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2018.2.9 06:18/ Jun

残業は「集中・感染・麻痺・遺伝」する!? : 「希望の残業学」プロジェクトの研究成果が発表されました!

 昨日は、この1年、パーソル総合研究所の皆様と中原で進めてきた共同研究「希望の残業学」プロジェクト:の研究成果・記者発表会が開催されました。研究成果は、いくつかのメディアに取り上げていただいた模様です。心より感謝いたします。
   
 以下が、パーソル研究所のニュースリリース、そしてメディア掲載となりますので、もしよろしければご笑覧ください。6000名の調査の結果、主な内容として下記がわかりました。
  
■残業の実態
 メンバー層で最も残業している業種1位は運輸・郵便業、職種1位は配送・物流。
 上司層では繁忙期に平均50時間を超える業種が存在
  
■残業のメカニズム
「集中」:仕事のシェアがうまくいっておらず、優秀な部下ないし上司層に残業が集中している
「感染」:職場内の同調圧力により、帰りにくい雰囲気が蔓延する
「麻痺」:長時間労働によって「価値・意識・行動の整合性」が失われ、健康被害や休職リスクが高まる
「遺伝」:上司の若い頃の長時間労働の習慣が、下の世代(部下)にも継承されている
   
■残業の世代継承性
 上司が「若いころ、残業をたくさんしていた」場合、その部下も残業時間が長くなる傾向にある
  
■残業の悪影響
 長時間労働によって「価値・意識・行動の整合性」が失われる。
 主観的な幸福感(幸福度)は平均値より低く、残業時間が長くなるにつれさらに低下。
 60時間以上残業している人のみ、特異に、幸福度はあがるものの、
 同時に強いストレスを感じている人の割合は
 残業しない人の1.6倍、重篤な病気・疾患がある人は1.9倍と
 高い健康リスクにさらされているので注意が必要である。
 とりわけ健康リスクなどが高まっているなかで、幸福感が高まる傾向があること
 は危険であり、長時間労働の弊害である。
 長時間労働は、この観点からも是正されるべきである。
  
 
  
 
 (以上のグラフ、パーソルサイトより引用)
 
【ニュースリリース:各種グラフあり】
パーソル総合研究所×東京大学 中原淳准教授 「希望の残業学プロジェクト」成果発表
https://rc.persol-group.co.jp/news/201802081000.html
   
  ▼
   
【メディア】
     
残業60時間以上、健康リスク高くても幸福度は上昇(Yahooニュース・毎日新聞)
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6271512
   
残業は優秀な人に集中し、周囲の人に『感染』し、世代や職場を超え『遺伝』すると判明
https://news.nifty.com/article/economy/business/12117-7919/
   
残業が最も多いのは「運輸業、郵便業」民間調べ(日経)
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO2668800008022018XXA000
  
60時間超で幸福に!? 残業が減らない理由(ワールドビジネスサテライト)
http://www.tv-tokyo.co.jp/mv/wbs/newsl/post_149251/
  
“サビ残”最多業種「教育・学習支援」他業種の2倍(テレビ朝日)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_economy/articles/000120572.html
  
 なお、最新号の中央公論にも、このプロジェクトに関する論考が掲載される予定です。また、夏以降には、光文社新書にて「希望の残業学」と称する新書を発刊していく予定です。あわせてご覧くださいませ。
   
 今後、希望の残業学プロジェクトは、第二クォーターに入っていきます。
 残業メカニズムや、残業代の影響などを明らかにする第二弾調査、そして残業抑制を行うための打ち手の検討など、来年度以降、さらなるプロジェクトの躍進が進みます。どうぞご期待くださいませ。
    
  ▼
  
 最後になりますが、このプロジェクトは多くの方々の支え、ご尽力のもとで遂行されました。
 パーソル総研の小林祐児さん、青山茜さん、田井千晶さんとは、最高にロックンロールで、グルーヴな共同研究プロセスを過ごさせてもらいました。あーだこーだと議論をしてプロダクトをつくり、分析をし続けた1年を、僕は、忘れられません。楽しかったです、本当にありがとうございました。同社の渋谷和久社長、櫻井功副社長にも多くのサポートをいただきました。心より感謝いたします。

 また研究成果の公開等につきましては、パーソル広報の脇瑠海さん、中央公論・黒田剛史さん、構成をご担当いただいた井上佐保子さん、そしてここではお名前をあげることはできませんが、覆面座談会にご参加いただいた現場のビジネスパーソンの皆様、そして光文社の樋口健さんに心より感謝いたします。

 本当にありがとうございました。
 皆様のサポートやご尽力がなければ、この共同研究はここに至ることはできませんでした。
 心より感謝いたします。
 
 次のフェイズです。
 そして人生はつづく
  
  ーーー
   
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