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2006.1.11 18:56/ Jun

青山学院大学「教育方法」、最後の講義

 今日は、僕が担当している青山学院大学「教育方法」が最後の日でした。
 ふうっ
 本当に何とかかんとか、最後までたどり着いたという感じです。毎週毎週、「教材作り」に追われた一年間でしたが、それも今から考えてみると楽しかったと思います。
 あらゆる「艱難」がそうであるように、苦労はしたけど、終わってみると、あっけなかったなぁと思うものなのでしょうね。きっと、そんなものですよね。
 —
 今回の「教育方法」では、「授業を見ること」に徹底的にこだわりました。授業を見るといっても、160名のマスプロ授業ですので、実際の授業を見に行ったり、あるいは、マイクロティーチングをしてもらうことはできません。
 ですが、彼らには「授業」を、「現場」を、学生さんたちに、なるべく知ってほしいと思いました。そんな思いから、1年間かけて40本ほどの教育現場のビデオを見ました。
 部分視聴で、なるべく多くの教育現場を見せていく。そして、「自分がもし教師だったら・・・あのとき何ができただろうか」という風に問いかける。まずは自分の意見をまとめ、あとでグループで話し合う。主に、こうした活動を1年間実践してきました。
 学生たちは、いろんな授業を見ました。
 明治の授業
 アメリカの授業
 フィンランドの授業
 日本の授業
 ベテランの授業
 イギリスの授業
 夢を書かせる授業
 基礎基本を徹底的に教え込む授業
 都会の授業
 農村の授業・・・etc
 そういう授業の中には、いろんな教師や子どもがいました。
 近代日本を支える教師
 緊張の中で授業を進める新任教師
 学校改革に奔走する校長
 疲れはてて教壇を去る教師たち
 
 立身出世を夢見る子どもたち
 交流学習で問題解決を行う子どもたち
 歌を歌いながら法則を丸暗記していく子どもたち
 学びに疲れ人生からも逃走してしまう子どもたち
 はじめて教育テレビにふれた子どもたち
 学生さんには、「授業」という出来事を通して、そういう「教師」や「学習者」の現実も知ってほしかった。教育学といいますと、まず「理想の教師」や「理想の学習者」を議論しやすいのですね。で、「理想」に「理想」を重ねて議論して行きやすい。そうではなくて、「現実」を見てほしかったのです。
 中には、これから教職をめざす若い学生にとって、辛いビデオもありました。何人かの学生が、コメントカードで、「こんな現実は見たくなかった/知りたくなかった」と書いていました。
 しかし、それが、教育現場で起こっている「生の現実」であり、将来ぶち当たるであろう「課題」なのです。学生さんたちが選ぼうとしている仕事の現実なのですね。
 教員採用試験の勉強をすることは重要です。テストにでる知識を丸暗記するのも重要。
 ただし、それと同時に、教育の「すさまじさ」、そういうものを丸ごと受け入れた上で、教師になってほしいと僕は思うのです。
 —
 僕は電車で2時間かけてキャンパスに通っていました。
 今日は「せんせいの通信簿」ということで、生徒たちから無記名で書いてもらった感想を読んでいました。
 「勇気づけられる感想」が多かったですが、それは、まぁ、割り引いて考える必要があるので、ここでは述べません。でも、授業の最後は拍手で終わりました。これは嬉しかったです。
 一度授業では、自分の内なる教育観や学習観をさぐるために、メタファの研究を紹介しました。「授業とは○○のようなものである」と喩えるアレですね。僕個人としては、「授業は舞台」「教師は演出家」だと思っています。だから嬉しかった。
 僕に寄せられた感想で、一番多かったものは、「もっと実践的な授業」を求める声でした。
 確かに今回の「教育方法」では、「教育現場を見ること」「自分の考えること」はやったのですが、
 「自分で授業をつくる準備をすること」
 「自分で教材をつくること」
 「実際に授業をすること」
 「自分たちで授業を批評しあうこと」
 に関しては、全く触れることができませんでした。「これをやらずに、何が教育方法だ」と僕自身も思います。そうだよなぁ・・・。
 ズルいんだけど、実は、僕は来年は、授業はないんですよね(笑)。今期でクビ。いや、クビじゃないんだけど(笑)、最初から一年限りの代打だったのですね。
 でも、もし次に、どこかで、そういう授業をまかされることがあったとしたら、ちょっと実現してみたいと思っています。
 その場合、どうするのかね・・・・。今、病院なんだけど、待ち時間が長いから、ちょっと考えてみようか。
 —
 まずは新任教師のビデオを見せて、「授業をする」ってことがどのくらい大変かをわかってもらうかな・・・。そして「授業を批評することの大切さ」とか、そういうのを次にわかってもらうかな・・・。校内研修のビデオなんかがよいのではないでしょうか。
 これらのビデオで、まずは「つかむ」。「つかみ」は重要です。
 で、いよいよ、生徒に一人ずつ題材をわたします。身近で取材できる題材なんかがよいかもしれませんね。生徒には、取材をしてもらいます。授業作りの準備ね。
 それで、授業では毎回、生徒にミニ授業をしてもらってお互いに批評させる。まずは、ここまでをやってもらいます。
 でね、最初は、敢えて「失敗」させるとよいと思うんです。あまりごちゃごちゃと周辺知識とか、コツとかは言わない。いわゆる教育的失敗というヤツですね。
 でも、この失敗を通して、はじめて、真剣に「授業をすることのつらさ」がわかってもらえるんだと思う。で、そこから「なぜ失敗するのか」をみんなで考えてもらう。
 で、その段階になったら、たまーに、教材作りの方法とか、動機を維持する方法とか、そういう周辺知識を教えてもよいかもしれませんね。
 —
 とまぁ、こんな風に夢は広がりますね。
 でも、大変だろうな、この授業やるの。生徒に与える題材を考えるだけでも一苦労だし、それぞれのテーマにしたがって、僕も勉強しなくてはならないからね。
 まぁ、でも、いつかは実現してみたいと考えています。
 —-
 あと、生徒たちから寄せられた僕の授業の改善点には、
 レジュメの空欄のスペースが小さい
 授業で扱った授業は、小学校・中学校のものが多すぎた
 みたいなものがありました。確かにそのとおりです。
 
 また、ある学生は、僕の発問の未熟さを指摘していました。確かに、僕、下手なんだよねぇ。次回、もし「教育方法」を担当するときには、そうしたことに気をつけようと思います。
 —-
 この授業を担当しないか、と言われたのは、今から一年くらい前でしょうか・・・。そのときはまさか、自宅から2時間かかる淵野辺キャンパスではなく、青山キャンパスだと思っていたのですが、とにもかくにも、いい勉強をさせてもらいました。
 学生さんたちが、近い将来、どんな「12000分の1の授業」をつくってくれるか、楽しみでなりません。
 —
 最後にこの授業は、実は、僕だけで行われていたのではありません。ビデオのエアチェックをしてくれたカミサン、スペシャルゲストとして講演を行ってくれたNHKの宇治橋プロデューサーに、この場を借りて感謝致します。
 本当にありがとうございました。

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