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2018.5.25 05:55/ Jun

「どこでもボイスレコーダー社会」で、もれなく「録音」されている「暴言・妄言フィードバック」!?

 現代社会は「どこでもボイスレコーダー社会」です。とりわけ、他人に耳の痛いことを告げるフィードバックのときは、慎重に言葉を選んだ方がいいですよね。どこで、あなたの言葉が「録音」されているか、わかりませんよ。
    
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 これは、僕が、フィードバックの管理職研修などで、時折お話ししていることです。
「ボイスレコーダー」とは、言うまでもなく、「携帯型録音機」、別名「ICレコーダ」のこと。
 最近は、そんな機器を敢えて用意せずとも、携帯電話(スマホ)に「高性能の録音アプリ」がついているので、いつでも、どこでも、声が録音できたりします。
  
「どこでもボイスレコーダー社会」とは、「いつでも、どこでも、ボイスレコーダーで、様々なコミュニケーションが録音されている可能性が高い社会」のことをいいます。要するに、何でも「録音・記録」されている、ということですね。
  
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 管理職やリーダーになる人は、部下やメンバーに、耳の痛いことを敢えてつげるフィードバックを、評価面談のときなどに行わなければなりません。
 とりわけ、「困ったメンバー」や「ウマのあわないメンバー」に相対するときや「かなり厳しい現実を通告しなければならないとき」は「高ストレス」の状態におかれます。
  
 しかし、そういうときこそ、気をつけ、慎重に言葉を選んだほうがいいのかもしれません。
  
 フィードバックのときは、一時的に「高ストレス」の状況におかれます。ついつい、不用意に余計なことを言ってしまったり、ハラスメントとしか解釈できないことを言ってしまったりする場合があります。
  
「だからさ、何度もいってんじゃん! オマエのほげほげが、イケてないんだよ、このバ○タレが!」
「ていうか、もうアウトね。全然ダメ。もうさ・・・したほうがいいんじゃないの?」
  
 こうした会話は、すべて「記録」される可能性があります。
 そして、相手に向けた刃は、いつ自分にふりかかるかはわからない。そうした発言が命取りになって、ポジションを終われてしまうことも、ないわけではないのです。
  
 たとえば、部下のYシャツのポケットに「スマホ」が入っている、とします。それ自体は、なんてことはありません。そういう人もいるでしょう。
   
 しかし、そのスマホの「録音アプリ」が、知らず知らずのうちに動いているとしたらどうでしょう。録音アプリが駆動しているかどうかなど、外部から確認の余地はありません。Yシャツのポケットならまだしも、ズボンのポケットに入っているのなら、なおさらです。
 部下やメンバーに声をかけて、まさか「スマホの録音アプリ」が動いているか、どうかを、事前に確認などはできないでしょう。それこそ、ハラスメントとも解釈されてしまう可能性があります。
  
 要するに、現代社会は「いつでも、どこでも、ボイスレコーダーで、様々なコミュニケーションが録音されている可能性が高い」と思って、様々なコミュニケーションを行うほかはないのです。マネジメントしていくひと、ひとを率いるリーダーは、そうした現実に対応するコミュニケーション技術が求められます。
(※ちなみに、学校の先生もですけどね・・・今では減ったのかも知れませんが、学級王国で○言をはいたりするとね・・・記録されているかもしれませんよ)
  
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 今日は、「どこでもボイスレコーダー社会」というネーミングで、現代社会では「あらゆるコミュニケーションは記録される可能性が高い」という話をさせていただきました。
「音声」というモダリティに限らず、「動画」すらも記録されている時代です。ここ数年、皆さんが記憶しているセンセーショナルなニュースを思い出してください。音声データが知らずのうちにでてくる事例は少なくないでしょう。要するに、そういうことなのです。
  
 町を歩けば、ここあそこに「監視カメラ」が駆動していますし、数年後には日本全国2000万台の自動車には「ドライブレコーダー」が搭載されるそうです。
  
「どこでもボイスレコーダー社会」もとい「あなたはもれなく記録されている社会」の到来です。
  
 わたしたちは、そうした社会のあり方に、若干の息苦しさを感じてしまうことを吐露しないわけにはいきません。しかし、同時に様々な事件・自己の解決や不正の告発が、これらによって可能になっていることも、また事実です。
   
 あなたは、もう「記録」されているのかもしれません。
 僕も、あなたも、そんな社会を生きています。
  
 そして人生はつづく
  
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