2015.1.28 06:55/ Jun
「経験10年未満のメンバーが56%を超える専門職組織」で、誰もが通ったことのある「身近な組織」といったらなんでしょう?
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答えは「学校」です。それも一部の都市部の小中学校。
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昨日は、いわゆる「Y校」で、年に一度恒例の風物誌的イベント?に登壇させていただきました。
「Y校」とは横浜商業高校のこと(先日、この高校をY校とよぶことを知りました!)。風物誌的イベントとは、横浜全市の10年次の先生方と、副校長先生ら、約1000人が一同に会して行われる「人材育成フォーラム」です。
年に一度の「人材育成フォーラム」は、「調査と研修をつなげることをめざした我々の研究活動」の重要な機会です。
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この経緯は少し長くなります。
僕は「学校教育現場の研究」は、今は全く行っていないのですが、4年前ちょっとした縁がきっかけで、横浜市教育委員会さまの教員育成プロジェクトにかかわらせていただくことになりました。先ほど述べましたように、一部の都市部のしかも小中学校は、団塊世代の退職+中堅教員の少なさにより、経験の浅い教員が、学校全体の50%を上回るような状況がここ数年続いています。
少ない中堅・ベテラン教員で、いかに経験の浅い教員を支えていくか。
今から5年前ほど前、このことに関心をお持ちになり、拙著「職場学習論」をお読み頂いた横浜市教育委員会の前田崇司さん(横浜市教育委員会事務局・北部学校教育事務所 指導主事室)が、研究室を訪れ、プロジェクトがスタートすることになりました。
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プロジェクトは2段構えです。
まず第一に、横浜市教育委員会の先生方、そして研究室の脇本さん(元・東大・特任助教)、教育学研究科・勝野先生の研究室の町支さんらと一緒に、
1.1年次、2年次、3年次、5年次、10年次の横浜市の先生方に対する質問紙調査
2.人材育成に熱心ないくつかの学校への訪問調査
をさせていただきました。
そのうえで、ここで出てきた数々のデータ、知見、事例をすべてミックスして、研修に仕立て上げ、同市の研修内容の一部(主に10年次研修の一部3時間)を僕たちで担わせて頂くことになりました。
研修内容は、
ミドル教員として、経験のあさい教員を支える学校づくりに、どのような貢献をしていただけるか?
を考えていただくことですね。
研修は「講義式」「座学」を極力廃し、「対話型」にしました。数字やデータは「対話のきっかけ」となるように提供させて頂きました。
勘の良い方ならおわかりですが、これは企業・組織開発でいわれるところの、いわゆる「サーベイフィードバック」の考え方の一部を、教員研修に導入させていただいたことになります。
このブログでは、これまでにも何回か、同市の教員研修の話題を書かせて頂いたことがあります。
数字を「お返し」し、物語を「紡ぐ」10年経験者研修
https://www.nakahara-lab.net/blog/2014/07/1011410_123510n500100010_10_10.html
「他人の育成」を手がけることで「自分の能力」を伸ばすこと
http://www.nakahara-lab.net/2014/01/post_2165.html
メンバーの町支君もブログを書いているようなので、ここで紹介いたします。
教育委員会という「現場」:メンターチームプロジェクトから
http://ow.ly/I364h
ここで最大のポイントは、ここでお返しする調査のデータが、他ならぬ、自分たちの学校の、自分たちの若手の先生方、ないしは、「自分たちのデータである」ということです。
どこかの市に住む誰かが答えたものではない、まして、お役所が提供したデータではない。自分たちのデータだからこそ、当事者意識が生まれ、また自分の学校の様子を考えることができます。
こうしたサーベイフィードバックは、これまでいくつかの企業研究で、僕は行ったことがありました。が、教員ではやったことがなかったので、試みてみることにしました。
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夏の10年次研修では、サーベイをフィードバックしつつ、自分たちの学校の様子を振り返り、今後半年間に、ミドルリーダーとして学校づくりにどのような貢献をするかを決めます。
先日、Y校で行われた「人材育成フォーラム」は、その発表の場であり、選抜された小学校・中学校・高校の先生が、それぞれの学校づくりの様子を1000人の方々に向けてお話しをしていただきました。
ご発表いただく先生方には、プレゼンテーションをTED風にしていただくことをお願いしました(笑)。なぜTEDか?は、確たる理由も根拠もないのですが、何事も、遊び心です。やったことがないことにチャレンジしていただくのがよいでしょう?
ここに10年次の先生だけでなく、管理職の先生にもご参加頂いているのは、ミドルリーダーが動くための環境を、管理職の先生にも作って頂きたいと教委の方が考えているためだと思っています。
人材育成フォーラムにかかわらせていただくのは、僕は、今年で4年目ですが、年々、先生方のご発表は、洗練されていっているように感じます。ご参加頂いた先生方、心より感謝いたします。
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今日の話は、横浜市の話でしたが、
若手教員の大量採用+支える中堅・ベテラン教員の減少
は、これから地方中核都市にどんどんと「進行」することがわかっています。これまでは、大都市圏の限られた場所、「課題先進地」での問題であったものが、日本全国の問題になっていくのです。
今後、僕自身は、教員研究を行っていくことはないですが、次世代の研究者である脇本さんや町支さんが、この問題を扱っていくそうです。春には、彼らが編著者(僕は監修のみ引き受けました)となった専門書も、北大路書房様から出版されます。編集者の奥野さんとのお仕事です。
もちろん、企業と学校は「全く違う組織」であり、それを一緒くたにすると「暴挙」はできません。これは学校の内側も、外側の世界をも、垣間見たことのある自分だからこそ、絶対にそう思います。しかし、企業研究で培われた、「研究の方法論」は、時に学校研究にも役立てることができるのではないかと感じています。役立てる、と言えなくても、ヒントにすることはできるのではないでしょうか?
教員研究を行っていく若い世代が、ぜひ、多くのチャレンジをしてくれることを願っています。最後になりますが、このフォーラムでは、横浜市教育委員会の田中磨理子さん、安冨江理さんに大変お世話になりました。心より感謝いたします。ありがとうございました。
そして人生は続く
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