2018.7.23 05:32/ Jun
遠い過去に、国語の教科書に掲載されていた作品のなかに、芥川龍之介の短編作品「トロッコ」があった。「トロッコ」のあらすじはこうだ。
ある少年が、ひょんなきっかけから、ふだん鉱夫たちがのっている「トロッコ」に乗りこみ、冒険をする。
少年が乗った「トロッコ」は、勢いよく走り出してしまい、少年がいまだ見ぬ土地に到着した。急に不安になった少年は、半べそをかいながら、暗い夜道を泣き、トロッコを押して家路につく。
それから数十年後・・・すっかり中年に達した少年は、出版業界に勤めている。日々の生活に疲れた少年は、ふいに、この出来事を思い出す。
トロッコの物語は、下記のような記述で終わる。
疲れ果てた少年の前には、「藪や坂」のある道が細々と断続している
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30年くらいまえの記憶をたどっているので、細かいところは異なるかもしれない。大枠では、こんなお話であったかと思うけれど。
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個人的に痛烈に記憶しているのは、トロッコの最後の文章である。
疲れ果てた少年の前には、「藪や坂」のある道が細々と断続している
この1文を読んでいた、当時まだ少年だった僕は、ぼんやりとこんなことを考えていた。
少年であろうとも、中年になろうとも、結局、いつも「藪や坂のある道」が断続してるんだな・・・
今だけ、トロッコを押してるわけじゃないんだな
結局、年をとって大人になっても、トロッコを押して、夜道を歩くことになるんだな
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それから30年
トロッコの最後の文章に、ひとり感銘を受けていた少年も、いまや中年になった。
少年の頃には、考えも着かなかった職業につき、少年の頃には思いもよらなかった人々の縁に恵まれ、日々の生活に追われていた。
疲れ果てた少年の前には、藪や坂のある道が細々と断続している・・・
あなたには、ふとした時に思い出す「教科書の作品」はありませんか?
それでも人生はつづく
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