NAKAHARA-LAB.net

2006.10.5 13:15/ Jun

明日は形成的評価・・・決戦は金曜日!

 明日は「なりきりEnglish!」のFormative Evaluation(形成的評価)の日である。Formative Evaluationとは、Form(かたちづくる)ためのEvaluation(評価)。要するに、自分たちの開発物が、こちらの設計意図通りに動くかを、被験者に操作してもらいながら、検証することをいう。
narikirisystem.jpg
 画面はわかりやすいか。
 ボタンなどのユーザインタフェースは使いやすいか。
 そして、学習者は満足して学んでいるか・・・
 アチーブメントの向上などを検証する「本格的な評価=Summative Evaluation」とは異なって、Formative Evaluationの評価ポイントは、上記のような基礎的項目にある。
 —
 しかし、さらっと簡潔に書いてきたけれど、Formative Evaluationとは、開発者・設計者の観点からすると、シンドイものでもある。
 ユーザーとは常に予想外の反応をするもの。Formative Evaluationでは、その予想外のアクションが噴出することが常である。開発者は隣で見ていることが多いのだけれども、ハラハラドキドキの連続だ。
 あー、あのボタンは、もう少しデカクすればよかった・・・
 あのフローはこうするべきだった・・・
 ユーザーには、このインストラクションはわからなかったか・・・
 ユーザのアクションを目の前にして、つい猛省モードにはいってしまう。
 中には、口もきけないほどの惨敗をしてしまうことも少なくない。だから、つい「Formative Evaluation」は後回しにされる。
 授業では「Formative Evalutionは重要ですよー、必ずやりましょうね」と教えつつも、研究開発ではそれをやらない傾向があるように思う(最大の理由は、従来の研究室研究では、UIを向上させても、論文の価値があがらないということにつきる。だから、使えるものが研究室からはなかなか生まれない)。
 まぁ、いろいろな理由はある。だけれども、開発者の立場からすれば、辛い現実を見たくないというのも、大きな理由のひとつだと思う。「時間がない」などの理由で、ユーザビリティの検証などは忌避される。
 しかし、ここが正念場だ。
 「モノをつくるのならば、ケツまくれ」
 と僕は思う。
 「淡い期待」なんか裏切られてアタリマエ。本当の開発に着手する前に、システムのウィークポイントを把握できただけで、「丸儲け」だと思ったほうがいい。
 そして、「はひー、そうきましたか」「いやー、こりゃ、まいったなぁ、一本とられたなー」という具合に、Formative Evaluationをエンジョイしたほうがいいと思う。
 そして、結果がでたら、それを真摯に、かつ前向きに、対応を議論したほうがよい。「誰の作業が悪かったか」を話すのではない。そんな会話はナンセンス。「何を変えるとよりよくなるのか」を十分話し合って、合意できれば、それでよい。
 三人集まれば文殊の知恵。解決策は、必ず、見つかる。フィージビリティとリソースを勘案する必要はある。
 明日のFormative Evaluationも、そういう機会になったらいいと思っている。
 —
 昨日夜から、システム班、英語班、評価班の各グループは最後の追い込みに入っている。数十通のメールがとびかう。
 最後までコンテンツを作り込んでくれている島田さん、ハリソンさん、栗原さん。実機のデバックをしている山田さん、秋山さん、西森さん、三宅君。そして、評価のプランニング等を行ってくれている北山君、館野君、中野さん。そしてW-ZERO3、Windows mobileでのFlashのシステム開発を進めているスパイスワークスの藤田さん、常松さん、草間さん、関根さん。
 最初のマイルストーンに向かって、今日も作業が続いている。
 本当にお疲れ様です。
 明日は、エンジョイしましょう!

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2025.4.24 12:39/ Jun

あなたの近くに「崩壊」しているものはありませんか?:「崩壊」は突然「ちゅどーん(爆音)」ではない!

あなたは、データを「愛していますか」?:データ自体が何かを「語り始める」くらいまで、あなたは、データに向き合っているのか?

2025.4.14 18:11/ Jun

あなたは、データを「愛していますか」?:データ自体が何かを「語り始める」くらいまで、あなたは、データに向き合っているのか?

自分の所属する「組織(ハコ)」によって、あなたは「有能」にも「無能」にもなりえる件

2025.4.6 18:11/ Jun

自分の所属する「組織(ハコ)」によって、あなたは「有能」にも「無能」にもなりえる件

わたしのサバティカルは「旅するサバティカル」and「学び直しのサバティカル」に決めました!:「ひょっこり・ひょうたん島」で「錆び付いた刀」を研ぎ澄ます!?

2025.4.1 18:20/ Jun

わたしのサバティカルは「旅するサバティカル」and「学び直しのサバティカル」に決めました!:「ひょっこり・ひょうたん島」で「錆び付いた刀」を研ぎ澄ます!?

【中原からのお願い】ファミリービジネスにおいて「事業承継」をご経験された方、ぜひ、アンケート調査にご協力いただけませんでしょうか?

2025.4.1 10:33/ Jun

【中原からのお願い】ファミリービジネスにおいて「事業承継」をご経験された方、ぜひ、アンケート調査にご協力いただけませんでしょうか?