2015.4.10 08:42/ Jun
先だって、理事を仰せつかっているNPO法人カタリバの理事会が開催され、各事業部からのご報告を受けました。
まずは、今村さん、岡本さんを筆頭に、カタリバ事業・東北事業、その他経営部門を引っ張っておられるディレクターの方々、見事なフォロワーシップを発揮なさってフロントラインで努力なさっているスタッフの方々に「お疲れさま!」を申し上げたいと思います。
お疲れさまです!
引き続き、どうか「心ゆく」まで動いてください(笑)。
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現在、カタリバは、従来のカタリバ事業(高校生に対して大学生がキャリアを語る場をつくる事業)から、今村さんの力強いリーダーシップで発動した東北でのコラボスクール運営事業(東北被災地に、子どもが放課後過ごすことのできる居場所・学びの場をつくる事業)や、blad事業(文京区の中高生が集える場をつくる事業)など、多方面に、かつ、多角的に事業展開しています。
それ自体は大変素晴らしいことなのですが、そのように事業拡大していくからこそ、今一度、自らが、この社会の中でどのような立場と役割を示していかなければならないのか、折りに触れて、自らも「対話」と「リフレクション」を繰り返していくことが重要であるような気がします。
カタリバが他者に対して「対話」と「サンプリング」と「語り」を促す存在であるからこそ、その「鋭い要求」は「自己」「自分たち」にも向けられるべきです。
もちろん「折りに触れて」でよいのです。カタリバが「アクションオリエンティッドな団体」であるからこそ「折りに触れて」、きっちりと対話と内省を繰り返していくことが大切であるような気がします。このことは理事会で繰り返し、申し上げてきました。
おそらく、そうでなければ、行政と現場のあいだ(スキマ)を埋める「場当たり的な問題解決エンジン」「場当たり的な問題の投げ込み場所(ゴミ箱)」になっていってしまうことを懸念します。その中でルーツを見失い、それでも規模拡大を続けていくことこそが、懸念です。
このように社会の中で重要な位置を占めるようになってきたからこそ、今後カタリバが、この社会が今後どうなっていくのか?という「世界観」と、自らがどのような貢献をなしうるのか(敢えて、この分野には貢献しないのか?)というヴィジョンを決めることが大切であるような気がします。
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個人的な思いを述べると、カタリバが創業した頃と、今では、社会の様相がかなり変わってきています。
当初「キャリア教育」というものがあまり人口に膾炙していなかったときに、いちはやく「高校生のキャリア」という問題に目をつけ、そこに「比較的安価で、良質な対話の機会を創出」してきたことこそ、カタリバのルーツです。まずは、この「ルーツ」を抱きしめた方がよいと思います。
一方、この10年で世の中は大きく変わりました。
最近、とみに僕が感じていることは、「経験格差社会の誕生」ということです。
要するに、
・従来の標準テストで測定しうるような基礎的学力はもはやミニマム化の方向に向かっており、社会的成功をなすためには、さらに上位の指標が意味を成すようになってきている。
・そのひとつに「他人とは異なる差異化の記号となるような経験を成し遂げて」、そこから「どのようなことを学び」、「何を今後していきたいのか」?というストーリーが評価指標として用いられるようになってきている。それらは従来の標準テストで測定されるのではなく、まったく異なる評価手法によって測定されはじめようとしている
・しかし「成長に資する経験」「社会的成功につながる学習経験」の獲得は、生まれた家庭の経済階層・文化的資本に強く影響を受ける。また、そうした経験へのアプローチは、自分がどのような社会集団に所属しているか、ということの影響を強く受ける。このような中で、いわゆる「格差」がさらに拡大していくことが予想される。
・しかし、「生まれながらの差」の根源は、なかなか埋めようがない。ならば、「生まれながらの差」をいかに縮小する政策や施策を社会にどのようにデザインしていくかが求められるようになる
ということです。ブログなんで詳細は差し控えますが、これに類することは、以前にも申し上げたことがございます。
経験獲得競争社会を生きる!? : 資源化・資本化する直接経験!?
http://www.nakahara-lab.net/2013/04/post_1995.html
カタリバは、事業を多角化していく中で、もともとルーツとしてもっていた「対話の経験」をコアにして、さまざまな「問題解決の経験」「創造の経験」「葛藤の経験」を高校生などに提供してきました。
個人的には、このような背景のもとで、カタリバが「経験格差社会」にどのように向き合うかが、問われているような気がしています。まったくの個人的意見ですが。
理事としては変な物言い?ですが、僕はカタリバを応援しています(笑)。
ぜひ、多くのNPOの模範となるような、自らのルーツにねざした、カタリバらしい事業展開を今後も期待しています。
繰り返しになりますが、「心ゆくまで動いて下さい!」
そして人生は続く
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