2018.7.30 06:07/ Jun
新刊「女性の視点で見直す人材育成」(中原淳・トーマツイノベーション著)が、ついに刊行になります。本書で追求した究極のテーマは「誰もが働きやすい職場をつくる」というこの1点です。
新刊「女性の視点から見直す人材育成」【AMAZON】
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人口の約半分を占める女性の、素晴らしい力量を生かし切れていないように思われる日本企業。本書において筆者らは「女性のキャリア問題」を「見直す」ということをもって、究極的には「誰にとっても働きやすい職場をつくること」を考えてみたいと思いました。
「女性の視点」をテーマにしながら「多様な働き方を許容できる、これからの職場づくり、これからの人材マネジメント」を描いた一冊になっています。どうぞご笑覧くださいませ。
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本書「女性の視点で見直す人材育成」は、【7400人の男女を対象とした徹底的なリサーチ】によって、スタッフの時期からリーダー期、管理職期、そして子どもを育てながら仕事をするワーキングマザー期に至るまで、女性がどのようにキャリアを積み重ね、どのような挑戦課題を抱え、それをどのように乗り越えていくのかを論じた本です。
本書のスタッフ期、リーダー期、マネジャー期という「3つのフェイズ」に、質問紙調査の回答者を分けながら、「どのように人材が育っていくのか」を、男女比較を行ったうえで探究した研究がベースになっています。端的に申し上げれば、女性のキャリアのトランジションを子細に分析している、ということですね。
この研究は、中原とトーマツイノベーション株式会社の共同研究として達成されました。共同研究の機会を賜りましたトーマツイノベーション株式会社様には、この場を借りて御礼を申し上げます。
この信念になっているのは、
女性の働き方を支援するためには、人事プロセスのすべてを見直し、変革していく必要がある
ということです。
いわゆる「女性活躍推進」とは、決して、管理職手前の女性や管理職候補の女性を、数日、研修に連れ出して、先達のキャリアの話を一方向で聞かせる研修を受講させることではありません。そうではなく、「人事プロセスのすべてを見直すこと / 変革していくこと」こそが、重要なのです。
それは最終的には、女性のためだけになるわけではありません。
この後の日本社会では、「フルタイム・長時間労働ありの正社員」という、現在はスタンダードな働き方をする人々は徐々に減っていきます。むしろ、育児や介護など様々な事情を抱えながら、しかし働く人々がふえていくのです。
「女性の問題」を最初の思考のきっかけにしつつも、究極的には、多様な働き方をする人々が、いきいきと働くことのできる未来の職場をつくること」が重要だと思っています。
論じられているテーマは深淵なものですが、記載・記述は極めて平易です。
まず、記載は「会話調」になっており、女性や管理職からの「問いかけ」や「質問」に対して、中原が答えるかたちで進行します。
また各所には、「クイズ」なども用意されています。たとえば、「ついつい管理職が女性に対して口にしてしまいそうなひと言」が下記のように紹介され、クイズになっています。
読者の皆様には、本書で紹介したデータや理論を愉しみながら学びながら、「クイズ」の答えを考えていただきます。愉しみながら本を読み、最後には、答えあわせを行うことができます。
むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをおもしろく
おもしろいことをまじめに
まじめなことをゆかいに
そして
ゆかいなことはあくまでゆかいに
(井上ひさし)
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本書の特徴は以下の3点です。
まず、とにかく類書と異なっているのは「調査データ」や「エビデンス」から「女性の働く問題」を論じていることです。
女性がいかにキャリアを積むか、という問題は、これまで女性自身の「わたしの経験論」から語られることが多かったように思います。それはそれで貴重な意見も含まれます。
が、本書では、より俯瞰的に、より客観的に、より立体的にこの問題を論じることをめざしました。そのため、「分析の力」や「論理の力」を借りています。
この本では、データやエビデンスに基づきながら、女性のキャリアを論じています。
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2つめの特徴は、男女の差(いわゆるジェンダーの差)をしっかり腑分けしながら、論を展開していることです。
管見ながら、「女性マネジメント」や「女性のキャリア」について語られている類書を拝見させていただきますと、これまで多くの先行研究は
「これは男女ともに言えることなのか?」それとも「男性だけに言えることなのか?」「女性だけにしか言えないことなのか」
を峻別できていないように感じていました。
本書の行った調査では、この問題を解決するために、男女(2群) × スタッフ期・リーダー期・管理職期という3つのキャリアフェイズの「2×3」の「計6つの小集団」をもうけ、それらを比較分析することで、この問いに答えることをめざしました。
たとえば管理職期の挑戦課題には「部下へのフィードバック」というものがあります。類書や先行研究では、これらが「女性管理職はフィードバックが苦手だ」と書かれる傾向がありました。
しかし、本書で筆者らが比較分析を試みてみると、「部下へのフィードバックが苦手なのは、男女ともに苦手なのです」。
このようにジェンダーの差をきっちり論じ、「男性だけに言えること」「女性だけに言えること」を丁寧に論じたのがこの本です。分析は統計的仮説検定を用いていますが、しかし記載は平易です。
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3つめは、「ワーキングマザー期の支援」をあえて4つめのフェイズとして切り出した上で、しっかり論じていることです。
昨今、解消されはじめているとはいえ、育児による就労の中断ーいわゆる「M字カーブ問題」の解消は、まだまだ喫緊の課題です。とりわけ地方によっては、まだまだ事態は深刻な状況も改善されていません。本書では、この問題を論じるべく、1章をもうけました。
ワーキングマザーの調査に関しては、ワーキングマザーだけを調査するのではなく、ワーキングマザーを取り囲む「パートナー」「管理職」「同僚」の3つの回答者に質問紙調査を行い、ワーキングマザーの就労問題を立体的にあぶり出すことに挑戦しました。
この信念になっているのは、
ワーキングマザーの就労問題を、
「女性個人の献身的な努力」によって解決することを求めるのは間違っている
ということです。むしろ「パートナーにできること」「管理職に出来ること」「同僚にできること」をしっかり論じていくことが重要であろうと思っています。
ワーキングマザーの方々が職場やパートナーの助けを借りずに「仕事と育児の両立」を行うことは、「不安定な2本足の椅子」に座り、自分の足で椅子を支えることに似ていると思っています。それでもちろん奮闘なさっている方もいらっしゃるので、頭が下がる思いです。しかし、多くの方々は、短時間ならば支えることはできるかもしれない。しかし、ふとした瞬間に、そのバランスは崩れがちです。
ワーキングマザーの就労問題を、様々な人々の「つながり」の中に捉える、というのは、こうした信念に基づいています。
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本書は、人事、人材開発、経営企画をご担当するビジネスパーソンの皆様、多様な職場づくりにお悩みの現場管理職の皆様、自らのキャリアに興味をお持ちの働く女性に、お読みいただけることを念頭に執筆されました。ご興味をお持ちのようでしたら、ぜひ、書店で手にお取りになり、どうぞご笑覧くださいませ!
また、これから社会に出て行く学生たちにも、お読みいただけると幸いです。
なぜなら・・・これから社会にでて、直面するおおかたの問題は、すでにこの本の中に論じられています。ぜひ、それらを「知った上」で、社会で働き、よりよくご活躍いただけたとしたら、執筆者としては望外の幸せです。
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最後になりますが、謝辞を述べさせてください。
まずは調査にご協力いただいた7500名の皆様に、この場を借りて御礼を申し上げます。足かけ3年の研究にはなってしまいましたが、何とか、この研究を「かたち」に残すことができました。
トーマツイノベーション株式会社の執筆チームの皆様、木下桃子さん、平井裕介さん、眞﨑大輔社長には大変お世話になりました。また執筆の途上では、様々なヒアリングを行わせていただいたり、カンファレンスを実施させていただきました。
その他、このプロジェクトに関わっていただいたすべての皆様、とりわけ、川合真美さん、伊藤由紀さん、山﨑彩子さん、塩塚万理さん、笹島さやかさん、國松陽子さん、飯田裕介さん、田中敏志さん、長谷川弘実さん、柳田愛子さん、佐々木和志さん、淺井朋史さん、畦田佑登さん、内田舞さん、西田聖子さん、藤原宏之さん、加藤理夏さん、山崎佳奈さん、法村友佳さん、三浦理沙さん、野口茜さんには、心より感謝いたします。
またロジスティクスから、質問紙回収、各種デザインなどをご担当いただいた同社の皆様には、心より御礼申し上げます。中原研は2年前まで研究室にいた保田江美さんに、分析サポートなど大変ご尽力いただきました。皆様、本当にありがとうございました。
本書の編集・校正は、ダイヤモンド社の敏腕編集者、藤田悠さんにご担当いただきました。本書のゲラの試読には、立教大学経営学部・中原ゼミの我妻美佳さんにもご協力いただきました。心より感謝いたします。本当にありがとうございました。
そして人生はつづく
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「女性の視点で見直す人材育成」
【目次】
■はじめに なぜいま、「女性の働く」を科学するのか?(中原淳)
■CHAPTER 0 女性活躍推進、何がおかしい?
・女性は「もっと活躍すべき」なのか?――データで見る「女性の働く」のいま
・女性は「ずっと仕事を続けたい」のか?
・女性が「長く働きたい」と思う理由は?
・女性の「ロールモデル」は必要なのか?――「女性活躍推進」が陥りやすい神話
・女性の「育成・学び」に不可欠なものとは?――「職場づくり」と「トランジション」
■CHAPTER 1 女性が「職場」に求めるもの――スタッフ期
・女性スタッフが「辞めたい」と思う原因は?
・女性スタッフが「出世」を嫌がる理由とは?――「昇進意欲」を規定する要因
・女性スタッフは「自信」がないのか?――「インポスター症候群」と「背伸びの経験」
■CHAPTER 2 女性が「自信」を得る瞬間――リーダー期
・女性リーダーは「最初」が肝心?――「トランジション」と「リアリティショック」
・女性リーダーは「叱る」のが苦手?――「SBI情報」に基づいた「フィードバック」
・女性リーダーが「ジレンマ」に弱いのはなぜ?
■CHAPTER 3 女性が「管理職」になる日――マネジャー期
・女性マネジャーの「昇進」はなぜモメるのか?――昇進受け入れのための「上司からの説得」
・女性マネジャーは「嫉妬」の的になる?――「女王バチ症候群」と「戦略的無能」
・女性マネジャーは「戦略」に不向きか?
■CHAPTER 4 育児と仕事を両立するには?――ワーママ期
・ワーママ女性は「離職予備軍」なのか?――子育て女性を取り巻く「思い込み」
・ワーママ女性の「成果」を高める要因とは?
・ワーママ女性は「助け」をなぜ求めない?――育児にまつわるヘルプシーキング行動
・ワーママ女性は「ラク」をしたいのか?――子育て女性の「認知ギャップ」
・ワーママ女性と「残業」はなぜ相性が悪い?
・ワーママ女性は「職場外」に何を求めるか?――「チーム育児」がもたらす効用
■おわりに 「女性視点」から多くの気づきを得た経営者として(眞﨑大輔)
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