2006.1.21 13:12/ Jun
今週は本当に忙しい週でした。
MITからセンベンさんがきていましたし、いろいろなプロジェクトが年度末を迎えて佳境にはいっているのですね。論文もいくつか抱えているし、査読も、統計分析も。この状況、方言で言うなら「もうワヤだ、ワヤ」ということになるのかもしれません。
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センベンさんの話、とてもオモシロかったです。僕は何度も彼の話は聞いているのですが、毎回、何らかの発見がある。
今回、彼の話で一番印象的だった一言は、
Traditional class is gone!
We are doing it in TEAL format!
というものです。
何を言っているかっていうと、TEALは革新的な協調学習のクラスルームなのですが、すべての学生がこの形式で初等物理の授業を受けているわけではなかったのですね。僕が留学したときは、たしか2分の1くらいだったような気がします。
TEALは、そこで教える教員に教授法の転換も強いるのです。だから、ファカルティからたくさんの抵抗もあったし、なかなか前に進まない時期もあった。
TEALをはじめて1年目は失敗。全く有意差がでなかった。2年目から3年目は成功した。だけれども、「普及(dissemination)フェーズ」にはいると、新規で今までやってこなかった先生がはいっている。それで、また失敗した。
TEALといえども、成功するまでには5年近くの年月がかかっているのです。その数々の失敗をへて、「Traditional class is gone!」と言えるまでになる。すべてのMITの1年生が、TEALの形式で、授業を受けるようになった、ということです。
ここで我々が学ばなければならないことは2点あるように思います。
1.継続的に評価を行うことが重要であること
2.教育には長い時間がかかること
どちらも常識です。教育学の常識であり、教育工学の常識。でも、言うは簡単だけど、その意味は深い。
特に1に関しては、シンポジウムで登壇した際にも、話をしました。
革新的な教材や教育環境を僕らがつくるとする。で、そこで生まれた学習がとてもステキなものであったとする。
でも、それを持続していくためには、どうしても組織的に動かなければならないし、様々なステークホルダーを説得しなければならない。そのときに一番必要なのは、あなたのステークホルダーが、一目見てわかる説得材料なのです。
ここで重要なのは、ステークホルダーは必ずしも、あなたの教育観や教育思想などに共感的であるわけではないし、必ずしも、あなたの研究をすべて見られるほど時間があるわけじゃない。短い時間で、説得を行える材料が必要です。
革新的な教材や教育環境には、革新的な評価法が求められる。そうでなければ、そこで生まれる学習は把握することができない。
ともすれば、教育関係者の中には、そういう思いこみをもっている人もいます。いいえ、革新的な教材に合致した革新的な評価法を樹立することが可能ならば、それにこしたことはない。
だけれども、従来まで、こういう認識をもっているプロジェクトの多くは、評価をしない傾向にありました。
「あまりに自分たちのやっていることが革新的すぎて、そこで生まれたものは評価できない・・・だから評価はしない」
と考えることが多かったように思います。で、評価を行わないから、なかなかステークホルダーを説得できない。で、最後には、
「アイツ(ステークホルダーの一人)は、教育をわかっていない」
という文句をたれる結果になる。で、プロジェクトは長続きしないことが多い。
振り返って、TEALのやっている評価はスタンダード中のスタンダードです。いわゆる比較実験とプレポストを組み合わせたものです。たとえ、それだけシンプルでいて、いろいろ取りこぼしがある評価法だとしても、そうだとしても、継続的にそれを行っていくことが重要なのです。社会科学の領域に、アクターネットワークセオリーというのがありますね。その言葉を借りるのなら、僕が以上で述べていることは、「ステークホルダーのコミットメント」を向上させ、革新的な教育実践を支えるアクターネットワークをつくりなさい、ということなのです。
そして、さらに違った学習の側面をみたいと思うならば、違う評価法を試していけばよいのだと思います。
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センベンさん、ご家族と今頃ハコネに行っているのだと思います。今日はあいにく雪だけど、雪見露天は最高ではないかな。エンジョイしてほしいものです。
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