NAKAHARA-LAB.net

2012.11.6 10:36/ Jun

読書感想文とは、いったい「何」で、どのように書いたらよいのか?

 以前にも話題にしたことがあるような気がしますが、子ども時代の僕が、もっとも苦手だったもののひとつに「読書感想文」があります。その他にも、絵とか、鉄棒とか、たくさん苦手なものがあるのですけど、読書感想文は苦手だった。
 というか、そもそもを申しますと「作文」自体がめっぽう苦手で、その中でも、特に苦手だったのが「読書感想文」でした。不肖、中原、「暗い過去」です(笑)。書き出しの1文字すら書けないんだよ〜オーノー。
   ▼
 今から考えてみますと「読書感想文」というものが、そもそも「何」で、「何を期待されている文章」なのかが、そもそもわからなかったような気がします。オヤジやオフクロにきいても、「はてね?」という感じだった。
 国語教育は専門ではありませんので、今もわかっている自信は全くないのですけれども、当時は、今よりもさらにわからなかった(笑)。やっぱ、今もわかんないかな・・・(自信なし)。
「オマエ、アホか、と・・・本を読んで、自分の思ったこと(感想)を書くのが、読書感想文で期待されていることだろ」
 と言われれば、全くそのとおり(笑)なのですけれども、それはトートロジー(同語反復)ですよね、ほとんど。だって「読書して感想を書くのが読書感想文だ」と言っているのですから。
 敢えて、皆さんに、ひとつの問いを提示させていただくとして、上記のようなトートロジーにならず、「読書感想文とは何か?」を、子どもにもわかるように説明するとしたら、皆さんでしたら、なんと説明できますか? これ、なかなか簡単なようでいて、答えるのが難しいな、と思いませんか。
 僕の場合は、読書感想文が「何たるか」もそうなんですが、特に、「なぜ、何のために、僕が読書した感想を書かなければならないのか」そもそも「誰に対して書かなければならないのか」がわかりませんでした。
 だから、僕の読書感想文は、いつもこんな感じでした。
「アルプスの少女、ハイジ」を読んで
 ハイジは・・・を食べました。
 僕はおいしそうだなと思いました
 ペーターは、ハイジに・・・をしてあげました。
 僕はえらいと思いました
   ・
   ・
   ・
 そして、クララは立ちました。
 僕は感動しました。
 おしまい
 なかはらじゅん
  
 我ながら、ひどいね、暗い過去です(笑)。
 しかし、そんな読書感想文を繰り返し書いているうちに、僕は「文章を書くこと」から少しずつ離れていきました。そして、夏休みで宿題に読書感想文が出されるたびに「憂鬱」になりました。書けなくて、書けなくて、書き出し1文字すら書けなくて。しまいには、シビレを切らしたオカンがいうとおり、原稿用紙を埋めた記憶もあるような、ないような、あるような、ないような(笑)。
   ・
   ・
   ・
 今になって考えてみれば、これがもし仮に「自分が読んだ面白い本を友達におすすめする文章を書いてよ」と言われたら、少しはわかる気がすしますし、もうちょっと気楽にかけた気がするのです。まぁ、相変わらず苦手だったでしょうけれど、でも、「少しはまし」だった気もする。
 「おすすめ書籍紹介文」という場合には「面白いから読んでみて、とおすすめする」という「目的」と、「友達」という「宛先」があるからです。
「宛先」の人の興味関心にあったかたちで、それにひきつけて、思わず手に取ってしまうように書くことができるのかもしれませんね。
 ▼
 この話は後日談があって、いつでしたか、かなり大人になってから、あるとき、「読書感想文が得意だったというある方」に、同じような話をしたら、こんな内容の趣旨のことを教えてもらいました。

 読書感想文? あのね、「評価される読書感想文」には、フォーマットがあるの。中原君、知らないの?
 読書感想文は、読書したことの感想を書いちゃ「だめ」なんだよ。あれは、「読書」をきっかけにした「経験文」なの。「自分の経験紹介と、その意味づけを先生に示す文章」なんだから。
 書き方はサンドイッチにすればいいの。
 はい、まず数行で、本の紹介をする。読書の部分はそれでいいの。その後は、ひたすら、その本の内容に「ゆるく関連した」自分の出来事や経験を、それを知らない先生に対して書く。それに対する自分なりの意味づけも忘れない。
 最後のオチは、本に戻る。自分の経験に関連した内容で、本に書いてある印象深い一節を引用して終わる。
 読書感想文は「読書の感想」なんか書いちゃだめなの。メインのコンテンツは、自分の経験紹介なんだから。


 ほほー。
 僕は、思わず「ハニワ顔」になりました。
 そんな「裏技」があったとは。。。
 さすがは「都会の学校出」は違うな、と。
 北海道では、そんな「裏技」は伝わってこなかったぞ、と。
 はやく教えてけれ、と。
 ま、それを知っていたからといって、当時の僕が、文章を書けた気は1ミリもしないけど(笑)やっぱ、ダメじゃん。
 
 もちろん、この方のおっしゃる読書感想文が、読書感想文なのか、どうなのか僕は知りませんし、また、このフォーマット?裏技が、教育上よいことなのか、悪いことかも判断できません。
 でも、「読書」という行為をきっかけに「先生の知らない、自分の経験」を「先生」に対してさりげなく書く」ということが読書感想文だというのなら、先ほどよりは「目的」や「宛先」は明確であるような気もします。それが国語教育の観点からどのように評価しえるかはまた別の問題として、何となくこの方のおっしゃるところ趣旨は理解できます。もちろん、その文章を、書きたいか、書きたくないかは、さらに別の問題ですけれども。
 
  ▼
 
 今日は、読書感想文について、「主観バリバリ」に書きました。全く専門分野ではないので、詳しい議論は知りません。かつ責任はもてません。トンチンカンなことを言っている可能性1000%ですが、どうかお許し下さい。
 もしかすると、当時、学校の先生は、読書感想文が何たるかについて、しっかり教えてくれたんだと思いますが、小生、物覚えが悪く、忘れてしまったのかもしれません。
 でも、いまだに、「読書感想文」という5文字には「トラウマ」があります。この5文字を目にするたびに、「ひょえー、くわばらくわばら」となってしまう。
 たとえば、万が一、ブログで「読書感想文を書いて」と言われたら、僕は、まだ書けないんじゃないだろうか、とも思います。
 思わず30年前に立ち返り・・・
 そして、クララは立ちました。
 僕は感動しました。
 
 と綴っちゃうような気がして、どうにも怖いですね。
 我が人生、どうにも進歩がないね、全く(笑)。
  —
■2012/11/06 Twitter

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