2017.10.18 06:24/ Jun
「ここからは残業時間になるよ」という「境界」を
そもそも一度も「意識せず」に働いている人々がいる
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今年から、中原は、パーソル総合研究所さんとの共同研究プロジェクトとして、「希望の残業学」プロジェクトをはじめています。
「希望の残業学」プロジェクトは、
1.長時間労働に関する6000人の定量調査
2.定性的なヒアリング
などを重ねながら、
1.長時間労働の背後にある様々な要因をさぐると同時に
2.それらの「根本的な解決」に資する具体的な「打ち手」を開発する
プロジェクトです。
詳細は下記をご覧ください。
「希望の残業学」プロジェクト・特設ウェブサイト
https://rc.persol-group.co.jp/zangyo/
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「希望の残業学」プロジェクトの進捗は、プロジェクトメンバーの、パーソル総合研究所の青山茜さん、小林祐児さん、田井千晶さんらの素晴らしいご活躍もあり、すこぶる「順調」です。本当にお疲れさまです。先日、無事調査が終了し、現在、分析をすすめて行っているところです。
データを見ていると、つくづく思うのは、この問題が、本当に「根深い」ものであるということです。
まだ完全に分析が進んでいるわけではございませんので、今日は「仮説的妄想の提示」になってしまいますが、最近、僕はこんなことを思うようになりました。
ワンワードで申し上げますと
「長時間労働とは学習の結果である」
ということです。
とりわけ、学習は「新入社員」のときからはじまっています。
新入社員の時に求められた働き方がテンプレートになり、かつ、新入社員の頃の職場メンバーや上司の働き方を「観察学習」し、長期に学び取った結果、「長時間労働をなんとも思わない身体」が完成されてしまうのだ
ということを感じます。
データを見ておりますと、非常に印象的なのは、
「ここからは残業時間になるよ」という「境界」を、そもそも一度も「意識せず」に働いている人々がいる
ということです。
何が問題かと申しますと、ここには「残業」や「長時間労働」という「概念」が存在していません。「残業」や「長時間労働」が「ダメ」とか「いい」とかいう以前、新入社員として働き始めてから「残業」というものを意識したことがない、という人々が一定数いらっしゃることが示唆されます。
一般的に、長時間労働の発生要因とは、職務上の特性、個人の仕事の仕方のまずさ、上司のマネジメントなどから説明がつけられます。
もちろん、それらの影響もあります。しかし、ざっと分析をすすめてみると、必ず浮かび上がってくる項目がでてきます。
それは・・・
働きはじめてからというもの「ここからは残業になるよ」という「境界」をそもそも意識したことがないということ
であったり
新入社員の頃、はじめ出会った上司の働き方が「超絶ルーズ」であった
といったような類いの項目です。
考えてみれば、就業時間が終わったのに、上司も職場のメンバーも、誰ひとりとして職場をあとにすることなく、帰らない職場で新入社員時期を過ごせば、「それがあたりまえ」になってしまいます。その先に広がるのは「ここからが残業である」という「境界」を「まったく意識」しないという状態です。
要するに、この問題の「根源」は、働き始めてから、新入社員として入社してからすぐにはじまっているということです。
これを踏まえて緩やかに考えますと、
長時間労働を是正する教育がもしありうるのだとしたら、「鉄は早いうちに打て」である
ということです。
勝負は、新入社員の頃から、すでにはじまっているのではないでしょうか。
もちろん、新入社員教育の見直しや、新入社員を迎える上司・OJT指導員らへのこの問題の啓発は、すでに御取り組みになられている企業も多いのでしょう。しかし、データを見ながら、メンバーで対話をしておりますと、切にそのことを感じます。
そもそも新入社員の頃から、時間の概念をしっかり意識させて働いてもらうこと
が重要です。
そして、
新入社員の頃にどのような上司のもとで、どのような職場で、どのようなメンバーと働くかが、その後の「仕事の生産性」を決めてしまう傾向がある
ように思います。
「三つ子の魂は百まで」とはいいますが、まったく「クワバラクワバラ」ですね。
皆さんが新入社員として過ごした職場は、どんな職場でしたか? 就業時間がきても、誰ひとりとして帰らない職場でしたか?
新入社員の頃に出会った上司は、やはり長時間労働をしていらっしゃいましたか?
新入社員の働き方は、現在の働き方に影響を及ぼしていませんか?
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今日は「希望の残業学」プロジェクトのお話をさせていただきました。こちらは鋭意メンバーで分析をすすめ、2月には分析結果をリリースさせていただけることになっています。データはとてつもなく「膨大」。噛めば噛むほど味がでてくる「スルメ」のようなものです。
このプロジェクトの成果は、光文社新書より新書として発売が予定されています。樋口健さん、井上佐保子さんらのご協力を得ながら、成果を世に問うていきたいと思っています。
また中原研究室では、今年から横浜市教育委員会様と、「子どもと向き合う時間づくりプロジェクト:教員の働き方改革プロジェクト」をはじめています。
「希望の残業学プロジェクト」と「子どもと向き合う時間づくりプロジェクト:教員の働き方改革プロジェクト」の知見を重ね合わせることで、教員の働き方、ビジネスパーソンの働き方の違いを見つめることができるでしょう。
「子どもと向き合う時間づくりプロジェクト」は、横浜市教育委員会・教職員育成課から立田順一さん、柳澤尚利さん、外山英理さん、根本勝弘さん、松原雅俊さん、東大側は辻和洋さん、町支大介さん、飯村春薫さん、中原で実行しています。
こちらも、実査に向けて、最終段階にはいっています。
どうぞお楽しみに!
そして人生はつづく
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