NAKAHARA-LAB.net

2008.12.2 18:53/ Jun

学会に、人が集まらなくなっている!?

 最近、はからずも同時期に(こういうのをシンクロニシティというんだろうか)、複数人の研究者から「学会」に関する話を聞いた。
「なんか最近、学会って、何処に行っても、人が以前よりも集まらなくなってきていませんか? ジャーナルへの投稿数はあんまり変わらず横ばいです。でも、学会に人が集まらなくなってきているのです・・・これは、どうしてなんでしょうか」
「○○学ってあるじゃないですか。なんか、この最近、こういう学問領域の”くくり”が怪しくなってきていませんか。だって、○○学って言ったって、研究者によって、研究しているものも違うし、方法論も違うんですよ。○○学という”ひとつのくくり”でまとめられなくなってきているような気がするんです。○○学の学会にいっても、なんか、”同じ領域の研究者”って感じがしないんですよね・・・それよりむしろ、△△という同じテーマを、様々なアプローチから研究している人たちが集まった方が、話が盛り上がるし、自分としても得るところが多い・・・そう思いませんか?」
「学会は、通常、年に1度開催されますよね。でも、僕の分野だと、時間単位が1日、2日、時には1時間なんですよ。今日発見したことは、明日には古くなっている。そんな中で、1年に1度集まって発表することの意味って何なんでしょうか。」
 ▼
 なるほど。
 上記で、何人かの研究者が話しているのは、「個々の学会の栄枯盛衰=ある学会には人が集まる、他の学会には人が集まらない」という問題ではない。
 そうではなく、「学会」と称して年に一度研究者が集まることの意味そのものが揺れている、と言っているのである。あるいは、○○学という”くくり”で、研究者が”まとまる”意味が、怪しくなっているのではないか、と述べている。
 もちろん、ここで述べたことが、どの程度一般性をもつかどうかはわからないし、僕は知らない。
 ▼
 世の中の流れが速くなり、かつ、複雑化、不確定化している。その流れの中で、○○学というカテゴリーが揺れている。そして、この流れは、加速することはあっても、弱まることは、あまり想像できない。
 世の中が変わるのであれば、「学会」という制度も揺れる。もちろん、○○学という”くくり”も揺れる。科学論の専門家ならば、「何をいまさら寝言を言ってるんだ」と言われるかもしれないが、一般の研究者でも、それを実感する人が増えている。
 僕がメインで活動している学会では、いまだ、こうした状況は生まれていない。だけれども、分野によっては、今まさに激流の渦中にあるものもある。
 地殻変動らしきものを感じる。
 カール=ワイクのいうように、すべてはOrganizingなのだろうか。それはそれでシンドイな、とも思う。反面、それが宿命だとも思う。
 僕らは、常に「~ing」の中で生きている。

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