2017.3.13 06:00/ Jun
わたしは精神科医である
(中略)
ひとは生きやすさのヒントを私に求める
しかし生きやすさの答えは、いつも「医学の外」にあると感じていた
(同書より)
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森川すいめい (著)「その島のひとたちは、ひとの話をきかない」を読みました。
精神科医である著者が、自殺希少地域とよばれる「自殺を選ぶ人がとりわけ少ない地方」を訪れ、その地域に存在する人間関係の秘密をさぐる紀行文です。
ルポというより紀行文。
文章が美しい書籍なので、ぜひ手に取っていただきたいのですが、著者が見出した自殺希少地域の秘密は、ひとことでいえば「対話主義」ということにつきます。
自殺希少地域には、個と集団をめぐる、独特の関係がありました。
個として、自分の生き方をたもっている
しかし
人々のあいだに「つながり」がないわけではない
しかし
その「つながり」はベタベタとした人間関係ではない
そして
個を尊重しつつ、助け合う
書籍巻末にかかげられた一言。
「相手」は変えられない
変えられるのは「自分」
という一言が、「個の尊重」の様相を一言で物語っています。
そして、そのような中で、人々は
対話をしていくこと
ただ対話をしていくこと
(同書より引用)
に身を尽くします。
相手の言葉、行動、変化をみて、自分はどう感じ、
自分はどう反応するかが決まる。
それによって相手をどうこうしようとはしない。
自分がどう変わるかである
(同書より引用)
これが「対話主義」という考え方なのかなと思います。
先日、僕は「対話とは「意見をポットンと落とすこと」!?」という記事を書きました。
対話とは「意見をポットンと落とすこと」!?
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/7372
ここで書いたことに、本書の結論は類似します。
ベタベタな人間関係でもない。
しかし
個としてしっかりと立つ
本書は、自殺論というよりも、コミュニケーション論として読み解くことができるような気がいたします。
そして、こうした関係は、現在の日本の様々な組織で求められているコミュニケーション、人間関係のあり方であると僕は思うのです。
そして人生はつづく
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