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2016.10.3 06:33/ Jun

あなたは「鉱夫」ですか、それとも「旅人」ですか?:インタビューをめぐる2つのメタファ:スタイナー・クヴァール (著)、能智正博・徳田治子 (訳) 「質的研究のための「インター・ビュー」を読んだ!

 「やれば、誰にでもできるもの」と一般には思われていて、しかし、「誰でもできるようなものではないもの」のひとつに「インタビュー」があります。
   
 あたりまえのことですが、ヒアリングやインタビューは、テクニックや準備が必要です。しかし、そのことを学ぶ機会は非常に限られているのが現状です。今日は、インタビューについて学ぶことのできる書籍のご紹介です。
    
  ▼
   
 スタイナー・クヴァール (著)、能智正博・徳田治子 (訳) 「質的研究のための「インター・ビュー」 を読みました。「インタビューの入門書」です。入門書と銘打ってはいますが、実際には、一度でもインタビューをしたことのある人が手に取るもののようにも思います(右の本は、同じ著者による同類の本です)。以下、当該書の記述を適宜引用しつつ、本書の魅力や要旨をご紹介することにいたしましょう。
   
  
     
 本書は
   
 インタビューとは「職人芸」である
  
 という観点にたち、
  
(とかくインタビューの技術が語られるときに)「方法が全て的なアプローチ」にみられる厳密で客観的な構造を重視する「怪物」と、「方法は必要なしとするアプローチ」の自由で主観的な自発性を重視する「別の怪物」の「狭間」をうまく舵取りしながら進むこと
  
 をめざしているとのことです。
  
 「2つの怪物」は、両方ともに非常に手強いだけに、なかなか骨のおれることであったと推測できます。
  
 ▼
   
 本書冒頭部、まず著者は、私たちが暗黙のうちにもっている「インタビュー観」をゆさぶります。
     
「インタビューは鉱夫か、旅人か?」
  
 という2つのインタビュー観を提示するのです。
 そのうえで、どちらのメタファにたってインタビューをなすのか、読者に考えさせることを試みています。
  
 「鉱夫としてのインタビュー」は、「知識は埋蔵された鉱石のようなもの」と理解する立場です。
 インタビューされる対象者の内部にある「鉱石=知識」を、なるべく「汚れ」がつかないように丁寧に「掘り起こすこと」が、インタビュアーの仕事ということになります。
 
 ちょっとややこしい話をすると、機能主義、実証主義的な視座に立った場合のインタビューのとらえ方とは、こちらになるでしょう。

 ▼
       
 もうひとつのインタビュー観が「旅人」メタファのインタビューです。
   
 こちらのメタファにたった場合、インタビュアーは「遠く離れた土地に旅にでかける人」のようなものです。

 彼・彼女は「旅先に出会う、出会った人々」からさまざまな話を聞き、ときには、彼 / 彼女とともに彷徨い、ともに歩きます。そのなかで、旅人自身も内省を行います。関係者からきいた話を、旅人自身が、意味づけ、解釈を行います。

 この場合、インタビューとはさしずめ、旅人である彼 / 彼女が「家にもどってきたときにするお土産ばなし」のようなものです。
  
 このようにインタビューには2つのメタファが存在しています。
 皆さんは、どちらの観点にたって、インタビューをふだん為していますか?
  
 クヴァールの立場は、どちらかというと、後者に近い観点かと思います(アクティブインタビュー学派とも近い)。
  
 その姿勢は、本書のタイトルにもなっているように、
   
 インタビューとは「インター・ビュー」である
  
 というものです。
  
 「インター・ビュー」
   
 とは、
  
 インター(Inter : あいだで)+ビュー(View : 見方や見解)
  
 ということです。
  
 よって、クヴァールにとってのインタビューとは

「共通のテーマについての2人の人間のあいだの互いのまなざし、見解をやりとりをすること」
  
 に他なりません。
 おそらく、インタビューにおいて出会う両者の「共変可能性」こそが、インタビューの眼目ということになります。
  
 大変興味深いですね。
 ふだん、皆さんは、どんな観点にたって、インタビューをなしていますか?
  
  ▼
  
 冒頭で述べたように、インタビューとは「やれば、誰にでもできるもの」と思われていて、しかし、「誰でもできるようなものではないもの」のひとつです。
  
 本書には、「すぐれたインタビュアーである条件」についての記述もありました。それを列挙いたしますと、下記のようになります。
  
 1.幅広い知識
 2.構成力
 3.明瞭さ(簡潔な質問をなす能力)
 4.礼儀正しさ
 5.感受性の高さ
 6.ひかれた態度
 7.舵取りの力
 8.批判力
 9.記憶力
 10.解釈力
  
 まさにおっしゃるとおりと思います。
 インタビューとは、このような複雑な認知能力を要求する、高度なテクニックとあり方を要求します。それは冒頭述べましたように、「職人芸」なのではないかと思います。
  
  ▼
  
 今日はインタビューについて述べました。
  
 僕の一週間は、最低週に2日くらいは、何らかのインタビューを為しているか、受けているかのどちらかです。
  
 時には、インタビューに流されるのではなく、インタビューそのものについて思索を深めたいものですね。
  
 そして人生はつづく
 今週一週間も、頑張りましょう!
  
  

  

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