NAKAHARA-LAB.net

2015.7.22 05:59/ Jun

「働くこと」をみすえた「高校」の研究!? : 全国調査&Webサイト「マナビラボ : ひとはもともとアクティブラーナー!? :」がはじまるよ!?

祝!マナビラボが立ち上がりました(2015年12月15日)!
高校×学び×アクティブラーニングのポータルサイト!、どうぞご覧ください!


「未来を育てるマナビラボ:ひとはもともとアクティブ・ラーナー!」

http://manabilab.jp/
  
manabilab_hyoushi_desu.jpg
 ---
 2015年4月から、東京大学・中原淳研究室では、日本教育研究イノベーションセンターさまのご支援を賜り、新たな研究プロジェクトを開始させていただいております。
 研究の舞台は「ザ・高校」!
 いやはや、ハイスクールなのでございます(笑)。
 なぜ高校かは、あとでご説明いたします。
 このプロジェクトでは、
1.日本全国の普通科のある高校3900校を対象にして、「双方向型の授業(参加型授業)」をどの程度実践しているかの基礎調査を実施させていただく
(お忙しいところ調査に御協力いただいている先生方に心より感謝いたします。ありがとうございます)
2.高校の先生に立ち寄っていただけるWebサイトを新しくつくり、面白い授業を実践なさっている先生、それぞれの領域で挑戦している全国の高校生、高校に期待をかける教育関係者以外の方々(経営者・スポーツ選手など)に取材を行い、記事化し、人々のコミュニティをつくっていくこと
 を実行します。
 こちらはプロジェクト開始当初にだしたプレスリリースですが、もしよろしければ、ご覧いただけますと幸いです
active_learning_press.png
【プレスリリースPDF】東京大学、「高校におけるアクティブラーニング型授業」を推進するための高大連携プロジェクトを開始
http://www.nakahara-lab.net/temp/active_learning_koukousei.pdf
 プロジェクトは4月から本格稼働しました。そこからフルスロットルで加速しているプロジェクトメンバーの山辺恵理子さん、木村充君は、松尾駿君、堤ひろゆき君は、阿鼻叫喚な毎日をお過ごしなことと思います。お疲れ様です(感謝!)。ディレクターをつとめている山辺さんを中心に、チーム一丸となって前進しています。
 また、このプロジェクトに伴走・併走し、熱いご支援をいただいている日本教育研究イノベーションセンター・河合塾の成田秀夫さん、船津昌己さん、谷口哲也さん、赤塚和繁さん、坂上紀子さん、片山まゆみさん、高井靖雄さん、友野伸一郎さんにも、この場を借りて心より感謝いたします。皆様のお力添えがなければ、ここまで来ることすらできませんでした。ありがとうございます。
 おかげさまで7月、朧気ながらですが、プロジェクトの成果物の輪郭が見えてきました。
 まず、調査に関してですが、、、
 文部科学省のお力添えもあり、日本全国の普通科のある高校3900校を対象にして質問紙調査票が全国に配付され、現在、回答をいただいている状況にございます。
 ご回答を検討いただいている3900校の高校関係者のみなさまには、この場を借りて厚く御礼を申し上げます。
 調査表は、管理職・主任・一般の教員の先生方の3種類にわかれており、これを多角的に重ね合わせあわせると、学校内において、いかに、どの程度、カリキュラムを構築していくかがわかってきます。調査は木村充君が中心になって、チームですべてオリジナルでつくりました。
 なお、本調査に関してご支援をたまわりました、文部科学省の大杉住子さま、小野賢志さま、清水彩子さまには、この場を借りて御礼を申し上げます。ありがとうございます。
 次にWebサイトの方ですが、、、
 正式名称が「未来を育てるマナビラボ(愛称:マナビラボ):ひとはもともとアクティブラーナー」に決まりました!「ひとはもともとアクティブラーナー」という副題がミソです。
 こちらの開発を株式会社スパイスワークスさんとご一緒させて頂くことになりました。スパイスワークスの関根さん、永島さんには、現在、様々な案をおつくりいただいています。
 なお、本サイトのイラスト、タイポグラフィーには、イラストレータの加納徳博さんにたっていただくことになっております。ありがとうございます。
 
 マナビラボでは、下記のようなコンテンツが毎週更新されていきます!
 ・ニッポンのマナビ:いまの高校の授業とは?!
   インフォグラフィックスでわかる調査結果!
 ・マナビを拓く! 授業のひみつ
   日本全国の面白い授業集まれ!
   地方、都市、進学校からそうでない高校まで
   様々な学校の、様々な授業をとりあげる取材記事
 ・3分でわかる! マナビの理論
   3分間で学びの理論を解説します
 ・15歳の未来予想図
   中原 × 各業界のトップランナーの方々による対談です。
   15歳の高校生が、大人になるとき、どんな働き方が
   求められるようになるのか?
   為末大さん、今村久美さんなどにお逢いする予定です(お忙しいところ感謝です!)
 ・超高校生級!明日をつくる マナビの達人たち
   日本全国で我が道をいき、世界を切り開いている高校生を取材します。
   すごい高校生にお会いしたいです。
 ・どうするアクティブラーニング? 先生のための相談室
   日本教育研究イノベーションセンターさんによる
   熱い思いをもった特設記事です
 ・高校生ライターがいく
   現役の高校生をライターとして雇用し、
   彼らの日々の日常を綴ります
 ・マナビ漫才
   漫才コンビ・モクレンがおくるマナビ漫才です。
 こちらの方は、今、ディレクターの山辺さんが(泣きながら?)各所に調整を行い、このプログラムをコンテンツにするべく尽力なさっています。木村充君、松尾駿君、堤ひろゆき君も早速取材を開始してくれています。お疲れ様です。
 また、これらのプロジェクトの成果物を1日にギュッと濃縮したシンポジウムらしきもの?を、3月26日@東京大学・本郷キャンパスで実施させて頂くことになりました。こちらはまだ内容は固まっていませんが、どうぞご参加いただけますよう、よろしく御願いいたします。
 このように、多くの方々の御協力とご尽力により、ようやくプロジェクトの成果物の全体像が見えてきたことは、非常に嬉しいことです。
 この12月サイトの本格的運用、続いて調査結果の公開にむけて、皆で努力していきたいと考えています。
  ▼
 さて、このことは以前ブログにもかきましたが、企業 / 組織の人材開発を専門にする僕が、なぜ高校のプロジェクトに多くの方々のご尽力をいただきながら、このプロジェクトを立ち上げたかに関しては、いくつか理由があります。
 もっとも大きな理由は、僕は、このプロジェクトを「高校だけを対象にしたプロジェクト」だとは捉えていないということです。
 むしろ僕の思いはこうです。
「高校・大学(教育機関)ー就業(仕事世界への参入)」をトータルにとらえたうえで、出口(仕事世界への参入)をみすえて、「教育機関のあり方」を議論するべきときにきているのではないか
 もちろん、こうした問題の切り取り方は、これまでにも存在していたことはいうまでもありません。
 競争環境がグローバルに激化し、求められる人材像が急激に変化していくなかで、「今ならまだ間に合うかもしれない」という思いがあります。「やれ、教育機関が悪い」だの「やれ、企業が悪い」だの後ろ向きな責任転化論ではなく、双方をトータルにとらえる視点と議論が必要である気がします。
 
 僕自身は、過去10年以上にわたり、企業研究、人材マネジメントの実証研究をなしてきました。そのなかで、企業研修の現場にも立ち、様々なビジネスパーソンと接していく中で、ここ数年ふつふつとこみ上げてきた思いがあります。
 それは、多くの企業研修で学ばれている内容で、特に、下記に類するような経験は、いくら「前倒し」してても「早すぎる」ということはないということです。
 特に、
 コンフリクトの中から、人々と合意する経験
 多種多様な社会的背景をもつ人々と協働する経験
 リーダーシップを発揮して、人を巻き込む経験
 論理的に物事をとらえ、アウトプットを行う経験
 などは、変化の早い時代にあっては、教科や教科外で、無理のないかたちで教育機関でも学ばれるべきであると感じます。
 そのような方向性に経験学習を進めていくことが、今後の就業をみすえた場合、決定的に重要になってくるだろうな、という予想がございます。
 ワンセンテンスで申し上げますと、
 マネジャーになってから
 ロジカルシンキングをはじめても
 無駄とはいいませんが、
 圧倒的に「遅い」のです
 誤解を避けるために申し上げますが、単に、企業で必要になる能力開発を、教育機関に押しつけたいわけではないのです。
 そうではなく、上記のような経験は、今後の世の中、就業環境をみすえますと、これからを生きる個人の側にたっても、学齢の早いうちから学び、さらに、企業に入ってからも、学び続けられることが重要だと思うのです。
 これは、もちろん、批判もあるかもしれません。
 高校教育の目的は「仕事世界への参入」だけじゃないぞ、と。
 それはおっしゃるとおりです。
 市民性の涵養やその他にも教育機関の役割があることは承知していますが、多くの高校生が数年後に目前にするのは、「仕事があるか、ないか」「食っていけるか、いけないか」ということです。
 僕は、自分の研究から自信をもって言い得るこのアプローチから、教育機関の問題を論じてみたいと思います。
 これは以前にも申し上げましたが、このことに僕は「希望的観測」をもっています。
 僕は、これまでの高校教育に、これまでの現場の先生方のお取り組みに、このことを考えるヒントがたくさんあると思っているからです。そのことが、「今あるもの」をまずは把握し、そこから物を論じたい、という本プロジェクトの調査手法ー量的調査と事例調査という研究の立ち上げ方にあらわれています。
 僕は、このプロジェクトで、理想型をかかげて、それを押しつけることをしません。むしろ、これまでやってきたことを再評価し、よりよく推進していくことを願っています。
 何もアクティブラーニング?という新たな?取り組みに青筋たてて緊張しなくても、これまでにも、多くの現場の先生方は、様々な地道な取り組みをなさってきたと思うのです。このプロジェクトでは、たとえば双方向型の授業をありかた「これから新しく始める物事」と「見なさないこと」ず、むしろ、「再発見!」するというアプローチにたってプロジェクトを実施します。
 もちろん、このプロジェクトをはじめるからといって、僕の研究が、企業研究・人材開発研究からシフトすることはありえません。むしろ、これまで培ってきた組織研究のスコープをさらに広げ、「高校ー大学ー企業」というトランジションにまつわる、人々の学びを描いていきたいと考えています。
 そして人生は続く!

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