2018.4.4 06:38/ Jun
あなたは、組織に「理想型」があると考えますか?
それとも
メンバーから「組織の理想型」を見いだせると考えますか?
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組織開発には、よく知られている分類ー「診断型組織開発」と「対話型組織開発」のほかに、「もうひとつの分類(タイポロジー)」があります。
「もうひとつの分類」にいくまえに、軽く「おさらい」です。僕のブログは、最近、学部生の皆さんにもお読みいただいているようですので、彼らを決して「おきざり」にしないようにいたします(笑)。
ここで「診断型組織開発」とは、サーベイなどの手法をもちいて組織のあり方を「見える化」し、のちに、そうした「見える化」したデータをもとに、組織において組織メンバーの関係の質を高める対話を行っていくことをいいます。
一方、「対話型組織開発」とは、組織メンバーの主観を通して、組織の現状を対話するところからはじめ、組織メンバーの関係の質をいかに高めていくかを話し合うことをいいます。
詳細は下記のブログをご覧ください。
この世には「やりっぱなしの組織調査」があふれている!?:現場に1ミリの変革も生み出さない「残念な組織開発」
https://www.nakahara-lab.net/blog/2015/10/post_2493.html
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しかし、冒頭に述べた「もうひとつの組織開発の分類」とは、上記の「典型的な分類」ではありません。
もうひとつの分類は、「組織の理想像を定めて、組織開発を行うか」、はたまた「組織の理想像は、状況に応じて決まっているから、存在しない」と考えるか、という分類です。
こちらを僕は、南山大学の中村和彦先生から教えていただきました。中村先生とは、現在、組織開発の本を著しておりますが(6月にダイヤモンド社より発刊予定)、本を著すプロセスというのは、もっとも著者が多くを学ぶものです。
この場を借りて、中村先生には心より感謝いたします。以下、中村先生の原稿を一部引用しつつも、僕なりにアレンジしてお話をいたします。
ちなみに、その前に・・・まったくアカデミックな定義ではないですが、この場だけで通用する言葉として「組織に理想像がある」とする前者の立場を仮に「理想型組織開発」、「組織に理想像がない」とする後者の立場を「非理想型組織開発」と呼びましょう。
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「理想型組織開発」は、組織に「理想型」を求めます。
たとえば、「ちょめちょめ型組織」とか「ほげほげ型組織」とか、そういう「組織の理想状態」を、研究者や介入者が外的に客観的にまず決めて、その「組織の発展のものさし」を定めます。
そのうえで、自組織の見える化を行い「自分の組織が、どこに位置付いているか」そして「自分の組織は、いかにして、理想状態に近づいていくか」を考え、組織開発をします。
中村先生によれば、この組織開発が勃興したのは1960年代、リッカートによる「システム4」と、ブレークとムートンによる「マネジリアル・グリッド」などが、その典型であったそうです。
一方、「非理想型組織開発」では、そのような「組織の理想型」を最初から想定しません。つまり、「組織の発展のものさし」は、「非理想型組織開発」には存在しません。
むしろ、組織の理想の状態は、コンティンジェント(状況に応じて)変わりゆくものであるし、メンバーによって決められるものであると考えます。だから、こちらの組織開発では、組織の状態を「ものさし」抜きで、フリーハンドでいったん「見える化」して、そこで浮かび上がったデータから組織のあり方を論じます。
どちらかがいい、とか悪いとか、ではありません。
発展の歴史から考えれば、1)「理想型組織開発」が発展したのは1960年代であった、2)現在は「非理想型組織開発」が主流かも・・・というだけです。ただ、最近は、組織に理想像を求めようとする動きが、活性化しているような気もします。
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今日は組織の話をしました。
言うまでもないことですが、組織のかたちには、さまざまなものがあります。
あくまで「個人的な趣味」をいえば(これは個人の趣味です)、僕個人は、組織のあり方やかたちに「理想型」がある、とは思わない人間だと思います。リッカートやムートンの業績には、最大限のリスペクトし、多くを学びつつ、今の僕は、そう考えないだろうな、とも思います。
第三者が客観的に「組織の理想型=組織の発展のものさし」を決めて、それに近づいていくように組織開発をする、というのは、うまくいくところもあるんでしょうけれども、少なくとも自分がかかわる自組織に、僕は、それらの「外的基準」を適用したいとは思いません。これは、いちおう、研究の傍ら、様々な実務やマネジメントを行っている人間の「勘」です。
むしろ、メンバーの相互作用の中から、自分たちで「理想型」を決めて、それに近づく努力をしていきたいと願う方だと思います。
また、「組織の発展のものさし」を決めて、「理想像」に近づくというのは、本当に「組織によって競争優位を導くことになるんだろうか」という疑念もすこしだけ感じます。
だって、みんな、「同じ理想型」に近づいていくんですよね? ならば、差別化はできるんでしょうか、また、競争優位は生まれるんでしょうか? ちょっとモンモンとしますね。
ところで、皆さんにご質問です。
あなたは、組織に「理想型」があると考えますか?
それとも
メンバーから「組織の理想型」を見いだせると考えますか?
あなたは、「組織の発展のものさし」をあてて、自組織の組織開発をしますか?
かなり大きな問いですが、この問いにどのように答えるかで、そのひとが暗にもっている「組織観」があぶり出されるような気がいたします。
そして人生はつづく
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