2006.1.16 11:19/ Jun
ちょっと先週から具合が悪かったので、シンナリとおうちで過ごす週末(きっと疲労だろう・・・ようやく落ち着いてきた・・・それにしても長引いたな・・・)。
28日に大学で開催しようと思っている研究会の課題図書、ヘンリー・ミンツバーグ「マネジャーの仕事」を読む。
ヘンリー・ミンツバーグ(1993) マネジャーの仕事. 白桃書房, 東京
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/456124218X/nakaharalabne-22
この研究会は「組織エスノグラフィー」に関するもの。内外の組織を対象にしたエスノグラフィー、あるいは、その研究方法論に焦点をあて、参加者全員で勉強することが目的である。
ミンツバーグの「マネジャーの仕事」は、やはり組織論の基礎文献と言われているだけあって、素晴らしいものであった。研究方法論は素朴ながらも、彼は、それまでの研究者が見いだしていなかったものを見いだそうとした。
それは、
「マネジャーは、本当のところ、どのように仕事をしているか」
である。
「マネジャーなら○○すべきだ」「マネジャーはかくあるべきだ」といったマネジャーの仕事に関する規範的なアプローチの研究はたくさんあった。
はたまた、マネージャを功利的な意志決定者とおき、その目的を最大化するためには何が必要か、何を行わなければならぬのかを論じる研究はあった。
しかし、彼がたてた問いは、一見、それと似ているが、微妙に異なる。彼は「~べき」が知りたかったのではなく、「本当のところ、どのように働いているか」をリサーチクエスチョンにした。
「マネジャーのことを、我々はほとんど知らない」
彼はそのようにいう。そして、経営学者は、本当はマネジャーのことを知らないのにもかかわらず、彼らが「すべきこと」を論じるという奇妙な芸当をやってのけていることを指摘する。
彼は、マネジャーの選択は、制約条件の中で「できるところで満足する」ために行われるものだとし、その即時的活動の様子を明らかにしようとした。そのために、5人のマネジャーに「黒子」のように張り付いて、その動きを観察した。
すぐれた研究は、リサーチクエスチョンと方法論で決まる。本研究は、その好例である。
そして彼が見いだしたのは、
1) マネジャーの仕事は断片化、多様化していること
2) マネジャーの仕事は、下記の10に分かれること
【対人関係役割】
1. フィギュアヘッド(組織を代表する)
2. リエゾン(交流役)
3. リーダー(動機付けや人員配置)
【情報関係の役割】
4. モニター(情報を受信し、統制する)
5. ディセミネーター(情報を伝える)
6. スポークスマン(情報を外部環境に伝える)
【意志決定】
7. 企業家(職場に変革をおこす)
8. 障害処理者(リスクヘッジ)
9. 資源配分者(資源配分)
10. 交渉者(組織の利益を極大化する)
であった。
—
ミンツバーグの「マネジャーの仕事」は通常、経営学の範疇に入る。しかし、そのリサーチクエスチョンや方法論は、教育学の領域にも十分適応可能である。
たとえば、私たちは本当に知っているだろうか。
校長がどのようなことを行っているか?
教師が何を行っているか?
について、本当のところを、自信をもって、知っていると言える人はどのくらいいるだろうか?
たとえば後者の場合でいうならば、ランパートの著作における「ディレンマ=マネージング」の概念や、ピーターウッズの研究における「サバイバルストラテジー」の概念を思い出す。
しかし、それらは授業内における教師の動きの記述である。教師の「ある場面」について説明する研究ならある。だが、教師が過ごす「一日」「一週間」「一月」を、キチンとデータで説明した研究というのは、たとえあったととしても、それほど多くないと推測する。勉強不足きわまりない僕が言うことだから、なかなか、信用はならないけれど。
—
いずれにしても、関連する領域ですでに行われている研究が、ある領域では試みられていないことであったりする。そして、ハッとした新しい世界が生まれたりする。
僕のような凡庸な人間にとって、オリジナリティは、ある日突然生まれ、天から降ってくるものではない。僕にとって、研究会は、「ハッ」を生み出すよい機会である。
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