2015.4.22 07:20/ Jun
精神論と理論の関係について、鋭い洞察をなさっている方に、元ラグビー日本代表監督の宿沢広朗さんの言葉があります。宿沢さんは惜しくも若くして病に倒れますが、彼が残した著書「テストマッチ」には、その言葉が残されています。少し長くなりますが、ここで引用してみましょう。
まず、宿沢さんは、スポーツやラグビーの世界に蔓延する「精神論第一主義」や「ガンバリズム」を相対化しつつ、「精神論」と「理論」の関係を下記のように述べます。
理論と相対するものに「精神論」がある。いわゆる「根性論」や「気合い」や「やる気」といったものだが、精神論第一主義的な考え方は「危険」である。
(中略)
「絶対に勝て」とか「死ぬ気で頑張れ」というのは比較的やさしいことである。 (中略)しかし、本当に必要なことは「絶対に勝て」ということよりも、「どうやって」勝つのかを指導することであり、「がんばれ」というのなら「どこでどのように」具体的にかつ理論的に「がんばる」のか指示することではないだろうか。
(中略)
つまり、根性論や気合いややる気といったものをいったん「相対化」します。僕の言葉をもってすれば「あとは根性で!」「あとは気合いで!」というのは、「思考停止」を促すワードであるように思います。宿沢さんは、それらの言葉を相対化したうえで、「具体的」かつ「理論的」に指導することの大切さを述べます。
一方で、宿沢さんの素晴らしいところは、「精神論」を完全には否定しないことです。「理論だけで試合には勝てない」という言葉は、非常に重みをもって感じ入ることができます。僕もそのとおりだと思います。セオリーや考えることだけで試合に勝てたら、苦労はしません。そこには、やはり「思い」や「感情」や「根性」も必要なのです。
精神論を全く否定する気は毛頭無い。理論だけで試合には勝てないことも充分知っている。しかし、理論的な技術、判断力をしっかり身につけたうえで精神論を展開しないと、まったく無意味なことになってしまう。
(中略)
その上で、下記のように結論づけます。
要するにスピリットとかメンタルなこと、すなわち精神論的なものは「プラスアルファー」のものであって、あくまで理論が優先すべきものと考えている。精神論だけをふりまわすのは「有害」である。
(同書p53より引用)
精神論とは「プラスアルファ」のものであって、あくまでそれは理論を補強するためのものであること。そして精神論だけを振り回すのは有害であることです。
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いかがでしょうか。これほど明快に、精神論と理論の関係を述べている言葉を僕はあったことはありませんでした。惜しむらくは、宿沢さんが夭折なさったことです。僕はラグビーはやったことはありませんが、一度、彼らの試合を見てみたかったなと心から思います。
「リーダーとは選ぶものではない。育てるものである」
(宿沢広朗)
そして人生は続く
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