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2006.7.26 06:00/ Jun

がんばれ仏教

 上田紀行先生(東工大・文化人類学)の上梓した「覚醒のネットワーク」は、学生時代、もっとも影響を受けた書物のひとつであった。
 上田先生と言えば、スリランカの悪魔払いをフィールドワークし、いちはやく、「癒し」という概念を日本に紹介した方として知られている。

 そして、先日読んだ同氏の「がんばれ仏教」には、さらなる衝撃を受けた。この衝撃は、ちょっと今適当な言葉をもって言い表すことができない。

 誰にも期待されない、「葬式仏教」と化した「仏教」をいかに復興するか。仏教は、いかに人々を癒し、どのように社会変革に貢献しうるのか。
 本書では、志ある六人の僧侶を紹介している。彼らは、これまで「寺」が行うとは思えなかった活動に自らのりだす。経理の公開、NPOやイベントの主催、まちづくりへの協力、国際的なボランティア・・・。アクティブな彼らに、一般の「僧侶」の姿はない。
 上田先生は、立ち上がった僧侶たちとともに、「仏教ルネッサンス塾」をひらき、「ボーズ・ビー・アンビシャス!」と高らかに宣言する。
仏教ルネッサンス塾
http://www5.ocn.ne.jp/~seishoji/runenew.html
 この本で、僕は、久しぶりに「活字」で涙した。もちろん、仏教の話だけに涙したのではない。本書を読みながら、僕は、確かに「仏教」に、「現代の教育の混沌とした状況」を重ね合わせていた。
 かつてほどの社会的期待やゴールを失いつつある「教育」という活動。教員、そして教育学者。不確かな時代に、どちらに向かって歩めばよいのか、ともすればわからなくなっている人も多い。
 しかしひとつだけ確かなことは、どんなに期待が失われようとも、どんなに揶揄されようとも、「教育」は今日も連綿と続く。教室には、今日も出席確認の教師の声が響く。子どもは一日たりとも、成長をやめない。
 Boys, be ambitious!
 今が、そのとき
 まだ遅かないぜ
 本書は仏教の本である。
 しかし、教育関係者がこの本から学べることは多いと思う。

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