2015.6.22 08:40/ Jun
先だって、大学院ゼミで、大学院学生の島田徳子さんが英語文献発表をしてくださいました(感謝!)。
大学院生の皆さんと読んだ文献は、Morris et al (2014)、Research in organizational behavior. 34 p189-215で、「海外赴任者の異文化間学習と訓練への応用」に関するものでした。
海外赴任者(海外赴任予定者)に対する教育、学習としては、かつて、拙著「経営学習論」でも扱ったことがありますし、ここ数年、ダイヤモンド社さんとの共同研究でも、「海外赴任者の縦断調査研究・アセスメント開発研究」を継続させていただいております(ありがとうございます!)。
この研究で指摘されている内容は、我々のデータと同じ所も数多かったのですが、一方で、かなり違うところもあり、興味深く読ませていただきました。
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個人的に最も興味深かったのは、
海外赴任者が、海外赴任先で出会う「現地の人」は、誰一人として「ステレオタイプ化された現地人」ではない
という指摘です。
たとえば、あなたがアメリカに赴任したという場合、そこで出会うアメリカ人は、僕たちが勝手に持っている「ステレオタイプ化されたアメリカ人」ではく、それぞれ固有の人生・経験を生き、それぞれに違う人である
ということです。
ま、アタリマエなんですが、改めて、なかなか考えさせられますね。
これは立場を逆にしてみれば、話はわかりやすいですね。
たとえば、ある外国人の方が日本に赴任してきた場合、そこで出会う人は、「ステレオタイプ化された日本人」ではありません。話をわかりやすくするために、非ビジネス的に、過剰に戯画的に描き出すならば、日本に赴任してくる外国人の方々が出会う日本人は、
金閣寺みたいな家に住んでいて、庭は枯山水で、自宅のお風呂にはフジヤマの壁画が描かれていて、娘がコスプレ、息子がゲーマな日本人
ではないわけです(笑)。
日本に赴任してくる外国人は、「それぞれに異なる日本人」ーつまりは、固有の人生を生き、固有の意味体系のもとで暮らしている、固有名詞をもった複数の日本人と相対することになります。
そして、もしそうであるならば、
ステレオタイプ的な日本人は、ちょめちょめだから、ほげほげすべし
的な赴任者向けの教育訓練は、全く役に立たないとは言いませんけれど、注意深く選択される必要があります。
今日の話は、アタリマエといったら、アタリマエですが、世の中では、これが逆になることがあります。たとえば赴任前研修などでは、
ちょめちょめ人はホゲホゲだから、にょろにょろするべき
みたいなことが教えられたりすることもあります。
知らないよりは知っていた方がいいこともあるので、それらもまったく役に立たない、ということはないのですが(特に商習慣や雇用慣行に関する事前知識はぜったいに必要でしょう)、教育するべき内容を注意深く選択しなければ、最初から人種のバイアスにからめとられ、正確な判断を見失ってしまうと言うことですね。
結局、「ステレオタイプ化された認識の枠組み」に頼ってすぐに結論をだすことを「うーん、うーん」と我慢して(専門用語を使って言うならば、認知的完結欲求に抗うことですね)、その場の状況を観察しながら、状況を判断し俯瞰的な目をもちながら(Cultural Intelligenceの中のメタ認知能力をみつこと)、その場の状況にもっともあった判断をしていく必要があります。
ワンセンテンスでいえば
「曖昧さへの耐性」と「メタ認知」
ということになりますね・・・。
そして、、、ここでわたしたちは奇妙なことに気づきますね。
これらの能力は、何も海外赴任だけに関係してくることではないからですね。要するに現代社会で生きていくためには、海外赴任であろうと、そうでなかろうと、
「見通しのきかないもの」とつきあい
状況に応じて即興的な判断をなしうる能力
が求められるということです。
ま、これはロボットでは無理かもね。
そして人生は続く
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