2018.11.26 06:36/ Jun
先週、このブログでは「組織開発」におけるサーベイフィードバック(組織調査のデータを現場の人々におかえしして、現場を改善に役立てること)のポイントを11個にまとめました。11個にまとめたのはいいものの、実際にご紹介できたのは1つめだけだったので、今日は、その続きです。
連載1日目:調査データを現場にフィードバックしても シャッターバーンにならない方法!? : サーベイフィードバック型組織開発、11のポイント
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/9679
1.キーマンと握る
2.現場ファースト宣言
3.キーマンには最初と最後
4.やさしく、しぼる
5.これまでを讃える
6.淡々と行う
7.持続可能性を問う
8.絶望させない、希望を見せる
9.とっかかりを提供する
10.インターバルで実践をうながす
11.フォローアップで讃える
今日は、上記の2から4までをご紹介させていただきます。
ここから以降は、実際にサーベイフィードバックのワークショップがはじまってからのお話です。
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まずトップバッターは「現場ファースト宣言」です。
これは、ワークショップの冒頭で、僕が必ず行う「現場の方々とのお約束」です。
現場ファースト宣言とは、サーベイフィードバックを行うわたしの研究室メンバー全員が、
1.このワークショップでは、現場のみなさまの「意思」を最大限尊重しますよ
2.このワークショップでは、あれせい、これせい、とわたしたちは「命令」をしませんよ
3.ひとつだけ行うのだとすれば「組織調査の結果を事実として淡々とおかえし」しますよ
4.現場の方々は、サーベイの結果と現場の状況を加味して、現場第一主義で、意思決定してくださいね
ということを、現場の皆さまにお約束するものです。
その現場にもよりますが、「権力主義のかほりが漂う現場」だと、たいていはここで「喜び半分」ですが、一方で「ポカン」とします。
といいますのは、外部から組織に人が入ってくる、ということになると、これまでの前例から
あれせい、これせい!
やれ、これがダメだ、あれがダメだ
と言われることに慣れてしまっているケースがあるのです。とりわけ「変革に疲れた組織」「さまざまな指導を受けている学校機関」などは、その傾向が強い傾向があります。
対して、わたしたちは
現場で意思決定を行えるのは「わたしたち」ではありません
未来を決めるのは「みなさん」です
と言い切ります。
極端な場合、調査データをおかえしして、「何もやらないこと」を選択なさって、それは「選択」として尊重する覚悟で、この場に臨んでいます。「現場ファースト宣言」とは、現場の皆さんを目の前に「腹をくくること」でもあります。
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次に、「3.キーマンには最初と最後」です。
これは、ワークショップの冒頭と最後には、その組織におけるキーマンに必ずご挨拶をたまわり
1.今日、なぜ、わたしたちはここにいるのか?(Why are we here?)
2.何を目的に、集まったのか?
3.自分の「思い」としては、どのような「思い」でここにきたのか?
をお話ししてもらうものです。
冒頭部では「めざすものが何か(目的)」ということと「思い」を述べていただきたいと思っています。
一方、シメの最後には、これからどのようなスケジュールで、何を行っていくのか、について「今後の見通し」を述べていただきたいと思っています。
「場を暖めてもらうこと」と「場をしめていただくこと」は、外部からかかわるわたしたちにはできません。それは、現場をおさめるリーダーの方々のお仕事であると、わたしたちは認識しています。
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「4.やさしく、しぼる」は、せんだって、早稲田大学の大湾先生の講演では、何度か強調してお話させていただいことのひとつです。「やさしく、しぼる」とは、現場の方々にお返しするデータのことについてのポイントです。
現場におかえしするデータは、
1.現場の方々が「ひと目」みてわかるようなシンプルなものにする
=度数、パーセントなどで「差」が一目瞭然なもの
2.得られたデータをすべて等価に並列にお見せするのではなく、要点をフォーカスしてご提示する
=求めがあれば、すべてのデータをお見せする
ことがよいと思います。
逆に、
1.相関係数や標準化係数など「ひとめ見て」わからないものは、現場の人々は必ずしもご理解いただけない
2.すべてのデータを羅列しても、何に注目して良いかはわからないことが多い
ということが経験的にわかっています。
ですので、わたしたちは、「やさしくシンプルに、フォーカスをしぼって」データをお返しすることに徹します。
もちろん、高度な統計処理は、研究室では行っているのです。しかし、それをそのままお返しすることは行いません。なぜなら、「研究者は、自己満足できる」かもしれませんが、それは「現場を動かさないことが多い」からです。研究は研究として別に行うことが重要である、という認識をもっています。
これは以前にブログでも述べたのですが、極端なことをいえば、こう言えるのです。
「データ」という「客観的事実」そのものが、現場の変革を導くのではないのです(図の上)。
「データ」という「客観的事実」が、現場のマネジャーや部下に「理解」され、「対話」をとおして「意味づけられてこそ」現場に変革が生まれます。だから、データをシンプルに提示すること、フォーカスをしぼって提示することが重要なのです。
理解できないものは、対話できません
対話できないところから、変革は生まれません
「現場の変革」を導く「組織調査」はいかに行われるべきなのか?:組織のなかの「対話のデザイン」!?
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/9615
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さて、今日は11のポイントのうち、
2.現場ファースト宣言
3.キーマンには最初と最後
4.やさしく、しぼる
をお話しさせていただきました。
これは逆にかえせば、
あなたは「上から目線のコンサル風」のサーベイフィードバックを行っていませんか?
あなたはサーベイフィードバックに「キーマン」を巻き込めていますか?
あなたは「現場の方々がちんぷんかんぷんなデータ」を返していませんか?
というピリ辛風味の問いかけになるのかな、と思います。
そして人生はつづく
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