2016.6.2 05:51/ Jun
僕が研究者として大切にしていることのひとつに、
「現場の臭いを感じる一般化」
というものがあります(笑)。
僕の研究活動で「現場の臭いを感じる一般化」が全う出来ているかどうかはわからないけれど、自分の活動のすべてにおいて、このことはかなり重視していることのひとつです。
昨日は大学院ゼミがありました。
大学院生の皆さんとも、このことを議論しましたので、少しだけ、この場でもさせていただきます。
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一般に研究者は、「シャバワールド」で起こっている個別具体的な現象の中から、様々な研究方法論を駆使して、「一般的な原理・原則・概念」をつくりだします。
このあたり、簡単には単純化できないところもありますが(一般化をめざさない研究方法論もたくさんあります)、マジョリティが何かと申しますと、そういうことでよろしいのかなと思います。
研究とは、「個別具体的な現象」を「メタな立場」から記述し、どのような場所にでも、通じうる「一般化」をおこなう行為であるとして、のちの話を進めます。
また、このことは僕の研究領域(現場がある実践的研究)だからこその部分がありますので、他の分野に関しては当てはまらない場合もあります。
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さて、一般化ということになりますと、ここで大切になってくるのが、
どの程度「一般化」をおこなうか=どの程度現場から離れ概念をつくりだすか?
ということです。
まずは、思い切り可能な限り現場から離れ、どんな場所にでも通用するような概念をつくりだすことが想定されます。
やり方によっては、あらゆる現象を説明しうるような概念をつくりだすことも不可能ではないかもしれません。
しかし、現場を離れ、一般化を進めればすすめるほど、メタに上がればあがるほど、そこで得られる概念や理論というのは、「漂白」され、「現場の臭い」はほぼ失われます。
「現場の臭い」は綺麗さっぱり「ファブリーズ」され「無味・無臭な概念」が得られます。
おそらく、こうした概念は、研究としては評価されるのでしょうけど、現場の方々には刺さりません。
現場の方々は「現場の臭い」があるかどうかに非常に敏感だからです。
しかし、今度は、逆に、現場に近く寄りすぎますとどうなるでしょうか。
ファブリーズしていませんので、現場臭はプンプンとします。
しかし、現場に近く寄りすぎますと、今度は、研究という活動の意味が危うくなります。現場べったり、現場そのものであってよいのなら、わざわざ、研究者という第三者が現場のデータを取得させて頂き、分析をおこなう必要などありません。
そこで先ほどのめざすべき地平が見えてきます。
研究なのだから「一般性」はめざす。
しかし、「一般性」はめざしつつも、過剰な一般化はしない。
あくまで「現場の臭い」を残す程度とする。
現場の人々が呼んで、「あるある」と思ってもらうものをめざしつつ、一方で、「こういう見方もできるんだね」と思って頂ける概念をつくりだす。
これが
「現場の臭いを感じる一般化」
です。
はっきり言って「中途半端」です。
理論家からは評価されるかどうかは不透明です。
また現場にも違いので、現場の方々から総スカンを食らう可能性もあります。
しかし、ここがめざす地平です。
他の方の仕事のあり方は知りません。
僕の仕事は、こうありたいといつも願っています。
まぁ・・・できているかどうかはわかりませんが。
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今日は「現場の臭いを感じる一般化」について書きました。思い切りマクロに考えてみれば、これは「実践と研究のあり方」に関する私見だとも考えられます。「実践と研究のあり方」は、僕の研究の深層を流れる大テーマでもあります。これまでにも、下記のような文章を書いておりますので、お暇な方はご笑覧下さい。
「研究」と「実践」の関係を考える場で起こりがちな3パターン:あるべき、オマエが悪い、情報交換
http://bylines.news.yahoo.co.jp/nakaharajun/20140701-00036914/
実務家が必要としている「理論」とは何か?: 「実践」と「理論」のあいだの「死の谷」を超えて!?
https://www.nakahara-lab.net/blog/2015/02/post_2373.html
実践家はなぜ「研究知見」をスルーするのか?:理論と実践の「死の谷」めぐる罵声の根拠!?
https://www.nakahara-lab.net/blog/2015/04/post_2404.html
理論を知れば「アチャパーと目を覆いたくなる大失敗」を防げるか!?:理論にできること、できないこと
https://www.nakahara-lab.net/blog/2015/12/post_2535.html
皆さんのまわりには、現場の臭いを感じる研究はありますか?
そして人生はつづく
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