2014.4.11 06:31/ Jun
1990年代ー2000年代の人材開発研究の最大の変化のひとつは、僕は「職場の再発見」であったと思っています。
多くの人々にとって「職場」は最も長い時間を過ごし、人材開発、人材育成の中核になるにもかかわらず、「職場では、どのようなインタラクションがあるのか」、そして、それが「職場要因が、人材開発にとってどのような影響をもたらすのか」について分析や考察が、あまり進んでいませんでした。
実務家からすれば、
「おい、職場を見落とすんじゃねーよ、そんなもん、アタリマエダのクラッカーじゃねーか」
という感じだと思いますが、誠に残念ですが、それはそうなのです(笑)。それまでは、むしろ「制度や異動が、人材を育てる(=どんな制度を育てれば、経営指標にどんなメリットが生まれるんのよ)」というかたちの研究パラダイムが支配的でしたが(この場合、職場はブラックボックスになります)、それに、見直しがかかりつつあり、職場要因を考慮にいれた研究が増えたり、職場内部に分析のメスがはいっているのが、昨今だと思います。このことは、著書「経営学習論」に詳細を書きましたので、詳細は、そちらをご覧下さい。
▼
ところで、職場の人材開発研究というと、昨今では「上司による育成研究」「同僚による育成研究(Co-worker研究と呼ばれてますね)」も盛んになりつつありますが(大学院の授業では、こちらも読んでいきます)、こうしたいわゆる「OJT系・人系の育成」のみならず、「研修」に関する研究もありますね。「研修効果と、研修参加者の所属する職場要因(Work-environment factor)の関係」をさぐる研究です。
その要旨を、ワンセンテンスで述べるならば
「研修で学んだことが実践され成果をだせるかどうかは、研修そのもののクオリティもあるけど、職場で、どんな上司や同僚に囲まれてるか、大きいもんねー」
ということです。これを、プチ難しく言うと、「研修転移の予測要因のひとつに職場内の上司・同僚からの支援がある」ということになります。あんま、変わんないか(笑)。
▼
たとえば、わかりやすい研究事例をあげてみましょう。
下記はクロムウェルさんとコルブさん(2004)の行った研究結果の一部、僕がグラフにしたものです(Cromwell and Kolb 2004 p462 Table2 in Human Resource Development Quaterly)。
このグラフの縦軸は「研修で学んだ知識やスキルがどの程度現場に反映されているか」という程度です(主観的評定値)。そして横軸は「職場において、上司や同僚からのサポートがどの程度存在するか」というものですね。一目瞭然で、「上司や同僚からのサポートが低い方が、研修で学んだことが実践されにくいこと」がわかりますね。中程度以上あればあんまし問題はないけど、「上司や同僚からのサポートが低すぎる職場」では、研修をやっても実践されない。この研究には、さらに解釈が必要な部分、目配りが必要な部分があるとは思いますが(コントロールどうしてんだ?とか、スキルの質とか)、そこまでは大学院の授業ではないので、つっこみません、ブログなんで(笑)。
ANOVA, Supervisor : F=.979 p<.01, Peer : F=8.16 p<.01 : significant difference between low and moderate, No significant difference between Moderate and high.
分析結果には、まぁ、首肯できる部分も多いのではないでしょうか。まぁ、そうだよね、感覚的にも。せっかくどんなに研修でいいこと学んだでも、上司も同僚もヤバくって「ペンペン草もはえないような職場」だったら、やる気も失せるわな、泣。実際、やる気があっても、機会も支援も与えられないでしょうし。
▼
今日は、ちょっくら、まじめに「職場のお話」をしました。
ワンセンテンスで述べるならば、「ペンペン草もはえないような職場は、やっぱし、マズイってこと」です。
おい、それで終わりかよ。
そして人生は続く
最新の記事
2024.11.29 08:36/ Jun
2024.11.26 10:22/ Jun
2024.11.25 08:40/ Jun
あなたの組織は「社員の主体性を喪失させる仕組み」が満載になっていませんか?:うちの社員には「主体性」がないと嘆く前にチェックしておきたいこと!?
2024.11.22 08:33/ Jun