2015.4.7 06:52/ Jun
先だって某所で、組織内のコミュニケーションについての話をしました。
お題は、
「オフィスで隣に座っているのにもかかわらず、なぜ、人は、メールを用いてコミュニケーションしたがる場合があるのか?」
ということでした。
この問いに対しては、それこそ、いろんな答えがあるんでしょう。「最近の人間関係は希薄だから」とか「最近の若者は、人が面と向かって行う直接対話を避ける傾向がある」とか、さまざまな理由が考えられそうです。
しかし、巷間に流布する「最近の・・・はちょめちょめ論」(!?)に理解を示しつつも、ここでは一定の距離を置き、「物事の合理的理由」に思いを馳せてみましょう。おそらく、それには「仕事上便利な理由」があるのだと思うのです。
おそらく、近いところにいるのにもかかわらず、Orality(口述)を拒否し、メールという書き物(Literacy)に頼りたくなるのは、メールがもつ下記の3つの特徴があるように思います。
1.履歴がのこるから
2.同報できるから
3.あとで検索・検証可能だから
ということの3つの利点です。これはデジタルメディアの利点とも言えるかもしれません。
これら3つの論点を敢えてエイヤッとまとめますと、要するに人々がメールを用いるのは「自己保身」ー「自分の身を守るため」ではないかというのが僕の考えです。
仕事をしていても「自分の身が危ないと感じる職場」ないしは「自分の身を自分で守ることが強制される職場」では、人々はそのような行動をとりやすいのではないか、という仮説が生まれます(笑)。
どういうことかを考えるうえで、参考になるのは、先ほどの「口述」です。これはちょうど、書き物の逆の特徴をもっています。
「口述」に対して、書き物とは、
1.履歴が遺らない=情報がフローしてしまう
2.その場に居合わせる人々に情報拡散範囲が限られる
3.情報がフローしてしまうので、あとで検索・検証できない
ということを特徴ともっています。
要するに、ここまでをまとめると、少し話せば良いことでも、メールに人々がつい用いてしまうのは、
1.あらゆるコミュニケーションに履歴を残し、
2.ステークホルダーにそのメール内容を同報したうえで責任範囲を分散し、
3.あとで何かがあったときには、検証可能にして責任を回避、明瞭にしたい
というメンタリティが存在しているのではないかという、ひとつの「妄想」が生まれます。
先に述べましたように、口述の場合では、「履歴は遺りませんし、その場にいないステークホルダーにはどうしても情報のヌケが生まれ、かつ、情報がフローしてしまいます。
要するに
「言った言わないの水掛け論」
が生まれやすいのです。
少し話せばわかるのに、人々がメールをついつい用いてしまうのは、「言った言わないの水掛け論」を避け、かつ、責任者・関係者に同報しておくことで、何かあったばあいの責任を回避し、かつ、あとで自ら検証可能にしておきたいという気持ちがあるのではないかと推察します。
もちろん、そうしたことを、組織側から要請されている部下の方々も、多々いるんでしょう。組織として、そうしたコミュニケーションをリスクヘッジの手段として採用するということです。
かくして「CC爆弾」とよばれる状況が生まれます。
「CC爆弾」とは筆者が著書「駆け出しマネジャーの成長論」の中で紹介した言葉で、「どんなメールであっても、マネジャーには部下のメールがCCされる状況」を描写する言葉です。それはあたかも「爆弾」のように降り注ぎ、情報洪水をマネジャーにもたらします。嗚呼。
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今日は、少し話せばすぐに用事がすむのに、人が仕事でなぜメールを用いるのかについて考えてみました。もちろん、これはひとつの考え方(妄想)で、これ以外にも様々な可能性があるでしょう。
また、メールは確かに「書き言葉上」様々な責任を回避することができますが、その書き言葉は、それぞれ読む人の自由な「解釈」に開かれています。だから、メールで同報し、責任を一端回避できたからといっても、それが「解釈の余地」に開かれている以上、トラブルは一定の確率で起こります。残念ながら、万能なコミュニケーション手段はありません。
さて、すぐ近くにいる同僚に、今、メールを送ろうとしている皆さん。
皆さんがメールを用いるのはなぜですか?
そして人生は続く
ーーー
追伸.
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