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2017.7.7 06:20/ Jun

「会社のために身を粉にして働きます!」という日本人リーダーが海外で通用しない理由とは?

 日本人のリーダーがグローバルな舞台で活躍できないのは、「英語の問題」じゃないんです!
「自分がリーダーとして、社会で何を成し遂げたいのか?」という問いに「答えられないこと」からなんです!
   
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 先だって、ある会社の人材開発担当者の方が、研究室を訪れました(お疲れさまでした!)。そのうちお一人は、慶應MCCでの僕の授業の卒業生で、久しぶりに和やかに対話を行うことができたことも、また嬉しいことでした。卒業生の活躍は、教員にとってはうれしいものです。様々な艱難を乗り越え、ぜひ仕事をエンジョイなさっていただきたいな、と思います。
  
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 さて、同社の皆さんとの対話はどれも興味深いものでしたが、僕個人が、もっとも印象に残ったのは、冒頭のこのお言葉でした。
  
 この言葉は、グローバル企業の同社において日本人リーダーが「活躍」できないのはなぜか、という理由をゆるゆる対話してきたときに出てきたお言葉でした。以下、少し長くなりますが、引用させていただきます。
  
 曰く、
  
 日本人のリーダーがグローバルな舞台で活躍できないのは、「英語の問題」じゃないんです。日本人は「英語ができないこと」を理由にしたがります。確かに、異文化コミュニケーションの問題はゼロではありません。でも本当の理由は「違います」。
  
 リーダーを選考する側の海外のエグゼクティブに理由を尋ねてみますと、「全く違う答え」がかえってきます。海外のエグゼクティブは、日本人のリーダーが出ない理由は「英語のせいではない」と、見なしています。
  
 最大の理由は、エグゼクティブとの最終審査の面談において、
  
「自分がリーダーとして、社会で何を成し遂げたいのか?」
  
 という「問い」に答えられないことなんです。
  
 この問いに、日本人は、ついつい「身を粉にして、会社のために貢献したいんです」とか「会社のために身を粉にして働きます」と言ってしまいがちです。視野が「会社という枠」に狭まっていて、しかも「自分がない」のです。「自分が社会で何を成し遂げたいのか」という視線の高さがないのです。
  
 日本でのリーダー登用面談だったら、この答えが「まる」かもしれません。しかし、海外では違います。「自分が何をしたいのか?」ということに「答えられない」というのは、海外のエグゼクティブにとって、非常に致命的に映るのです。
  
 海外では、幼い頃から「自分が、社会で何をしたいのか?」という問いを常に突きつけられて、育っています。そうしたことを人前で、スピーチしたり、プレゼンすることも、あるでしょう。
  
 英語だったら、後付けで学べばいいと思います。
 「自分が何をしたいのか?」ということに「答えられない」のは致命的なのです。
  
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 ICレコーダを持っていたわけではないので、一字一句同じというわけではありませんが、おおよそ、皆さんが、おっしゃっておられたことは、このようなことであったと認識しています。
  
 なるほど。
 これは「致命的」だ・・・(泣)。
 ていうか・・・難しい(泣)
  
 といいますのは、「英語だったら教えることができる」んでしょう。英語だったら、会話量を増やす努力をすればいいし、機会を増やせばいい。でも、「自分が何をしたいのか」は、第三者が「教えること」も「押しつけること」はできないでしょう。だって、自分なんだから、しかも、「やりたいこと」なんだから。
  
 それは、自ら問題関心を持ちながら暮らしていくことで、さらには、その暮らしや仕事を振り返ることで、「自ら見つけるしかない」と思います。

 目線を「会社」ではなく「社会」に引き上げたいのであれば、「社会を意識した仕事」に従事して、それらを「振り返り」、「意味づける」なかでしか、こうしたことは「自ら発見できない」と思われるからです。
  
 皆様はいかが思われますか?
  
  ▼
  
 今日は日本人のリーダーが、海外でなかなか活躍できない理由について、ゆるゆると考えてみました。貴重なご示唆でありながらも、N=1なので一般化はできません。
  
 しかし、
  
 リーダーとは何か?
 リーダーシップ開発とは何か?
  
 について重要な示唆を与えてくれているような気がしますが、いかがでしょうか?
  
 しかし・・・こうしたことを会社の方から耳にするたび、僕は、どうしても思ってしまうのですこれは会社の人材開発施策として、40〜50になってから考えるのでは、課題が大きく、荷が重い。
  
 むしろ「鉄は早い内に打て!」ではないですが、20台ー30台、ひいては、高校生、大学生の頃から、自分の行動を振り返り、考えておく癖を持って欲しい、と。目線をあげて社会を見る癖をつけて欲しい、と。
  
 そうしたことが、日本教育研究イノベーションセンターさまのご寄付を賜りながら(心より感謝です)、企業研究の一方で、「マナビラボ」プロジェクトを推進している理由なのかなと思います。

 社会につながるアクティブラーニングを、高校、大学、教育機関で!
 

マナビラボーひとはもともとアクティブラーナー
http://manabilab.jp/
  
 そして人生はつづく
  
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