2015.4.6 09:31/ Jun
先だって、あるメディアの取材で、「中高年の人材育成 / 人材マネジメント」についてお話をさせていただきました。
日本の、いわゆる伝統的な大企業では、「若手の育成」もさることながら、「中高年の人材育成 / 人材マネジメント」が、すでに「曲がり角」にきており、「膨らみ続ける人件費」と「先延ばしされる社会保障」のせめぎ合いの中で、こうした層の方々を、どのように処遇していくべきかが、ここ10年で問われることになる、というお話でした。
すでにこの問題に手をうっている先進的な企業からすれば、「何をいまさらジロー的なお話」だとは思いますが、組織を「退出」するのではなく、そこに「滞留」しながら、ポジション/処遇ふくめて「キャリアの下降移動」をしなければならない状況をとらえた研究は、非常に数が限られています。
このような社会動向を受けて、去年から、大学院中原研究室では、大学院生有志とともに、志ある企業の支援を受けて(名前やイニシャルさえここでは挙げることはできませんが、ご担当者のお二人には、心より感謝いたします)、「下山の研究」を開始している、というお話をしました。
研究プロジェクトは、研究室の田中聡さん、保田江美さんが中心になり、新M1の斎藤光弘さん、辻和洋さん、中原で推進しています。まことにおつかれさまです。
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ここでいう、「下山の研究」というのは、もちろん「メタファ」です。
新人をどのように育成していけばいいのか?
どのようにリーダーを育成するのか?
といったような一連の研究を、「経験の浅い人がいかに何かを獲得していき、キャリアを上昇させていくか」という意味で「登山の研究」とするならば、「下山の研究」は、そのピークをすぎた方々が、いかに自分のキャリアを収束させ、生活に困らないポジションと待遇を維持し、安全に下山するか、という研究です。
逆に、そうした「下山」をいかに経営側としては促していけばいいのか、どのような管理行動をとっていけばいいのかが、経営学的な関心事になります。
よく知られているように、山登りで、怪我をするのは「登山」のときではなく「下山」のときが多いものです。
山登りでは、安全に「下山」ができない状況のことを「遭難」といいます。「山登り」で人は「山を登ること」に心をとらわれがちですが、少し引いてみてみれば「遭難」せずに、「下山すること」も非常に大切なことです。
かくして、「いかに下山をなすのか」という研究は、今後、10年ー20年の人材開発研究の裏テーマになっていくのではないかと、僕は思っています。一見、暗い?いぶし銀的なテーマなので、シンポジウムのメインテーマなどにはならないとは思いますが、この問題から目を背けることは、研究者としてはできません。
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インタビューは、編集ご担当者の方々と時折議論をまじえながら、和やかに進みましたが、その中のひとりのTさんが、この問題に際して、ひとつ興味深い事例を示してくれました。
ある企業では、「名ばかりの管理職である部長職」が増え、対して、若い「実務担当者」が少なくなり、職場が「部長だらけ」になってしまった。その状況は、いわば「部長部」をつくってしまえると揶揄されるくらいになっているのだいいます。
いっそ、本当に「新部署」として「部長部」を作ってしまえばいいのに、というお話でした。
これに関して、先だって、某所でお会いした、ある人事パーソンから、僕は、こんなお話も聞きました。
「うちの会社の従業員の平均年齢は40歳。おそらく40歳くらいでは部下はいません。職場全体の6割は管理職で、4割が実務担当者なんです。うちの会社は変わっていますかね?」
平均年齢が上がることは、決して悪いことではないですし、両社ともに業績は悪くないと伺っているので問題はないのでしょうが、このような状況が、今後、好況/不況時のウェーブの中で、長く安定的に続くとは、僕には、あまり思えません。
そのとき、経営として手をうつならば、どういう打ち手がありうるのか。そうしたとき、職場のマネジャーとしてはいかなる管理行動をとっていけばいいのか。
今後は、大学院生の方々、ご協力いただいている企業のご担当者の方々とともに、データに基づいた実証的な探求を続けていきたいと感じています。
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週の最初のブログ記事から、なぜか今週は「渋いテーマ」になりました(笑)
僕自身は今年40歳。まだ自分のキャリア的には、「下山」にさしかかっているとは思えません。
しかし、俗に「40歳は人生の正午」ともいいますし、もし「下山のこと」を考えるのであれば、本当に「キャリアのピーク」にさしかかる「前」だよな、とも思います。
その意味では、「下山の研究」は、僕自身の近い将来の課題にもなりえるのかな、とも思っています。
そして人生は続く。
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