NAKAHARA-LAB.net

2018.10.16 06:50/ Jun

「行動としてのリーダーシップ論」と「現象としてのリーダーシップ論」!?

 あなたは「リーダーシップ」を「行動」として捉えていますか?
 それとも「現象」としてとらえていますか?
     
 ・
 ・
 ・
     
 朝っぱらから「ヘンチクリンな問い」から始まりましたが、これら「2つ」にはかなり大きな差があります。
 もっとも伝統的で支配的なのは、「リーダーシップ」を「個人の行動」として把握する「行動としてのリーダーシップ論」です。
   
  ▼
   
「行動としてのリーダーシップ論」は、リーダーシップとは「個人の行動」に由来すると考えます。よって、その理論は、おおよそ、下記の3点を実行します。
  
 1.まずは、過去のリーダー個人の行動をまずは分析し、
 2.どういう行動が、めざす効果性を持ちうるかを弁別し
    
 そのうえで、
  
 3.これからのリーダー個人に、1と2で見いだした効果的行動を習得させること
  
 をめざします。
  
 伝統的で、かつ、支配的で、今もかわらず人口に膾炙しているのが、この「行動としてのリーダーシップ論」です。 
  
  ▼
  
 一方、リーダーシップを「現象」として把握する「現象としてのリーダーシップ論」は、これとは、ややニュアンスを異にします。
  
 この理論群は、「リーダーシップ」を「リーダー個人の行動」というよりも、むしろ、「複数人のチームメンバーが相互作用し、その真ん中で、引き起こされている社会現象である」ととらえます。
  
 極端な話、「現象としてのリーダーシップ論」は、権力や権威のあるリーダー個人の存在をいてもいいし、いなくてもいいものとみなします。
  
 むしろ、そうした「個人の行動」に着目するのではなく、複数のチームメンバーが健全に相互作用し、建設的に批判的コミュニケーションを行使し、互いに貢献しあいながら、前にすすむ「現象」が生まれていることを重視します。
   
 よって、「現象としてのリーダーシップ論」は、下記の3つのプロセスをとります。
  
 1.まずは、過去のチームメンバーが、どのような相互作用・貢献行動をとっていたかを分析し、
 2.どういうパターンが、めざす効果に影響を与えていたかを考察し、
    
 そのうえで、
  
 3.1と2の状況を「鏡」のようにチームメンバーにかえします。
   
 その結果、
  
 4.チームメンバーの内省が促され、メンバー同士の行動に補正がかかることをめざします
  
 これらの違い、おわかりいただけますでしょうか。
 そして、後者のプロセスが「組織開発」にかなり似ていることにお気づきの方もいらっしゃると思います。それもそのはずです、「現象としてのリーダーシップ論」と「組織開発」は実は「同じルーツ」をもって発展してきたものなのだから(この話は新刊「組織開発の探究」で論じています)
  
 ともかく・・・・同じように、リーダーシップを生み出す人材を育成しようとしても、「リーダーシップを何とみなすか」によって、これだけの違いが生じます。
   
  ▼
  
 ちなみに立教大学経営学部リーダーシッププログラムが採用しているのは「行動としてのリーダーシップ論」ではなく「現象としてのリーダーシップ論」です。
  
 400人弱いる、どの学生にも、リーダーシップは身近な問題であって欲しい。
 個人の特性をいかしながら、チームに貢献できることを、それぞれがなせる人材になって欲しい
  
 こういう思いから、立教大学経営学部リーダーシッププログラムでは、「現象としてのリーダーシップ論」を採用することを、教員同士で議論して決めました。
 この定義は、主査、コースリーダーの先生方などが、様々な場面で、ことあるごとに教員の先生方、SA、CAの皆様にお伝えしている状況です。ですが、「行動としてのリーダーシップ論」は、なかなか強固で(笑)、それでも、少しずつ理解が広まってきた印象がございます。
  
 せんだって、ある学生が、
  
 「先生、リーダーシップは現象なんですよね」
  
 と言ってくれたのを耳にして、少し嬉しく思いました。
    
 「同士よ、わかってくれるか!!ありがとう!ありがとう!(笑)」
 
  ▼
  
 「行動としてのリーダーシップ論」と「現象としてのリーダーシップ論」・・・もちろん、わたしどもがそれを選んでいる、いうだけで、どちらがいい、というわけではないです。しかし、自らがどちらに依拠しながら、リーダーシップ教育やリーダーシップ開発を行っているかを認識することは、非常に重要なことだと思います。
  
 あなたは「リーダーシップ」を「行動」として捉えていますか?
 それとも「現象」として「リーダーシップ」をとらえていますか?
  
  ・
  ・
  ・
  
 最後に・・・立教大学経営学部リーダーシッププログラムでは、授業のご見学を受け付けております。
 見学日程日は決まってしまいますが(学内のリソースが逼迫していて、また、見学応募者が多く、どうしても、これ以上ご見学を受け付けられないのです)、もしご希望がございましたら、下記の日程につきご検討をお願いします。年度内は、授業が1月で終わりますので、下記の3回になります。
  
 11月13日(火) 通常授業
 12月4日(火) 通常授業
 1月12日(土) 立教経営1daypassport(イベントを見学)
  
立教リーダーシップ・プログラム参観(見学)のご案内はこちら
http://cob.rikkyo.ac.jp/blp/2982.html
  
 あと、今年も高校生向けの授業参観イベント「立教経営1day passport」が開催されます。「立教経営についてわかる!体験できる1日」をコンセプトに、立教大学経営学部の1日限定大学生として体感できるプログラムです。
   
 高校生の皆さん、高校生のお子様をお持ちのご父兄のみなさま、ぜひお誘い合わせのうえ、お越しくださいませ。毎年満員御礼、400名の高校生が集まる大イベントです。 ひとりで不安だわ、という方でも絶対に大丈夫。先輩やSA、CAの学生の皆さんが、優しく様々なことを教えてくれると思います。
  
立教経営1daypassport(1日授業参観イベント)
http://cob.rikkyo.ac.jp/blp/3158.html
  
 学生たちのあいだに、本当に「現象としてのリーダーシップ」が生まれているか、ぜひ、ご見学におこしになりませんか?
    
 そして人生はつづく
    
  ーーー
  
 中村和彦先生との共著、新刊「組織開発の探究」が予約販売されています。すでにAMAZONカテゴリー1位「マネジメント・人事管理」を獲得しました。組織開発とは何か? 組織開発はどのように発展してきたのか? そして組織開発をすすめる上では何がポイントか? 理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
   

  
  ーーー
  
【注目!:中原研究室のLINEを好評運用中です!】
 中原研究室のLINEを運用しています。すでに約8400名の方々にご登録いただいております。LINEでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記のボタンからご登録をお願いいたします!QRコードでも登録できます! LINEをご利用の方は、ぜひご活用くださいませ!
       
友だち追加
   

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.12.8 12:46/ Jun

中原のフィードバックの切れ味など「石包丁レベル」!?:社会のなかで「も」学べ!

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:54/ Jun

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:12/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.29 08:36/ Jun

大学時代が「二度」あれば!?

「人事界隈」にあふれる二項対立図式の議論は、たいてい「不毛」!?

2024.11.26 10:22/ Jun

「人事界隈」にあふれる二項対立図式の議論は、たいてい「不毛」!?