2014.4.21 07:00/ Jun
ついに2014年上半期三部作のトリを飾る本(新書)が、5月9日、中公新書ラクレから刊行されます。名づけて「駆け出し本」(笑)。2月の「研修本(けんしゅうぼん:研修開発入門)」発売、3月の「芝生本(しばふぼん:活躍する組織人の探究)」刊行に続く、第三作目です。こちらは一般書となります。
「駆け出し本」の正式名称は、
「駆け出しマネジャーの成長論:7つの挑戦課題を科学する」(中公新書ラクレ)
です。300ページ程度、950円の新書として、もう既に予約販売がはじまっているようです。AMAZONでは書名が「駆け出しマネジャーの成長戦略」になっていますが、正式書名は「成長論」になりました。訂正がじきに反映されることになると思われます。
この書籍でフィーチャーしているのは「新任マネジャー」あるいは「駆け出しのマネジャー」です。ぜひ、現場のマネジャー、現場の経営者の方々にお読み頂きければと思っています。
本書で僕が探究しているのは、
「実務担当者から、いかに生まれ変わり、マネジャーとして働き始め、成果をあげられるようになっていくのか」
ということであり、
「マネジャーになるプロセスにおいて直面する7つの挑戦課題をいかに乗り切るか」
についてです。
より、具体的には、
マネジャーとは何か?
マネジャーになった日、どういうことが起こるのか?
マネジャーとして
いかに部下育成を行うか?
いかに政治交渉を進めるか?
目標をいかに咀嚼させ、納得解を得るか?
年上の部下など多様な人材をいかに活用するか?
いかに迅速で間違いない意思決定を行うか?
いかに心折れないようにマインドを維持するか?
プレーヤーとマネジメントのバランスをいかにとるか?
そして、会社・人事・経営者には
マネジメント支援として何が可能か?
を探究しています。
巻末には、現場のマネジャーの方の「覆面座談会」も収録されており(お忙しいところ御協力いただきました!感謝!)、こちらでは、「マネジャーとして働くことの勇気」をもらえると思います。
なお、これらの文章をしたためるにあたり本書のデータとしているのは、3年前から構想していた日本生産性本部さんとの共同研究「マネジメントディスカバリー開発プロジェクト」で得たマネジャーさんたちへの質問紙調査、そして、ここ数年、様々な企業の方々に御協力いただき、お話を伺ってきたマネジャーたちへのヒアリングデータです(御協力いただきました方々、心より感謝です!)。
本書はこれらの定量・定性データをもとに、それらを縦横無尽に積み重ね、マネジャーへのトランジション(移行)のプロセスを扱っている本です。
マネジメントディスカバリー(マネジャー向けフォローアップ研修:中原のテキスト・ワークショップレシピで実施されています)
https://jpc-management.jp/md/
▼
考えてみれば、世の中には、すでに「マネジャー論」とよばれる本が、数多く出版されています。それにもかかわらず、僕が敢えて、今「マネジャー」について語るべき理由とは何か?
これまでの書籍と本書の違いを敢えて述べるとすると、下記のようになるかと思います。
1.本書で取り扱う「マネジャー」のレベルを「駆け出し時期(エントリーレベル)」にキュウキュウに絞ることで、「駆け出し時期のリアルな体験」を描き出そうとすること
2.これまでの「マネジャーの学習・キャリア研究」の知見を活かし、テクストにネリネリと編み込んでいること
3.多くの先輩マネジャーの「アクチュアルな語り」を徹底的に採集し、マネジャーになることによって生じる挑戦課題を描き出していること
マネジャー論というと、とかく「〜しなさい!」とか「〜すべし」という「規範論」が多いのですが、本書はその立場をとりません。
むしろ「マネジャーになることのリアル」に徹底的に寄り添い、
「マネジャーになるときに生じる困難は、程度の差こそあれば、みんな経験することなんだよ」
「大丈夫だよ、今、変化が起こっているのは、あなたの会社や職場だけじゃないんだよ」
「ひとつひとつ挑戦課題に向き合い、振り返り、アクションしていけば、大丈夫だよ」
というメッセージをお伝えしたいと思っています。
その上で、本書のキーになるのは、マネジャーの成長モデル「マネジメントのラーニングスパイラルモデル」です。
本書では、この「うにょうにょモデル!?」を「なんちゃってフレームワーク」として、
これからマネジャーになる方々が、これからどのようなことが起こるを前もって知ること(リアリティプレビュー・アクセプト)
そして
マネジャーの方々が、自分の職場や部下や上司の状況を振り返り、次のアクションをとること(リフレクション・アクション)
を支援し、そのための素材を提供することを目的にしています。本書を書くにあたり、僕は、マネジャーに「共感」をもってもらえる本を書きたく思いました。できるかぎり、図版等も多くしているつもりです。また専門の方にもお読み頂けるよう、脚注も充実させたつもりです。どうぞご笑覧ください。
▼
本書は「泥臭い本」だと思いますが、ぜひお楽しみにいただければ幸いです。
最後に、以下、「目次」と「後書き」を掲載します。
<目次>
・プロローグ 駆け出しマネジャーの皆さんへ
・第1章 マネジャーとは何か?
・第2章 プレイヤーからの移行期を襲う5つの環境変化
・第3章 マネジャーになった日
揺れる感情とつきあう、7つの挑戦課題
・第4章 成果を上げるために、何を為すべきか?
振り返りとアクションをめざして
・第5章 マネジャーの躍進のため
会社・人事・経営者には何ができるか?
・第6章 生の声で語られる「マネジャーの現実」
・エピローグ 希望のあるマネジャー
<後書き>
新任マネジャー、駆け出しマネジャーが、マネジャーになったときに、どのような挑戦課題に直面し、どのように対処しうるのか。
本書では、この問いに答えるために、様々な定量・定性データを駆使しながら、お話をしてきました。本書を書き上げた今、あらためて振り返ってみますと、わかっている人や、マネジメントを既に経験したことのある人からみれば、「凡庸にしか感じられぬこと」を書いてしまったな、と思います。しかし、一方で、現在、奮闘している新任マネジャーや駆け出しマネジャーが「凡庸にしか感じられぬこと」を本当に伝えられているのか、理解している時間があるか、というと、それもまた、いささか心許ない気もします。
マネジャーの辞令をもらって、組織の狭間の中で、さまざまなものに揉まれ、日々奮闘している彼 / 彼女らの時間と精神的余裕には限りがあります。このたびインタビューに答えてくれたマネジャーの一人が思わず口にしたひと言が、今なお、僕の心に残っています。
(一般に)マネジャーになることは、あとは飛び込んで泳げと言われているような感じ。
本書で、僕は「実務担当者からマネジャーになるプロセス」にまつわる様々な知見やデータを整理し「マネジャーの方々」に「お届けすること」に徹しました。もし、彼 / 彼女らが「泳ぐこと」を一寸だけ暇を見出し、ほんのつかの間に、本書を手に取り、自分の職場・部下・立場などを振り返り、次のアクションを決めるときに役立ててもらえたのだとしたら、筆者として、望外の幸せです。
マネジャーになって直面する挑戦課題は、決して「ひとりの課題」ではなく、「みんなの課題」です。時に悩んだり、つまづくこともあるのは、決して、あなただけではありません。そのような課題に直面したとしても、うろたえず、現状を振り返り、原理・原則に配慮しつつ、次のアクションを決めていく。そのことから逃げないでいれば、きっと事態はポジティブな方向に向かうのではないかと信じています。
また、5章で論じたように、人事部・経営者の方々が本書を手にとり、自社のマネジャー育成のあり方、自社の人材開発施策の改善に役立てていただけたとしたら、これもまた嬉しいことです。2章で再三にわたって指摘しましたように、現在、マネジャーの育成をめぐる環境は、だんだん激化しています。彼 / 彼女らを昇進させ、経営のフロントラインに立たせるのであれば、それに適切な支援が提供されるべきだと僕は思います。人事の観点ならば、マネジャー育成をきっかけに人材開発のあり方そのものを見直すこと、また経営者の観点ならば、「自らが学ぶ存在になること」こそが、もっとも重要なことではないか、と思います。
最後になりますが、本書は長期にわたる構想・執筆期間をへてゴールすることができました。編集・構成等で伴走いただいた中公新書ラクレの黒田剛史さん、秋山基さんに、まずは心より感謝いたします。本当にありがとうございました。また、マネジメントに関する調査・研究開発でご一緒した公益財団法人・日本生産性本部のみなさま、野沢清さん、木下耕二さん、矢吹恒夫さん、大西孝治さん、塚田涼子さん、中村美紀さん、古田憲充さん、桶川啓二さんにも心より感謝いたします。
また、こちらでお名前を掲載させていただくことはできないものの、インタビューをご快諾いただいた各社の現場マネジャーの方々にも、貴重な時間をたまわり、心より感謝いたします。そして、最後に妻・美和にも感謝いたします。この本の執筆のあいだ、美和は、僕にたくさんの時間と励ましをくれました。みなさま、本当にありがとうございました。
思い起こせば、2013年元旦。今から1年以上前、新年の計を決めるにあたり、僕は、今年は「アクチュアリティのある研究」がしたい、とブログで表明しました。
「アクチュアル」の名詞「アクチュアリティ」はラテン語の「Actio(アクチオー)」に起源をもつ言葉で、「現在進行している現実」を意味します。よって、先に自身が目標に掲げた「アクチュアリティのある研究」とは「今まさに、多くの方々が格闘している問題」と取り組む研究ということであり、また、「みんなが今悩んでいること」を、アカデミックな切り口で、なるべくわかりやすく、平易に、分析し、語ることに他なりません。「人生の正午」と形容される40歳を目前に、最近、僕は「地に足のついたアクチュアルな研究」がしたくなってきました。本書が、この一年の計の達成に寄与できたかどうかは読者の判断にお任せしますが、今は、走りきった気分で一杯です。
この国に、希望をもったマネジャーが
これまで以上に生まれることを願います。
我らが時代!
夜明け前、本郷の研究室にて
中原 淳
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そして人生は続く
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追伸.
こんなに集中的に本をだす計画はなかったのですが、いつのまにか、あちらが遅れ、またこちらも遅れ、それにつられて、モジモジ?している間に、集中的な発売になってしまいました(泣)。
執筆のプロセスでは、本当に極限まで体力、心理的状態含め、追いこまれました。でも、書き終えた今は、ホッとしています。ご迷惑をおかけした出版者の方々には、心よりお詫びいたします。
(2014年の今後は、書籍から少し離れ、学術論文執筆に邁進したいと思います。夏頃に1本、秋に1本書く予定です!)
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