2012.7.2 07:02/ Jun
仕事柄、なるべく多くの、現場のビジネスパーソンの方々に、ヒアリングをさせていただいております。
「エレガントさはなくてもいい(あるにこしたことはないが、僕には、能力不足でできない)」。だけれども「地に足をついた研究がしたい」というのが、最近、僕がいつも思っていることです。何だかね、そう思うようになってきたんです、本当に最近。
方法にこだわりはありません。現場の人の生々しい語りに耳を傾け、あるものは定量調査に持ち込み、ある発言は、そのままヒアリングデータとして紹介させていただいたり、定量調査の補完をさせていただく。
というか、定量的手法でも、定性的手法でも、どちらでもいいので(僕自身、この境界に、あまり興味がない)
「地に足がついた研究がしたい」
このところ、マジで、こう思うようになりました。
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特に最近は、海外赴任・海外勤務を経験なさったビジネスパーソンの方々にヒアリングさせていただく機会が多くなっているでしょうか。
先日も、ある製造業の方々(こちらはダイヤモンド社さんとの共同研究)、ある金融関係の方々にお話しを伺いました。貴重なお時間を皆様、ありがとうございました。
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現場のビジネスパーソンの方々を対象にしたヒアリングで、最大の課題は「時間」です。こちらのヒアリング趣旨を最大限ご理解・ご配慮頂き、貴重なお時間を頂けたとして「1時間」。
経験上、それ以上お時間をいただいても、相手が時間を気にし出す可能性が高いので「1時間を上限とした方がよい」というのが僕の結論です。
だとすれば、この貴重な「1時間」を、どのように使うか?
このことで、いつもヒアリング調査の前は、頭がいっぱいです。
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冒頭での挨拶、関係づくりの会話、権利関係の処理(学術利用の許諾・データ処理の方法、録音の許諾等)で約10分。どんなに準備をしても(僕はすべてパワーポイントで準備をして、場合によっては相手に見せながらおこないます)、これをおこなうには、だいたい10分前後かかります。
ようやく本題。さっそく話を切り出して、「起承転結」を意識しつつ、徐々に深掘りをしていきます。
話すと長くなるので避けますが
「インタビューにも起承転結はある」
というのが、僕の持論です。
で、あっという間に35分。35分たてば、残りは15分。もうクロージングが目の前です。この頃になると、相手は腕時計をチラチラ見始める(笑)。経験上、急にソワソワなさる方が多いです。
こうなると、最後に「どうしても聞かなければならないこと」を
、いっきに聞いて、クロージングです。
クロージングでは、インタビューよりはひとつ上の、メタな視点にたって、インタビュー全体をまとめたり、紹介します。
「インタビューで、Aさんはこうおっしゃいましたが、同じようにおっしゃる方も多いですよ」
とか
「Aさんは、・・・とおっしゃいましたが、他の業界では・・・とおっしゃる方が多いですね」
とか、なるべく相手の方にもメリットになるような付加情報をお伝えします。
その上で、最後に、相手の方から、
「こんな経験談で、お役に立てたんでしょうか?」
「こんな雑談で、よかったのでしょうか?」
といったような発話が、相手から引き出せたら、密かに喜びます。
経験上、よいインタビュー、自分が聞きたいことを聞き出せたときのインタビューとは「雑談」に近いものになることが多いのです。「雑談」ということは、相手にとっても、ストレスフリーでお話しできたということですので、よいことのようにも思います。
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仕事柄、こうしたインタビューを繰り返していますので、
「よいインタビューをするためには、どのようにすればいいのでしょうか」
という質問を学生さんなどから受けることが多いです。先日も授業で、脱線してしまい、話題がそのことになりました。
素晴らしい聞き手、インタビュアーは他にたくさんいらっしゃるので、「なんちゃってインタビュアー」の僕が、この問いに答えるのは気が引けるのですが、でも、自分の経験に照らして考えると、いくつか言えることがあるような気がします。
というか、「なんちゃってインタビュアー」のわりには、書き出すとキリがなく、マジで1冊本を書けちゃう自信がありますが(笑)、3つだけポイントを述べます。
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ひとつめ。
まずは事前の準備は、準備しすぎても、しすぎることはないです。
Webページの企業概要、歴史、沿革、経営者は概観しておき、場合によっては有価証券報告書を見ます。特に見たいのは「有価証券報告書」の「リスク情報」の部分です(これを教えてくれたのは、現在、ASEAN某国に赴任ししている、有能な人事マンのKさんです)。ここには、その企業の解決しなければならない課題が満載です。つまり、マジで企業の方が悩んでいる課題が多い。
「企業名+有価証券報告書+リスク情報(事業上リスク)」でググってみてください。いろんなリスクがでてくると思います。IRである以上、企業は、原則として、ここにはウソは書けません。
こうした事前情報を頭にインプットしたうえで、その企業組織の状況を踏まえつつ、事前に聴きたいことをしっかりまとめ、貴重な45分をデザインします。
経験上、15分をワンセッションとして、3つくらいに分けておくと、いいかもしれません。もしワンセッションめで失敗しても、話題を変えて、次のセッションにいきます。
「ここまでが一つの区切りなのですが、ちょっと話を変えても良いですか?」
という風に、話をうちきって、新たな気持ちで、次のセッションにいけるようにしておくということです。
そして、もっとも重要なことは、インタビューがはじまったら、事前の準備、事前のヒアリングのデザインは、すべて忘れることです。これまでWebで読んでいた情報、事前にデザインした内容などは、心の片隅にとどめ、いったん、横におきます。
逆説的ですが、ここから先は、自分の相手とのインプロヴィゼーション(即興)にまかせるのです。
事前の準備はきっちりしておく
本番がはじまったら、インプロヴィゼーションにまかせる
これが僕のスタイルです。
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ふたつめ。
インタビューでは、なるべく、エピソードやストーリーを聞き出すことです。なぜそうかは、アウトプットを考えればわかります。
多くの場合、ヒアリングデータとは、論文に引用したりすることが多いのです。もっとも、カテゴリー化されて処理される手法もありますが、それにしても、エピソードを切り出すことができなければ、概念化もクソもへったくりもありません。
だとすれば、わたしたちが聞き出さなければならないのは、エピソードやストーリーなのです。「箇条書き」になるような、一般論をいくら聞いても、それは、あとで利用できないのです。
じゃあ、1時間という短時間で、どのようにエピソードやストーリーを聞き出すか?
これは僕自身も、いつも苦労していることなのですが、ひとつだけ、確かなことがあります。
それは
「エピソードや物語を語って下さい」
と、直接、相手にお願いしても「意味がない」ということです。
現場の方々にとって、「エピソードや物語を語る」という言葉の意味がわかりません。
経験上、僕は
「絶対に秘密はもらしませんので、なるべく固有名詞で、当時の経験をお話しいただけませんか?」
とヒアリングの冒頭でお願いして、お話しを伺うこと多いです。「固有名詞で語る」ということは、「Aさんがどうした」「Bさんが、風邪ひいた」とエピソードを語らざるをえなくなるのです。すなわち、「具体的にエピソード語ること」を間接的に要求することになります。
また場合によっては、ゆさぶりもかけます。
「そのとき、Aさんはどんなお気持ちでしたか?」
「もし、今、もう一度できるのだとしたら・・・そのときの自分に何といいますか?」
と、ある出来事における相手の感情や判断をきく場合もあります。感情を聞く問いかけ、判断を聞くといかけというのは、出来事を語ることにつながりやすいのです。
いずれにしても、短い時間で、エピソードや物語を聞くことは、大変難しいことです。
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みっつめ。
それは、インタビューがうまくいかなくても「めげない」ということです。
人付き合いに「王道」がないように、インタビューにも、経験上、「王道」はありません。どんな方法をもってしても、100%うまくいくインタビューなんてありえません。
「王道がない」とはどういうことを意味するか。
それは、
まず、アクションすること
その上で、痛みと苦さを経験し
内省を深め
それを糧に、さらなるアクションを続けること
しかありません。
かくいう僕も、「あー今日は、自分として納得のいくインタビューができたな」と思えるのは10回のセッションのうち1回くらいです。
10回のうち8回、忸怩たる思いを抱えて、お時間をいただいた相手に恐縮して、会社をあとにします。
残りの1回は、激しい後悔をして、貴重なお時間をいただいた相手に心の中で何度も謝罪して、会社を去ります。「あー、よい時間を過ごせなかったな」と。
でも「めげないこと」です。
行為する他はありません。
昨日の話ではないですが、
よいインタビューができるようになりたいのだったら、インタビューしつづけること
です。
僕はそう信じています。
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上記は、もちろん、「わたしのインタビュー論」です。一般的なインタビューの本なら、もっと高名な先生や著名なインタビュアーが、様々な本を書いていますので、そちらをご覧いただいた方がよいように思います。
自分の研究領域を「企業の人材育成」に変えて(河を渡って!)、もう10年弱になろうとしています。
現場のビジネスパーソンの方々から、いかに短い時間で、話を引き出すことができるか。
今日も「愉しい苦闘」が続きます。
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