2016.11.15 07:17/ Jun
せんだって中原研OBの関根さんと舘野さんが中心になって、「経験学習をコアにしたリーダーシップ開発」に関する研究会が、東京大学で開催されました。
僕も一参加者として、この研究会に参加させて頂きました。参加者、最高です。途中さまざまな用事があり、中座させていただきましたが、研究会では多くのことを学ばせて頂きました。
ご参加いただいた皆様、またとりまとめをしてくださっている関根さん、舘野さんには、この場を借りて心より感謝いたします。ありがとうございました。
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さて、研究会のテーマは「経験学習をコアにしたリーダーシップ開発」です。
周知の通りですが、この20年のリーダーシップ開発研究を振り返ってみるとき、「成長資源」ないしは「学習資源」としての「経験」ほど焦点があてられたものはないことに気づかされます。
リーダーの候補となるべき人に飛躍的に成長させる「成長資源である経験」を、いかに配分し、いかに振り返りをうながすか。
この20年のリーダーシップ開発研究は、多くの紙幅をこの研究にさいてきました。
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しかし、理論的には、あまり「つけいる隙」がないような、この言説も、やれ実践するとなると「難しさ」がつきまといます。
その最大の難しさは、「経験という資源の不可視性と不確実性」にあります。
すなわち、
「何を任せたらよい経験となるのか?」
「誰にこの経験を任せたらよいのか?」
ということは、現場にいる人にしか、なかなか判定はつかない、ということです。
そして、もしその判定をしたとしても、その確からしさは、確実ということはない、ということです。
現場は、常に変化し、うつろっています。そこに転がっている経験も、仕事をしている人々も、常に移ろっている。
その変化しているなかで、経験学習理論では「成長させたい当人」と「適切な経験」のマッチングを行うことが求められます。
要するに
経験学習は「パワフルな理論」であることに間違いはありません。
しかしそれは同時に
経験学習は「普及させることにハードシップをともなう理論」でもあります。
人事部や経営企画や、はたまた社長がどんなに「経験学習」を信奉していても、「現場から遠い彼 / 彼女」には、「現場にどんな経験が転がっているか」「どの経験を、誰にふればよいか」は、なかなかわかりません。
要するに、「この人に任せたら、成長するだろうなと思うような経験」が何か、ということは、その人やその経験と日々対峙している現場の管理者にしか、なかなかわからないということですね。
すなわち、経験学習とは「現場の学び」の理論です。
そして、それゆえに
経験学習のクオリティは、現場のマネジャーによって左右されてしまう
のです。
ということは「経験学習を広げる」というのは、「現場のマネジャーへの働きかけ」がもっとも重要になります。彼らの共感、理解、そして実践なしで経験学習を推進することはできません。そして、それがもっともチャレンジングなことなのです。
最低でも、現場のマネジャーに対する下記のような働きかけを行うことが求められるでしょう。
1.経験を通じて人が成長するということに関する価値観を広めること
2.経験学習という考え方の概念的理解を広めること
3.経験の振り返りを支援するスキルトレーニングを提供すること
4.経験の振り返りを現場マネジャーができるよう、時間的資源をマネジャーに提供すること
5.経験学習した/させたものを評価する仕組みを組織内に広めること
当然のことですが、現場マネジャーは、人事部ではありません。彼らは「学びの言語」「経験学習という専門用語」からもっとも遠い人々です。その彼らに、これらの概念、ツールをわたして、実践してもらうことが、どんなにチャレンジングかは、経験のある方ならおわかりいただけるかと思います。
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今日は「経験学習」のパワフルさ、そして、その実践のチャレンジングさについて書きました。
「経験学習をコアにしたリーダーシップ開発」研究会は、また関根さん、舘野さん、参加者のご尽力で、もう一回ひらかれるようです。
また皆さんとの議論を愉しみにしています。
そして人生はつづく
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