NAKAHARA-LAB.net

2016.12.1 06:17/ Jun

バブル崩壊後、職場からいつの間にか失われた「TOO」とは何か?

 日本の組織・職場の中から、バブル崩壊後失われたもののひとつに「TOO」があります。
  
 ところで、朝っぱらから問題です。
  
 「TOO」とは何でしょう?
  
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 正解は
  
 T:となりの
 O:おせっかい
 O:おじさん
  
 です(笑)。
  
「隣のおせっかいおじさん」とは、「頼まれてもいないのに、職場で、いろいろ世話を焼いてくれるおじさんのこと」で、とりわけ、「新人教育や新入社員教育を買って出てくれる人のこと」をいいます。要するに「職場の世話焼きさん」です。
   
 こういうおじさんが、25年前の職場に本当にいたのかどうか、はわかりません。しかし、TOOは、よく人事、人材開発の世界では、まことしやかに語られます。
   
 昔はよかった・・・隣のおせっかいおじさんが、新人の面倒を自発的に見てくれたからなぁ
  
 わたしを育ててくれたのは、隣のおせっかいおじさんだったなぁ。最初はありがたかったけれど、だんだんウザくなってきたなぁ。
  
 僕には、そういう人が本当に職場にいたのかどうかは、わかりません(そんなデータはありません)。
 それはいわば「都市伝説」だったのかもしれない(笑)。
   
 しかし、誰がやっていたかどうかは別として、少し前の日本の職場には、「誰の仕事とも割り当てられていない仕事=役割外行動」をとる「主体」が、存在していたこと。
 そして、新人教育は、そうした「役割外行動」として達成されていたようにも思えます。
 要するに「TOO:隣のおせっかいおじさん」とは、かつての日本の職場にあふれていた「役割外行動」の象徴なのです。
     
 ま、、、新人教育がうまくいっている職場は、今なお、そうでしょうが。  
    
  ▼
   
 昨日の大学院授業「経営組織論」では「組織の中の役割外行動」について、大学院生さんたちと議論に及びました。
  
 組織の中の仕事は、合理的にもれなく、だぶりなく割り振りすることは難しいこと。
 役割外行動が、いわば潤滑油となって、組織を組織たらしめていること。
 そして役割外行動が生まれるかどうかは、職場の中の社会関係資本や、職場レベルのコミットメントの影響を受けることを議論しました。
  
 僕は、自分の授業は、なるべく学説や理論を単に紹介しない授業をめざしています。
  
 そうではなく、
  
 あなた方が、将来、もしリーダーやマネジャーになったら、どのような行動をとるのか?
 
 を考えさせたいのです。
 「もし自分だったら」を常に意識しながら、概念や理論を理解してくれることをねがって、いつも授業をしています。
  
 役割外行動に代表される「職場の中の人間行動」を扱った昨日の議論は、なかなか面白い議論になりました。
 きっと、みんな「自分事」だと思っているんだよね。
 職場の中の出来事は、将来、自分が相対するかもしれないような事象ですので、議論が盛り上がったのかなと思います。
 
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 ところで、皆さんにご質問です。
   
 あなたの組織には、「隣のおせっかいおじさん」はいらっしゃいますか?
  
 もしいないのなら
  
 「隣のおせっかいおじさん」は、いつ姿を消しましたか?
 
 そして人生はつづく
  
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