2015.1.8 06:43/ Jun
新年を迎え、大学院・中原ゼミもはじまりました。昨日は、研究室の伊勢坊綾さん(D1)の英語文献発表でした。内容は、リーダーシップ研究の専門雑誌「The leadership quarterly」の論文で、フォロワーシップに関する質的方法論を一部用いた実証論文でした。
Melissa K. Carsten , Mary Uhl-Bien , Bradley J. West , Jaime L. Patera , Rob McGregor (2010) “Exploring social constructions of followership: A qualitative study.” The leadership quarterly 21(3), 543-563
よく知られているように、1990年代は、リーダーシップ研究にとって大きな転換点を迎えた時代でした。リーダーシップを考える際に、「リーダーの行動や認知の側」からアプローチするのではなく、いわゆる「フォロワーの視点」から考察していこうという研究が、この時代に増えていくことになります。
リーダーシップという「現象」を「フォロワーの認知や行動によって社会的に構成されたものである」と見なす研究群の増加です。もっとも知られているのは、Meindl et al (1985)、Meindl(1995)らの研究でしょう。
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昨日の英語論文、Carsten et al(2010) は、「フォロワーシップ」という構成概念に対して、一般人が、どのようなスキーマ(イメージ)をもっているかに関する質的な実証論文論文でした。
要するに、
フォロワーと聞いて、
あんたは、
どういう人物像や役割を、
頭に思い浮かべるかね?
ということを探究したということですね。
この論文では、31名の参加者から取得した質的データをコーディングして分類した結果、フォロワーのイメージには3つの種類があることがわかりました。1)パッシブフォロワー、2)アクティブフォロワー、3)プロアクティブフォロワーの3つです。
1.パッシブフォロワー(Passive Follower):
消極的に服従をする人のようなイメージ
命令をうけて従う人のようなイメージ
39%、12名がこのようなフォロワー像をもっています
2.アクティブフォロワー(Active follower)
リーダーに意見を求められたときに意見をするような人
32%がこのようなフォロワーイメージをもっている
3.プロアクティブフォロワー(Proactive follower)
リーダーにもフィードバックやアドバイスを提供する人
リーダーの意志決定に積極的に関与し
リーダーの認知や行動を変えていける人
29%の人が、このようなフォロワーイメージをもっている
要するに、島倉千代子さん的に?ワンワードでいうと
人生いろいろ、フォロワーいろいろ
ということです(笑)
「よきフォロワーになれ!」といっても、そこで果たすべき役割や行動は、人によって喚起されるイメージが全く違うということですね。人によっては、「命令聞けばいいんでしょ」ということを強く思っている。人によっては「リーダーの意志決定にかみこんでいこう」と思っている。皆さんは、フォロワーシップに対して、ご自身でどのようなイメージをお持ちですか?
あなたは
パッシブ派?
アクティブ派?
それとも
プロアクティブ派?
ちなみに、これらのイメージは、組織レベルや産業構造などの、いわゆるコントロール要因には、影響を受けないことがわかっています。
どこの組織にも、おおよそ、3割ずつ、異なったフォロワーイメージをもっている人がいるということになりますね。ということは、目線あわせが必要だと言うことですね。興味深いですね。
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今回ご紹介した研究は、フォロワーの側にたつ人が、フォロワーという構成概念に対して、どのようなイメージをもっているかでした。
これまでは、リーダーの側が、フォロワーに対してどのようなイメージをもっているか、という研究はあったかと思うのですが(Sy 2010などでしょうか)、そこに新たなアプローチをしたことがオリジナリティなのかと思います。
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ちなみに、次週のゼミは、なんと、僕が研究発表をしなければならないとのことで、ここ1年くらい、今日の論文に関連して、個人で温めていた研究発表をしようと思っています。
その研究というものが
マネジャーの方々が
リーダーシップやマネジメントという行為に対して
もっている信念(ビリーフシステム)
を明らかにしようとする探索的研究
です。
要するに
マネジャーの方々が「リーダーシップ」やら「組織」に対してもっている「深い思い込み」と「リーダーシップ行動」に関係を実証的にさぐりたい
というのが研究の骨子です。この研究では、リーダーシップが何か? マネジメントが何か?を研究側から提示して明らかにするのではなく、実際に現場にいるマネジャーの方々が、それに関連してどのようなビリーフをもっているかを明らかにしようとしています。たまたま今日の研究に少し似ているなと思いました。
ここ数年、マネジャー研修やら、リーダーシップ研修を担当するようになり、いつも思っていることのひとつに、マネジャーの方々には、自分の経験によって形成された、様々な「深い思い込み」があることがわかってきました。
この研究では、どういう「思い込み」をもっている人が、どのようなリーダーを行動をとり、どのような成果を残そうとしているのかを探究しようと思っています。
これまでシコシコと暇を見つけては、論文をあさっていました。ひとりで追っかけている研究のため、なかなか進まないのですが、ようやく調査開始寸前の所まできたので、これを報告しようと思っています。
この詳細については、またお話ししますが、今週、皆さんで読んだフォロワーのイメージ研究に似たところがあったので、大変助かりました。発表をしてくださった伊勢坊さんに心より感謝いたします。
(中原ゼミでは、いつのまにか!、指導教員も個人の研究発表をしなくてはならなくなっています! いつも偉そうに指導している、そういうオマエは研究しているのか?と大学院生が投げてくれている温かくも厳しいメッセージなのかなと思っていますし、実際、指導教員も研究報告をしなければならないので、個人の研究を前にすすめなくてはならず、よい機会なのかなと思っています)
あっ、そろそろ、TAKUZOとKENZOを起こさなきゃ。
そして人生は続く
追伸.
組織科学の最新号第48巻2号の特集が「現場の学習」で、僕もひとつ論文を書いています。年末発刊されました。
「職場における学習」の探究という論文で、近年の職場の人材開発研究の知見をまとめたものです。もしよろしければ、ご笑覧ください。
中原淳(2014)「職場における学習」の探究. 組織科学. Vol.48 No.2 pp28-37
なお、編集者の松尾睦先生(北海道大学)・松本雄一先生(関西学院大学)には大変お世話になりました。この場を借りて御礼申し上げます。ありがとうございました。
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