NAKAHARA-LAB.net

2015.1.27 09:39/ Jun

「盛り上がったけど思考停止しているワークショップ」と「沈黙しているけどダバダーと深く学んでいるワークショップ」!?

 研修やワークショップなどを実施した際、その様子を「語りうる言葉」の問題について、ちょっと前になりますが、ある方と議論になりました。たしか、研修の効果測定での議論だったように記憶しています。こんなしょーもないことに対して、ぐだぐだと議論しているのは、僕のまわりくらいだけかもしれませんが(笑)、別に暇人なわけではありません。いたって真面目なのでございます(笑)。
  ▼
 研修やワークショップなどを実施したあとで、その様子を語りうる場合、もっともよく用いられる言葉というのは、
「めちゃめちゃ、盛り上がりましたよ」
「いまいち、盛り上がりにかけましたね」
 というものですね(笑)。いわゆる、ひとつの「盛り上がり度」です(笑)。
 人は何を見て、その研修やらワークショップやらを「盛り上がっている」と意味づけるのか、というRQ(リサーチクエスチョン)も、これまた味わい深いのですが、今は、それについては触れないようにしましょう。
  ▼
 もっとも興味深いのは、「盛り上がっている」という研修・ワークショップ状況の記述は、研修やワークショップの「プロセスを語る言葉」であって、「成果を保障していないという事実です。仮に、それらの成果を、受講生が「考えること」「行動を変えること」におくならば。
 たとえば、
「わーわーと盛り上がったけど、誰一人、問題については、まともに考えちゃいない」
 とか
「めちゃめちゃ盛り上がったけれど、ひとっこ一人、行動をかえていない場」
 というのは存在しうるということになります。
 反対に
「みな沈黙しているのに、しかしそれでいて個人の頭の中は、まったりとディープラーニングしている、ダバダーなワークショップ」
 とか(意味不明)
「盛り上がりは今ひとつかけるが、そこに参加している個人が、考え込み、行動を変えるきっかけになる場」
 いうのも存在するかもしれません。
 つまり、「ものを考える」「行動を変える」という軸は、「盛り上がる」という軸とは直交し、様々な可能性の象限をつくりうるということになります。
「盛り上がっているけど、成果はシオシオのパー」とか「盛り上がっていないけど、渋く成果を生み出している場」というのは存在し得ます。
 しかし、ややこしいのは、「盛り上がっている」というものが、もし学習者同士の相互作用の頻度であるならば、それは、第三者が外的に観察可能ですが、後者の「考えている」とか「行動を変える」というものは、その時点で外的に観察可能なことではありません。それは「個人の内部にある潜在的な要因」であるか、「未来にひらかれている要因」ですので、その時点での研修を語りうる言葉としては、やや不足があります。まぁ、帯に短し、たすきに流し、という状況なのかもしれませんね。
 ▼
 今日は「研修・ワークショップが盛り上がること」ついて書きました。もちろん「えぐるように盛り下がる」よりは「そこそこ盛り上がった」方がいいような気もしますけれども。
 そして人生は続く
 

ブログ一覧に戻る

最新の記事

大学新卒の初任給30万円で浮かれている先に広がる未来!? : 30代ー40代で自分を見失わないために!?

2025.3.7 08:23/ Jun

大学新卒の初任給30万円で浮かれている先に広がる未来!? : 30代ー40代で自分を見失わないために!?

「一枚岩」と「全員野球」は「イリュージョン(幻想)」である!?:組織を語る言葉の貧困さ!?

2025.3.6 08:21/ Jun

「一枚岩」と「全員野球」は「イリュージョン(幻想)」である!?:組織を語る言葉の貧困さ!?

こんな時代に「ダイバーシティ・インクルージョン」を推進していることにモヤモヤを抱えている皆さまへ!

2025.2.27 17:46/ Jun

こんな時代に「ダイバーシティ・インクルージョン」を推進していることにモヤモヤを抱えている皆さまへ!

大学生は「前のめり」に、「コスパよく全部やりたい」けど、「十把一絡げ」では語れない!?笑

2025.2.26 08:57/ Jun

大学生は「前のめり」に、「コスパよく全部やりたい」けど、「十把一絡げ」では語れない!?笑

イケてるHRBP(事業に貢献する人事)、どこかにいませんか?

2025.2.20 08:53/ Jun

イケてるHRBP(事業に貢献する人事)、どこかにいませんか?