2012.4.1 10:28/ Jun
沖野修也(2005)「DJ選曲術-何を考えながらDJは曲を選び、つないでいるのか」を読みました。
この本は、日本を代表するDJのひとりである沖野修也さんが、「選曲するとはどういうことか」を論じている本です。
書名には「選曲術」とありますが、むしろ現場で生まれた、沖野さん自身の「選曲の思想」に近いかもしれません。
まず、どういう音楽を「誰」に聴かせるのか。オーディエンスは「誰」であり、その人は、現在、どういう状況にあるのかを把握するところから、選曲は、はじまります。
選曲とは、決して、音楽をざっくばらん、適当パンチで、並べることでは、断じてありません。まして、ヒット曲をやたらめったら並べて、アゲアゲの雰囲気をつくることでもありません。
大切なことは、その「選曲」を通して、DJ自身が、「何」を「表現・実現」しようとしているのかを明らかにすることだと、沖野さんはいいます。
僕の言葉で述べるのならば、それは、音楽というメディアを使って、「何か」を「誰か」に届ける行為であり、「何か」を表現することなのだ、ということかもしれません。
DJに関する本は、小生、基本的に好きなので、よく読みます。でも、この手の多くの本はDJ機材の説明が多いのですが、本書には、そういう記述はありません。
前半部は、沖野さんの選曲論、後半部分では、有名なDJたちの選曲を分析するパートが続きます。いっかんして問われているのは、「選曲するとは何か」を問うています。硬派です。
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本書を通読していて、僕はひとつのことを考えていました。それは、昨今の「創造(creation)」のあり方についてです。
昨今、創造というものが「リミックス」「コンピレーション」「ブリコラージュ」「キュレーション」など、「組み合わせの妙」によるものが増えてきているように感じるのは、僕だけでしょうか。
もともとイノベーションやクリエーションの定義自体が、「新結合」であったりすることもあるので、アタリマエといえばアタリマエなのですが、ネットや情報化の高度な発達によって、ますます、「組み合わせによる創造」が注目されているような気がします。
それだけ、個別のモノ、コト、情報が世の中に氾濫し、それら個別に存在する物事に、一連の「つながり」や「ストーリー」や「意味づけ」ができにくくなっているとも言えるのかもしれません。
それらを解決し、それを求める「誰か」に届ける行為が、「リミックス」「コンピレーション」「ブリコラージュ」「キュレーション」とも呼べそうです。
しかし、その場合に、どのように「リミックス」「コンピレーション」「ブリコラージュ」「キュレーション」を行うのか? それらの「組み合わせ」にとって、何がその「要諦」なのか。
すなわち、「リミックス」「コンピレーション」「ブリコラージュ」「キュレーション」といったものが「単なる情報の配列や集合」、「単なる足し算」や、「行き当たりばったりの結合」、「思いや思想のない情報選別」にならないためには、何が必要なのか、本書を読みながら、僕は、そのことを考えていました。
本書の議論を敷衍するに、これらの問いに答えうるためには、「組み合わせ」によって、何を、誰に届けるのか。そのことで、何を実現しようとするのか、という根源的なところが問われなければならない、ということになるのでしょうね。それが明確でないことには、組み合わせは、「羅列」になってしまう危険があるということでしょうか。
本書は、「DJの本」として読むのではなく、「創造の観点」から読み解くこともできると思います。
もし、皆さんが「組み合わせによる創造性の発揮」に興味をお持ちなら、一見、遠く感じる「DJの世界」が、皆さんの問題とリンクしてくるかもしれません。
ちなみに・・・余談ですが、「DJが、プレイ中、何を考えているのか」に関しては、下記の田中フミヤさんのDVDもおすすめです。
DJプレイ中に、「どういった判断によって選曲を行っているか」または「プレイ中に考えていること」を発話思考していらっしゃり、その様子が、すべてレコーディングされています。
まさに「状況に埋め込まれた判断」、まさに「リフレクション・イン・アクション」ですね。なかなかスリリングですよ。
そして人生は続く。
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追伸.
今日から新年度ですね。2012年度は、いろんな「変化」が起こるだろうな・・・。まだ明らかになっていないことも含めて、きっと、僕には2011年度を上回る変化が起こるような気がします。
「やらなあかんこと、やらなくてもいいこと、やってはいけないこと」をはっきり峻別しつつ、何とか、2012年度を乗り切りたいと感じます。
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追伸2
今日の日記の問題は、ラーニングデザインにも大きくかかわりのあることのように思います。例えば、今、仮に、いくつもの学習活動や、学習内容をあわせて、学びの場や機会をつくるとしますね。その背後に、ある実現したい価値がなければ、最悪の場合、学習内容の「羅列」になってしまいます。
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