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2008.6.17 06:41/ Jun

コミュニティの世代継承と消失のデザイン

 昨日は、ある企業A社の経営企画の方が3名、研究室におこしになりました。A社では、社内に、社員たちが、仕事のこと、仕事外のこと含め、自由に「コミュニティ」をつくり、人を募り、活発に活動をしているとのこと。
 この活動自体は、A社のかかげる組織変革プログラムの一部に位置づいているそうです。昨日はその全体像をディスカッションしました。大変インフォーマティヴな会でした。A社の皆様、ありがとうございました。
 —
 その中で大変興味深かったのは、「コミュニティの世代継承、消失、再誕生をいかにデザインするか」という話でした。
 要するにこういうことです。
 コミュニティ活動というのは、熱意と志のある社員が、最初に手をあげてはじまります。
 最初の頃は、メンバー全体に、その「熱意」や「志」が共有されていますが、次第に、その活動が活発になるにつれ、それがうまくいかなくなってきます。
 活動が活発になり、外部の人々に認知されるようになったり、場合によっては、社長などから「あそこのコミュニティの活動はすごい」と持ち上げられるようになってくると、さらに人が集まってきます。
 これらの人々は、設立当初の熱意を共有できているわけではありません。コミュニティメンバーのもつ「熱意」や「志」に「層」が生まれる瞬間です。
 さらに深刻な事態がおこります。コミュニティが外部にフィーチャーされればされるほど、そこには、必ず「フリーライダー(ただ乗り)」が生まれてきます。
 本来、「熱意」や「志」を共有した人があつまる場がコミュニティであるにもかかわらず、「あそこに入ると、出世できそうだから」といった理由で、人が集まってきます。
 コミュニティとは「誰でも参加できること」が条件になっていることが多いので、そうしたフリーライダーの「参加という名の非参加」を、なかなか拒むことができません。
 しかし、そういう人はコミュニティで何をするわけではありません。だって、「コミュニティで何かをすること」ではなく「コミュニティにいること」が目的なんだから。
 そうすると、コミュニティ内部に様々な「軋轢」が生まれてきます。コミュニティの中で「やる人」「やらない人」が生まれ、「やっている人にぶらさがる人」「やっている人を見ている人」がでてくる。
 だんだんと、「熱意」や「志」も共有されなくなってきます。そもそも、後から入った人には、コミュニティ創立期の盛り上がりは、後追いしにくいものなのです。
 さらに深刻なのはフリーライダーたちです。彼らは「熱意」も「志」もクソもヘッタクリもありません。
 かくして、コミュニティの活動がだんだんとギクシャクしはじめます。そもそも「自分たちは、なぜ、集まっているのか」がわからなくなってくる。「なぜ、こんなに多くの人々をまとめることに時間をかけなくてはならないのか」という疑問がフツフツとでてきます。「コミュニティの死期」が、近づいた瞬間です。
 ここで、コミュニティのリーダーとしては、いくつかの選択肢をとることができます。
1.コミュニティそのものの活動を辞めてしまう
2.創立当初のメンバーは抜けて新しいコミュニティをつくる
3.現在のメンバーの中で志のある人をもう一度選抜して、コミュニティをつくる
 しかし、最も重要なことは、コミュニティの活動の停滞・終了を引き金に、せっかく集まった人々の社会的関係を崩壊させてはならない、ということです。そして、これが大変に難しい。
 どの選択肢をとっても、ある程度、コミュニティメンバーには、感情の「しこり」が残りますね。この「しこり」をミニマムにおさえつつ、コミュニティの熱意や志を世代継承し、いかにその活動を続けていくか。非常に難しいマネジメントが求められます。
 —
 大変オモシロイなと思いました。
 いわゆるCoP論やネットワーク論では、つながりをつくったり、コミュニティを創造することに、人々の関心があたります。
 しかし、実は、コミュティを創造することは、熱意さえあれば、あとは「エイヤっ」であまり難しいことではないのかもしれません。
 問題は世代を継承し、場合によっては人間関係にしこりを残さず、コミュニティに安らかな死を与えることなのです。
 とても考えさせられました。

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