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2015.7.24 20:59/ Jun

もれなく「廃人」になれるラップアッププレゼンテーション!? : 聴衆にフィットしたプレゼンをいかにつくるか?

 ラップアップ・プレゼンテーション(Wrap up presentation)というものがあります。ラップアップとは「包み込むこと=まとめること」ですので、要するに「まとめのプレゼンテーション」です。
 以前、「知がめぐり、人がつながる場のデザイン」という本に書かせてもらったことですが、僕は、このラップアッププレゼンテーションを比較的得意にしています。

 ラップアッププレゼンテーションでは、自分が司会・ファシリテーションをつとめるフォーラムやセミナーなどで、登壇者の複数の発表をリアルタイムで伺いながら、その要旨をプレゼンスライドに要約し、最後に、この日一日の要点を聴衆の方々にむけてプレゼンテーションします。
 前もってプレゼンをつくりそれをデリバーのではなく、今ここの、その場で、リアルタイムに、聴衆の方々にもっとも「フィット感」のあるプレゼンをつくります。その場の「空気感」、会場の反応をリアルタイムにプレゼンに盛り込めますので、もし成功すれば、比較的高い満足度を得られます。
 僕の場合、1ヶ月に1度は、どこかのフォーラムやセミナーで、そのようなラップアップをしているような気がします。
  ▼
 あまり知られていないことですが、
 ラップアップは、体力と精神力を激しく消耗する荒技
 です。
 なぜなら、それは複数の認知的なタスクの積み重ねだからです。
 
1.複数のご発表やご講演をリアルタイムで聞くこと
2.会場の反応やうなづきを察知すること
3.大切なことを要約しながら、聴衆にとっての意味づけや問いかけを考えること
4.自分の引き出しや知識を検索して、関連する情報や理論を取り出すこと
5.イラストやアートワークを駆使しながら、プレゼンスライドをつくること
6.自分の発表時間ぎりぎりにプレゼンを間に合わせ、ただちにデリバーすること
 などを、ほぼ同時に行っていきます。
 自分の発表時間までに、プレゼンが完成しなければ「アウト」です。
 いわゆる「放送事故」のようなもので、取り返しはつきません。
 要するに、これは「捨て身」のワザです。
 ラップアップをすることに「腹をくくったら」、
 プレゼンを「死んでもつくり終える」しかない
 のです。
 くどいようですが、もし完成しなければ「放送事故」です。幸い僕の場合は「放送事故」はありませんが、「放送事故寸前」「門前憤死5秒前」くらいは日常茶飯事です。せんだっても、自分のプレゼンの順番がくる3秒前にプレゼンを作り終えることができ、それをそのままプレゼンした、という感じになったことがあり、背中に嫌な汗をかきました。そんなこんなで、毎回、異常な緊張状況で、プレゼンをつくっています。
 しかし面白いもので、20代の頃は、こうした作業を何一つシンドイと思いませんでした。というよりも、むしろ、その異常な緊張状態を愉しんでいたような気もします。もう、頭がおかしいです。
 が、僕も、今年で40になりますもので、最近、これがシンドイなぁ、と思うようになりました(笑)。できれば、誰かかわってくんない、とか(笑)、一瞬ふぬけたチキン野郎になっている自分にムチをいれて生きています。
 といいますのは、ラップアッププレゼンを1つやったあとは、もれなく「廃人」になれます。先ほどもお話しましたように、捨て身でマルチタスクをこなしますので、気力・体力をもれなく消耗するのです。
 
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 最近、このイラストの登場頻度が多いですね(笑)
 廃人(泣)。
 ▼
 思い起こせば、こうしたプレゼン技術を、あまり自分の指導学生をはじめ、他の人には、伝えてきませんでした。学生の中には、何人か、これに近いものを実践できる人もいますが、もし、こうしたことにも意味があることなのだとしたら、やり方を伝えたいなとも思います。実は、ラップアッププレゼンテーションには「コツ」があるのです。詳細は、また別の機会におはなししますが、もっとも大きなコツは「自分を消して聴衆になりきること」、一方で「自分の土俵にひきずること」です。これらは一見相反しますが、ラップアップのコツです。
 実は、先だってのある会では、研究室の指導学生であるD2の保田江美さんが、はじめて、これに挑戦しました。
 素晴らしい挑戦に敬意を表します。彼女はやり切りました。よいプレゼンであったと思います。本当にお疲れさまです。で、ところで、次、いつやる?(笑)
 半分冗談で申し上げますが、中原淳の「ラップアッププレゼンテーション講座」というのも面白いなんて思いました。複数の他人のプレゼンを聞きながら、みなで個別にラップアッププレゼンをつくるのです。それを比較したら、面白そうだなと思いました。いくつかコツがあるので、そうしたものをフィードバックもできそうです。
 この講座は、講座修了後は、もれなく、みんなで「廃人」になれる講座になることでしょう。激しく体力と気力を消耗しますので、「どMの人」しか受講できないかもしれません。
 そんな講座、ニーズありますか?
 もれなく「廃人」になれますけど(笑)
 そして人生は続く

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