との出会いを大切にしつつ、自分としては「多様性と腹をくくって向き合うこと」に全力を尽くしてきたつもりです。
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そして、これは、僕にとっては、過去の自分の研究の「懺悔」でもあります。
人事・人材開発の研究を志した、今から15年前くらいの自分の著作を見直すと、僕は、忸怩たる思いにかられることがあります。
それは端的に申し上げますと、当時の僕は、これほどまでに
「多様性が高まる社会」を予見できていなかった
ということです。
もちろん、ダイバーシティとか、そういう専門用語は、頭ではわかっていました。しかし、頭ではわかっていたつもりでしたが、当時行っていた研究の枠組みや分析モデル、そして研究対象選定などを見ていると、僕は、認識が甘かったと思っています。
かつての僕は「均質な職場」を研究していました
かつての僕は「多様な働き方」が高まる職場を予見できていませんでした
ここ数年かけてきた「多様性との格闘」には、この当時、自分が果たせなかったことを、何とか実現したいという願いがございます。それが十分かどうかはわかりませんが、そうした「懺悔」の思いを片手に、しかしながら、この「多様性との格闘」に希望をもちつつ向き合うことをもって、本をしたためてきたつもりです。単に過去を「懺悔」するだけでなく、そこから「希望」を描き出したいと願ってきました。
新刊「残業学」、もし1度お読みになることがございましたら、そんな僕の思いを「伏線」にお読みいただけると、さらに、また別の愉しみ方をご体験いただけるのかな、と思います。
そして人生はつづく
以下、「残業学」の目次です!
どうぞご笑覧くださいませ!
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「残業学」目次
■オリエンテーション ようこそ! 「残業学」講義へ
「働く人」=「長時間労働が可能な人」でいいのか
残業は「データ」で語るべき
ウザすぎる! 残業武勇伝
残業が個人にもたらすリスク
残業が企業にもたらすリスク
必要なのは、「経営のためにやる」という発想
なぜ、「希望」が必要なのか
大規模調査のデータ
コラム1 ここが違うよ! 昭和の残業と平成の残業
■第1講 残業のメリットを貪りつくした日本社会
「日本の残業」はいつから始まったのか?
底なし残業の裏にある2つの「無限」
「残業文化」にはメリットがあった
第1講のまとめ
■第2講 あなたの業界の「残業の実態」が見えてくる
1位が運輸、2位が建設、3位が情報通信
明らかになった「サービス残業」の実態
第2講のまとめ
コラム2 「日本人は勤勉」説は本当か?
■第3講 残業麻痺――残業に「幸福」を感じる人たち
「月80時間以上残業する人」のリアルな生活
「残業=幸せ」ではないが……
「残業麻痺」と「燃え尽き症候群」
「幸福感」と「フロー」の関係
残業しても「見返り」が約束されない時代なのに
ただの「達成感」を「成長実感」にすりかえるな
「努力」を「成長」と結びつける日本人
「越境学習=職場外での学び」の機会の喪失
第3講のまとめ
コラム3 「男は育児より仕事」は本当か?
■第4講 残業は、「集中」し、「感染」し、「遺伝」する
残業は「集中」する
「できる部下に仕事を割り振る」は悪いことか?
上司はつらいよ、課長はもっとつらいよ
残業は「感染」する
残業は「腹の探り合い」が 生み出す悲劇
仕事を振られるのが嫌だから「フェイク残業」する
「残業インフルエンサー」の闇
「集中」「感染」が起こりやすい職業
残業は「遺伝」する
必要なのは「学習棄却」
「集中」「感染」「麻痺」「遺伝」しやすい職種は?
第4講のまとめ
■第5講 「残業代」がゼロでも生活できますか?
生活のための「残業代」
残業代を家計に組み込んでしまうと……
残業代が減ると、損をしたような気持ちになる
「生活給」という思想
上司の指示が曖昧だと、部下は残業代を当てにする
解き明かされた残業発生のメカニズム
日本全体で残業を「組織学習」してきた
第5講のまとめ
■第6講 働き方改革は、なぜ「効かない」のか?
企業の「働き方改革」は本当に効果が出ているのか?
残業施策の失敗による職場のブラック化への道
段階1 残業のブラックボックス化
段階2 組織コンディションの悪化
段階3 施策の形骸化
施策失敗の「3つの落とし穴」
原因1 「施策のコピペ」の落とし穴
原因2 「鶴の一声」の落とし穴
原因3 「御触書モデル」の落とし穴
第6講のまとめ
■第7講 鍵は、「見える化」と「残業代還元」
「外科手術」の4ステップ
ステップ1 残業時間を「見える化」する
ステップ2 「コミットメント」を高める
ステップ3 「死の谷」を乗り越える
ステップ4 効果を「見える化」し、残業代を「還元」する
第7講のまとめ
■第8講 組織の生産性を根本から高める
「外科手術」の限界
マネジメントの変革編1 「罰ゲーム化」したマネジャーを救え!
マネジメントの変革編2 「希望のマネジメント」に必要な3つの力
マネジメントの変革編3 「やることはいくらでもある」わけがない
マネジメントの変革編4 部下への声かけは「2割増し」で
マネジメントの変革編5 「抱え込み上司」にならないために
組織ぐるみの改革編1 「残業の組織学習」を解除する「3つの透明性」
組織ぐるみの改革編2 重なりあう「マネジメント・トライアングル」
組織ぐるみの改革編3 「希望の組織開発」の鉄板フレーム
組織ぐるみの改革編4 組織開発を実際にやる際のコツ
組織ぐるみの改革編5 豊田通商を変えた「いきワク活動」
第8講のまとめ
コラム4 「やりっぱなし従業員調査」はなぜ生まれるのか
コラム5 会議のムダはどれだけあるのか?
■最終講 働くあなたの人生に「希望」を
残業と日本の未来
「成果」の定義を変える――「努力+ 成果」から「時間あたり成果」へ
「成長」の定義を変える――「経験の量」から「経験の質」へ
「会社」の定義を変える――「ムラ」から「チーム」へ
「ライフ」の定義を変える――「仕事との対立」から「仕事との共栄」へ
平成が終わる今こそがチャンス
「残業学」を学んだあなたへ
■おわりに
本書の調査概要
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