2006.2.22 07:16/ Jun
「通信と放送の融合」のことで、世間が盛り上がっているようです。IP放送における著作権処理を簡略化することが論議されているようですね。
ところで、著作権といえば、僕の研究室では日々、それと格闘している学生たちがいます。言うまでもなく、UT OCWやTODAI TVなどの著作権処理をしている学生スタッフたちです。
UT Open Course Ware
http://ocw.u-tokyo.ac.jp/
彼らの活動をなくして、UT OCWもTODAI TVもありません。東京大学における教育の情報化のムーヴメントは、彼らの地道な活動にかかっているところもあります。その面倒な作業には日々アタマが下がる思いです。本当にありがとう。
彼らは東京大学教育企画室のスタッフとして、全世界の著作権ホルダーたちに、日々、同意をとるという作業をしています。また名刺をもって、先生方にUT OCWの意義を説明し、同意書をとってくるのも彼らの役割です。
そうした作業に円滑に従事出来るよう、弁護士の先生、知財部の方々と相談し、活動のフローをきめ、テンプレート(契約インタフェース)をつくる。そして、研修を行い(サバイバル著作権・めざせ脊髄反射という研修です)、進捗管理をするのが僕や山本さんの役目です。
僕の研究室には、TREEプロジェクトオフィスが置かれています。よって、僕の研究室は、まさに権利処理がおこなわれる「現場」なのです。
仕事柄、僕は、「教育と著作権」の講演などを聞くことがあります。 「知識としての著作権」、あるいは「行政の動向としての著作権」の話が多いのですが、あまりピンとこないことが多いです。そうしたことは大変勉強になるのですが、ふだん、学生たちが格闘している世界は、具体的で生々しいのですね。そことのギャップを埋めるのに、すこし時間がかかります。
たとえば下記のような問題が現場では毎日のように起こっています。ちょっと皆さんチャレンジしてみてください。
僕は、学生スタッフたちに、こうした状況を聞いたら、「脊髄反射」のレベルで、誰に対して、どういう処理を行わなければならないかを判断して欲しい、と言っています。
処理なんておおげさにいいますが、要するにいくつかのプロダクションルールの集積です。そして、モノにもよりますが、手続きをふんでいけば8割から9割の確率で同意はとれます(断られることはまずありません)。
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ある先生からUT OCW公開用にお預かりしたDVD。その中には、シンポジスト6名による講演が入っている。
このシンポの企画者はB学部である。ビデオは外部の業者Dを使って撮影された。
シンポジストのうち、1名はパワーポイントでプレゼンテーションしている。そのパワポの中には、A出版社とB出版社から出版されたH先生(他人)の著書からの図版がたくさんはいっていた。図版の引用の際には、引用情報がつけられていた。残りの5名は口頭のみにて発表を行っている。
シンポジウムには600名のオーディエンスがいた。オーディエンスは後ろからルーズショットで撮影されており、個人が特定出来る状態ではなかった。
このDVDをUT OCWで公開するには、誰に対してどのような著作権同意処理をを踏めばよいか???
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最初に断言しておきますが、唯一の解はありません。解は大学のポリシーによって異なります。東京大学には東京大学の考え方があります。それを開示することはできません。
ですが、細かいところはさておき、上記の文章を読んだだけで、最低限、この同意だけは絶対にとらなきゃならないな、というところがあります。それはどこでしょうか?
学生たちは日々こうした作業に従事しています。
僕は、彼らはとても貴重な経験をしていると思っています。なぜなら、「通信と放送の融合」が加速すれば、著作権に関する知識や経験のニーズが高まることはあっても、低まることはないからです。面倒でいて、地道な作業ですが、それが、自分の「経験ノート」の数行くらいの記述になってくれたら、と願っているのですが・・・「ええい、めんどくせー」とスタッフさんたちはお怒りになるかも知れませんけれども。
事件は現場で起こっているんだ!
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