2016.9.9 06:34/ Jun
先日は、慶應丸の内シティキャンパスの拙講座「ラーニングイノベーション論」に、トヨタ自動車・トヨタインスティテュートの桑田正親さまにおこしいただき、トヨタ自動車さまにおける人材育成のあり方に、ご講義をたまわりました。
桑田さんには、台風接近という大変お足元の悪い中、ご出講をいただきまして、本当に心より感謝をいたします。素晴らしいご講義でした。本当にありがとうございました。
また、このたびのご出講を支えてくださった同社・同部門の米増隆一さんにも心より御礼を申し上げます。ありがとうございました。
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桑田さんからは、同社の人材育成の考え方、その具体的施策に関しまして、詳細にご講義をいただきました。
よく知られているように、トヨタ自動車さんにおける人材育成の根幹の考え方は「OJT」。
当日は、この「OJT」と「OJTを支える仕組み・風土・制度」についてお話をいただきました。
ここで「OJT」という言葉を用いるのは、いささか注意が必要であることを付記しないわけにはいきません。
一般の組織・会社では「OJT」とは、
1.主に新入社員や若年層を対象にして行われる
2.上位者からの発達支援(助言・指導)のこと
をさします。
一般の組織では、OJTは新入社員のためのものでしょう。
すなわち、一般の会社では「中間管理職や上級管理職を対象にして行われるOJT」というものがありません。
しかし、トヨタ自動車さまにおいて「OJT」とは「教えるー教えられるの関係が組織全体に展開していること」をさしていると解釈できます。
要するに
経営者が上級管理職を教える
上級管理職が中間管理職を教える
中間管理職が従業員を教える
こうした「屋根瓦式の学習する風土(上が下を支え、下がさらに下を支えるような屋根瓦に似た人材育成)」が組織全体にみなぎっている状態が「OJT」ということになります。大変興味深いことですね。
当日は、桑田さんから、こうした風土や組織がなぜ生まれるかについても、あますことなくお話をいただきました(ご興味のある方は、下記の記事をご覧下さい。一端がご理解いただけるものと思います)。2010年に吹き荒れた同社への逆風をへて、同社がいかに人材育成方針を転換していったのかについて興味深いお話をいただきました。
講義のあとは、中原がいったんラップアップを行い、続いて質疑です。
受講生の方々からは、どんどんと質問の手があがり、大変活発な意見交換の場になりました。参加者の皆さんも御協力ありがとうございました。
桑田さんは、受講生から寄せられるどんな質問も、丁寧に受け止めてくださり、また回答をしてくださいました。
その受け答えのご様子は、さしずめ、洗練された合気道の技を見るようで(すみません、わたくし合気道好きなもので・・・笑)、「さすがは、トヨタの人材開発を率いている方だ!」と思わず、膝を打ってしまいました。
本当にありがとうございました。
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トヨタ自動車さまに関しましては、去年・今年と、プレジデントさんで機会をいただきまして、盟友・井上佐保子さん、プレジデント編集部の佐藤さん、九法さんと取材をさせていただきました。
下記は登録が必要なようですが、記事が今でもお読み頂けるようですので、もしご興味があれば、どうぞご覧下さい。
1980年に戻れ! トヨタの「人の育て方」大改革始動【前編】
http://president.jp/articles/-/17708
1980年に戻れ! トヨタの「人の育て方」大改革始動【後編】
http://president.jp/articles/-/17711
2年連続で生産台数は1000万台を超え、過去最高益を更新したトヨタ自動車。絶好調に見える中、社内で着々と進められているのが、大規模な教育改革だ。人材育成を専門にする中原淳東京大学准教授とともに、その現場を取材した。
トヨタの未来を担う新入社員教育「モノづくり研修」に潜入!:「現地現物」「教え教えられる風土」復活へ
http://president.jp/articles/-/18506
教育改革の大事な入り口になる新入社員教育プログラムは、期間をこれまでの半年から1年に延ばし、「基礎固め徹底プログラム」として刷新された。入社半年後の9月に各部署に仮配属し、OJTも含めて1年間を見習い社員として徹底的に鍛えるという。
下記はその当時の中原のブログです
「トヨタの人づくり」の秘密!? : 次世代幹部候補「かばん持ち研修」から「新任部長フィードバック研修」まで
https://www.nakahara-lab.net/blog/2016/03/post_2576.html
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最後になりますが、同社の桑田さん、米増さんには、重ねて御礼を申し上げます。
わたし自身にとっても、よい学びの場になりました。本当にありがとうございました。
そして人生はつづく
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追伸.
新刊「人材開発研究大全」(東京大学出版会)デジタル入稿しました。いやー、編集作業はとてつもないものでした、笑。
著者の皆さまも、本当にお疲れ様でした!&御玉稿感謝です!(まだ校正がありますが・・・)。発売は年度内です。どうぞお楽しみに!
人材開発研究大全
東京大学出版会
中原 淳(編著)
はじめに 人材開発研究の夜明け 中原 淳
【1部】 教育機関からの移行
1章 経営学の視座からみた採用 服部泰宏
2章 採用における面接研究の展開 今城志保
3章 企業の視点からみた「大学時代の経験の効果」 舘野泰一・中原 淳
4章 学校から仕事へのトランジション 溝上慎一・保田江美
5章 大学生のリーダーシップ開発 舘野泰一
6章 エンゲージメントを高める大学授業 中澤明子
7章 インターンシップによるキャリア育成の効果 見舘好隆
8章 入社後の初期キャリアに対する就職活動の影響 高崎美佐
【2部】 組織人への移行
9章 組織社会化研究の展開 尾形真実哉
10章 OJTとマネジャーによる育成行動 松尾睦
11章 OJTと社会化エージェント:孤独にやらないOJT指導
関根雅泰・中原淳
12章 OJT指導員の支援行動の探究:効果的なOJTを支える心理的基盤
保田江美・関根雅泰・中原淳
13章 研修転移研究の現在 関根雅泰・斉藤光弘
14章 新人研修の効果 尾形真実哉
15章 ゲーム研修の効果:組織市民行動醸成の観点から
福山佑樹・高橋興史・中原淳
16章 中途採用者の組織再社会化 中原 淳
17章 経営理念と人材開発 高尾義明
18章 元外国人留学生の組織社会化 島田徳子
【3部】 管理職への移行
19章 管理職へのトランジション 中原 淳
20章 女性管理職の育成 国保祥子
21章 育児経験とリーダーシップ発達 浜屋祐子・中原淳
22章 越境学習の可能性 舘野泰一
23章 越境型管理職研修の学習効果
辻和洋・齊藤光弘・関根雅泰・中原淳
24章 降格人事と上司の管理行動
田中聡・中原淳・保田江美・斎藤光弘・辻 和洋
【4部】 新たなフィールドへの移行
25章 若手教員の経験学習 町支大祐
26章 若手教員のメンタリング 脇本建弘
27章 教師の専門性発達 山辺恵理子
28章 校長のリーダーシップと学校改善 吉村春美
29章 新人看護師の能力の向上(1):中堅看護師からの支援 保田江美
30章 新人看護師の能力向上(2):看護チームワークの効果 保田江美
31章 医療従事者の変容的学習 孫大輔
32章 役員秘書の経験学習 伊勢坊綾
33章 地方公共団体の人材開発 斎藤光弘・辻 和洋・中原淳
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