2014.9.10 06:00/ Jun
人は新たな組織に参入しようとするとき、多かれ少なかれ、「違和感」を感じたり、「心理的葛藤」を持ったりすることは、よく知られている事実です。この問題に関しては、拙著「経営学習論」でも論じたことがあります。
今、中原研有志の大学院学生とやっている調査では(No2トランジション調査)、外部からのニューカマーの「組織参入時のネガティブな感情」を測定していますが、いかなる「参入者の社会的属性」と「ネガティブな感情の多寡」を掛け合わせてみても、その「差」に統計的有意な差はありません。
要するに、
男であろうが、女であろうが、業種がどうであろうが、職種がどうであろうが、外部から組織に参入したときには、どんな人であろうと「おや、変だな」「なんじゃ、こりゃ、どうなっとるんだ、この組織は?」と感じる瞬間がある
ということです。
ま、そうだよね(笑)。寸分違わず、イメージどおりってのも、なかなか想定できない。行きすぎた場合によっては「この組織、入る前とイメージ違うな」とか「こんなはずじゃなかった」と感じるのかもしれませんね。
しかし、同時に興味深く面白いのは(勝手に僕が面白がっているだけでしょうか!?)、「組織参入時の違和感」が持続するか、というと必ずしも「そうではない」ということです。
このことに関して、先だって、僕の授業を受講していた、あるビジネスパーソンの方が、こんなことをおっしゃっていました。
「わたしは転職経験が何度もあるのですが、転職したときに感じる違和感を、忘れないように、ノートにメモしておくのです。でも、しばらくしてそのノートを見直してみると、そこに表現されている違和感が、今の自分にはなくなっていることに気がつきます。かつて違和感を感じていた自分が、不思議に感じるくらい。人が組織に染まり、違和感を感じなくなるまでにはそう時間はかかりません。ものすごいスピードで、人は組織に染まっていきます」
ICレコーダをもっていただけではないので一字一句同じというわけではないですが、こあるビジネスパーソンが語られた、この事実は非常に興味深いものでした。
組織参入当初、どんなに強烈であった「違和感」でも、その組織に長く所属していれば、消失していく。言葉をかえれば、
「時間」は「違和感」を「あたりまえ」に転化する
すなわち、組織が人を染め、人が組織に自ら染まっていくプロセスというものは、まことに強靱であるということの証左でしょう。
それにしても、興味深いのは、中途採用を多数経験なさった方のおつくりになった「違和感ノート」です。それ自体が、研究対象になるくらい、興味深いもののように感じ、面白がっているのは、僕だけでしょうか。
たとえば、これから中途採用者を大量に受け入れる組織が、何らかのかたちで、そこで感じた違和感をノートに書き付けてもらうと、その「組織の有する組織文化の特殊性」が見えてくるのかもしれません。場合によっては、そうした違和感を「組織変革」といったらおおげさだけど、「組織の特殊性」を是正するリソースとして参考にすることもできるかもしれない。
また、どのような違和感を感じた人が、組織参入後、どのように変わっていくかを、トラックして縦断調査すれば、それはそれでまた面白い結果がでるのかもしれません。
このように小生の「白昼夢」は今日も続きます。
あなたが、ある組織に入ったとき、感じた違和感は何ですか?
それは、いつ頃、消え去りましたか?
そして、今、あなた自身は「かつてのあなたが感じた違和感」を「再生産する主体」に変わり果ててはいませんか?
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そして人生は続く
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