2009.8.24 07:41/ Jun
リアルタイムドキュメンテーション(Realtime Documentation)という言葉があります。昨日、NTT InterCommunication Centerでのシンポジウムのテーマは、まさに、これでした。本シンポジウムは、上田信行先生の企画です。
リアルタイムドキュメンテーションとは、主に、ワークショップや会議など、1)人々がコミュニケーションをしたり、双方向の活動をしたりする機会において、2)そこで起こっている出来事をまさにリアルタイムに記録することです。
記録するメディアとしては、テキストであったり、写真だったり、ビデオだったりします。それ以外でもありえます。
通常は、デザインやアートに専門性をもつ人々が、ワークショップに運営スタッフとして参加し、そのプロセスを「可視化」していくことが、よく行われることです。
曽和先生+学生さんたち(ドキュメンテーション部隊)
ドキュメントされたプロダクトは、
1)ワークショップの最後で参加者間で行われるリフレクション、あるいは、ワークショップ会場を出たあとに非参加者をまじえて実施されるリフレクションに役立てることができる
2)ワークショップ参加者の「お土産」として持ち帰ることができる
3)ワークショップのプロセスを記述したものとして、ワークショップのステークホルダーにアカウンタビリティを果たすときに利用できる
といった効果があると思います。昨日は、こうしたことに触れつつ、もし、リアルタイムドキュメンテーションがなかったのなら、どういうことが起こるかを仮想的に考えて、プレゼンテーションさせていただきました。
学びのあり方が、インタラクティブで、フレキシブルになればなるほど、そこでの営みの「意味づけ(Sense-making)」が重要になります。ですので、リアルタイムドキュメンテーションの必要性は、今後増えることはあっても、減ることはないと思います。
中原のプレゼン:Realtime presentation@NTT ICC
https://www.nakahara-lab.net/blog/2009_ntticc.pdf
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僕のプレゼンのあと、リアルタイムドキュメンテーションの可能性について参加者の方々に話し合っていただいたところ、非常に興味深い指摘がありました。
「リアルタイムドキュメンテーションを、オレ(参加者)にもやらせろ」
という指摘です。要するにこういうことでしょうか。
現在、「リアルタイムドキュメンテーションを実施する人は、デザインの素養をもっているプロ」で、「ドキュメントされ、ドキュメントを見る人は参加者である」という構図になっています。つまり、そこにはクリエーターと消費者という2分法が存在しています。
おそらく、参加者の方が最も言いたかったことは、「ワークショップの参加者がリアルタイムドキュメンテーションに参加できる仕組みがないのだろうか」ということだと思います。
プロダクトを一方向的に「見せられる」のではなく、そのプロダクトづくりに部分的に関与する、ということなのかな、と思いました。
ここには大きな挑戦があります。
参加者は、ワークショップの中でメインの活動に従事していなければなりません。一方、ドキュメンテーションの活動にも参加しなければならないのだとしたら、そこには大変な認知的負荷がかかります。
何とか、ドキュメンテーションの活動そのものを、ワークショップのメインの活動に「埋め込む(embedded)こと」が求められるのかもしれません。
ともかく、上記は「素晴らしい指摘」だと思いました。
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「リアルタイムドキュメンテーション」は、今、静かに広がっています。既述したように、その「あり方」は変化していますが、「あり方の重要性」は今後ますます増していくでしょう。
この分野の研究の進展に目が離せませんね。
ちなみに、9月1日から、ワークプレイスラーニング2009の募集が開始されます。
ここでもリアルタイムドキュメンテーションを活用しようと思っておりますので、もし、よろしければぜひ。
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