NAKAHARA-LAB.net

2023.1.25 08:01/ Jun

「自分」は「他人」で出来ている!?

「自分」は「他人」で出来ている!?
       
  ・
  ・
  ・
    
 相変わらず、書籍を書き続けています。今書いているのは「人材開発・組織開発コンサルティング」という本です。
    
 この本は、
    
 1)組織内外の人材開発・組織開発担当者が、
 2)計画的、かつ、体系的に
 3)クライアント組織と出会い、彼らとやりとりし、
 4)効果的な人材開発・組織開発を企画し、
 5)適切な評価を行い
 6)最終的にクライアントに、何かを残して別れるにはどうするか
   
 を論じています。
   
 要するに「人材開発・組織開発の指南書」です。人事の仕事をしている皆様、人事のコンサルティングをなさっている皆様、多くの方々にお読みいただけるようになっています。大学院の教科書でもあります。
   
 いま現在、370ページ、24万字あたりまで書き上げました。
 あと60ページくらい。着地は25万字くらいかな、と思っています。
 わたしにとっては、これまでやってきたことの「総まとめ」のような本です。
   
  ▼
    
 この本を書いていてつくづく思うことが2つあります。
   
 ひとつめ。
 結局、僕は、この25年、「何ひとつ変わっていない」んだな、ということです。
     
 見た目も変わりましたし(笑)、研究する舞台も変わったかもしれません。
    
 しかし、僕は、僕は「同じこと」をいろんな角度から考えていただけです。
  
 それは、
       
「ひとが、他者とコミュニケーションしながら、学べる場をつくるには、どうするか?」
   
 です。
    
 これだけのことを、25年かけて考えてきたのだと思います。
 ほんと、それだけ。
   
 すなわち、
  
 企業 × コミュニケーション × 学び
 
 のかけ算をとくことが、わたしの研究のすべてでした(笑)。
 このことを、改めて発見しました。いや、気づくでしょ、ふつー、と言われるかもしれませんが、今回、改めて気づきました(笑)。
   
  ▼
   
 ふたつめ。
  
「企業 × コミュニケーション × 学び」について25年、ウダウダと物を考えてきましたが、その根幹は、おそらく「学部時代の読書」だったんだな、ということです。テクニカルに技術や方法論を身につけ始めた大学院ではなく、ただただ多読・乱読をしていた学部時代です。
   
 とりわけ、本当に若い頃に読んだ社会科学の古典、たとえばデューイの「経験と教育」、バーガー&ルックマンの「現実の社会的構成」とか、シュッツの「現象学的社会学」、レイブ&ウェンガーの「正統的周辺参加」とか、ブルデューの「再生産」とか、ガーフィンケルの「エスノメソドロジー」とか・・・そういう古典が、自分には深く影響しているんだな、と思い知りました。
   
 そして、結局、「僕という人間」は「他人という粘土」で「つくられている」んだなと思いました。
 そう、僕は「他人で出来ている」のです。
    
 僕の頭のなかには「僕自身の考え」に満たされていると思いたいかもしれないが、ずっとずっと奥深くに「他人の考え」ばかりが埋まっている。
 今回の執筆過程では、そのことを発見しました。
       
 このことに関して、パスカルは、主著「パンセ」で、こんな名言を残しています。
       
作家によっては、「自分の著作」を語るときに、「わたしの本、わたしの注釈、わたしの物語」などという人がいる。(中略)彼らはむしろ「わたしたちの本、わたしたちの注釈、わたしたちの物語」というべきなのである。なぜならば、概して、彼らの著作には「自分のもの」よりも「他人のもの」の方が多く含まれているからだ。
(パスカル「パンセ」)

   
 パスカルはこのことを、今から9世紀?くらい前に発見していました。
 汗顔の至りです。
   
 でも、こうも言えますね。
「他人を乱読しなきゃ」「自分の考え」なんて生まれない。 
 それも若い頃ね。
    
  ▼
   
 今回の執筆過程では、いろいろなことを発見しましたが「次にやりたいこと」も出てきたような気がします。次にわたしがやりたいことは、もう一度、昔の古典にたちかえって、それらを乱読しつつ、人材開発・組織開発の「体幹」を太くする仕事なのかな、と思います。
    
 とりわけ「コミュニケーションとは何か?」というところは探究したいな、と思っています。なぜなら、それは、僕の掛け算「企業 × コミュニケーション × 学び」の根幹をなす概念ですので・・・。25年間で錆び付いてしまった、この概念の解像度をあげたい。それは結局、より深い人材開発・組織開発をつくることに貢献できるのかな、と思います。
   
 本を書きながら、やりたいことも見つけられた気がします。
 息をはけば、吸いたくなる。
 だせば、いれる。
 アウトプットするから、インプットする。

 いずれにしても、これで、しばらくは「書き続けること」ができそうです。
 体が元気であれば(笑)
   
 そして人生はつづく
     
 ーーー
   
【ご案内】新刊「話し合いの作法」!:すべてのひとびとに、対話し、合意して、決断できるスキルを! 人事パーソンはもとより、現場のマネジャー、現場の先生方などなど「話し合い」のスキルを高めたいすべての方々にお読みいただきたい一冊です!
   

新刊「話し合いの作法」(AMAZON予約)
https://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4569851843/nakaharalabne-22
     
 同書の内容をサクっと学べる動画も公開されています。どうぞご笑覧くださいませ!
     
■仲が良くても心理的安全性が低い残念な理由【中原淳 立教大学経営学部教授】
   

    
■“残念な話し合い”5つの病【中原淳 立教大学経営学部教授】
   

  
 ーーー
     
【人事・採用ご担当者さまへ】御社で人材開発・組織開発のプロフェッショナルを採用しませんか?
   
立教大学大学院 経営学研究科 経営学専攻 リーダーシップ開発コース(以下、LDC)では、経営学を基盤にしながら、次世代のリーダーシップ開発(人材開発・組織開発)を企業・組織で推進することのできる高度プロフェッショナル人材を育成しています。
  
このたび、このコースを修了した大学院生の皆さん(卒業生ネットワーク:アルムナイネットワークのメーリングリスト:アルムナイネットワークは、卒業生の自主的な活動です)に対して、企業人事の皆様が「採用情報」をお届けいただけるサイトを開設いたしました!。利用上の注意をご高欄いただき、適宜、ぜひ、ご利用くださいませ。無料で情報を送付いただけます。
   

    

    
■立教大学大学院・採用情報発信サイト■
https://ldc.rikkyo.ac.jp/recruit/
     
【立教大学大学院で大学院生として学びませんか?】
 授業は「フルオンライン」。授業は金曜日夜と土曜日だけ行われており、2年間で、修士(経営学)が取得できます。来年1月に願書提出、2月に入試が予定されています。
    
 在学生などの声、リーダーシップ開発コースでの授業の様子について知りたい方は、ぜひ、下記のニュース欄をお読みくださいませ!
     
ひとづくり・組織づくりの大学院での「学び」とは?
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/
           
 ーーー
          
【アンコンシャスバイアス研修・内製化ツールキット開発!】武蔵野大学・島田徳子先生、ダイヤモンド社の皆さん(広瀬一輝さん、永田正樹さん)との数年にわたる共同研究と、NPO法人日本ブラインドサッカー協会との連携で、スマホで手軽に受検できる「アンコンシャスバイアス測定テスト」と、内製化研修(プレゼンキット)を開発しました!。この問題は、学術的な背景などは、わたしどもが、テスト結果に基づき動画像(ビデオ)で解説させていただきます。ご利用くださいませ! ご自身の組織にもっともフィットしたアンコンシャスバイアス研修をつくることができます。どうぞご利用くださいませ!
      
  
■アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)のWebページはこちら!■
https://jinzai.diamond.ne.jp/ub/unconscious-bias/
      
 ーーー
              
新刊「チームワーキング」がオンライン管理職研修になりました。JMAMさんからのリリースです(共同開発をさせていただいた同社の堀尾さん、ありがとうございました。中原は共著者の田中聡さんと監修をつとめさせていただきました)。どうぞご笑覧ください! 
       
「チームワーキング研修版」リリースされました!
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/teamworking/
   
「チームワーキング」が「アセスメントを絡めた管理職研修」として利用されております。モニター利用各社の人事担当者の皆様、開発担当者の堀尾さんと、座談会をさせていただきました。ぜひご覧くださいませ!
   
チームワーキング座談会
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/teamworking/case/index.html 
  
 書籍「チームワーキング」の方も、おかげさまで「重版」を重ねております。応援いただいた皆様に心より感謝いたします。
     
    
 
https://amzn.to/3esCOrW
         
すべてのリーダー、管理職にチームを動かすスキルを!
ニッポンのチームをアップデートせよ!           
   
  ーーー    
    
立教大学経営学部 中原ゼミ4期生、ゲームなどを活用した「内定者フォローワークショップ」を共同開発! ダイヤモンド社・ダイヤモンドヒューマンリソースさまから発売中!デンソー様、東急不動産SCマネジメント様、ラインズ様、日水コン様、リリカラ様など、20社を超える企業で、内定者研修・新入社員コンテンツの一部として、ご利用いただいております。
  
内定者の論理思考力、質問力などの工場、強みの発見、内定者同士の関係構築を、オンライン・オフラインで行えます。スライド、ワークシート、動画など完全完備。企業ごとに内製化してお使いいただけます。
     

    
立教大学経営学部 中原ゼミ、ゲームなどを活用した「内定者フォローワークショップ」を共同開発! ダイヤモンド社・ダイヤモンドヒューマンリソースさまから発売中!
https://jinzai.diamond.ne.jp/rp/prospective-employee-workshop/
   
 どうぞご高覧くださいませ!
  
 ーーー 
      
 職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS(オーディ・アトラス)」が多くの職場で使われはじめています。サーベイはもとより、それをいかに「フィードバック」するかに焦点をあてたツールです。ワークショップも開発しております。どうぞご笑覧くださいませ!
   

職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS」 (パーソル総合研究所・中原の共同開発) 
https://rc.persol-group.co.jp/consulting/survey/service/od-atlas.html
   
  ーーー
       
【好評発売中】1on1のコツをまとめた映像教材を、中原とPHPさんで共同開発しました。上司用、部下用あります。1on1について「同じイメージ」をもつことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス(上司用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
  
経験を成長につなげる1on1(部下用)
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061   
  
  ーーー
   
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
  
 ーーー
   
新刊「フィードバック入門:耳の痛いことを伝えて部下と職場を立て直す技術」絶賛発売中、13刷重版出来です!。AMAZON総合13位、1位(マネジメント・人材管理カテゴリー、リーダーシップカテゴリー)を記録!年上の部下、若手のトンガリボーイ、トンガリガール。職場には、多様な人々が集っています。難易度の高い部下育成に悩む管理職向けの新書です。どうぞご笑覧くださいませ。スピンアウト企画にDVD教材「フィードバック入門」、研修、通信教育もあります。こちらもどうぞご笑覧ください。
     

   
『フィードバック入門』スピンアウト企画
https://www.php.co.jp/seminar/feedback/
    
 ーーー
  
【泣くな!新米管理職!】
  
おかげさまで10刷重版出来。「駆け出しマネジャーの成長論」は、「実務担当者」から「新任管理職」への役割移行をいかに進めるかを論じた本です。「脱線」をふせぎ、成果をだすためには「7つの課題」への挑戦が必要であることを解説しています!全国の管理職研修で用いられています。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
パーソル総合研究所と中原は、このテキストをもとにした「マネジャーになる研修」を開発しました。種部吉泰さんとディスカッションは、非常に楽しいものでした。このコースについても、どうぞご覧くださいませ!
  
「マネジャーになる」 研修:プレイヤーからマネジャーへの移行期支援プログラム
https://rc.persol-group.co.jp/seminar/become-a-manager.html
    
  ーーー  
    
Diamond Transition Program for Freshers(オンライン新人研修)
「新人研修をアップデートするための5つのコンセプト」に基づいて開発された、中原が監修をつとめる新人研修プログラムです。全4回にわたって実施する「オンライン研修」と「現場での実践&振り返り」を往還することによって、新人期に直面する壁を乗り越え、トランジションを果たせるよう手厚くサポートできるようになっています。経験学習を習慣化するほか、ストレスマネジメント、フィードバック、ジョブクラフティングなどについて学ぶことができます。
  

Diamond Transition Program for Freshers(オンライン新人研修)
https://jinzai.diamond.ne.jp/items/k00HD0024/
          
OJT指導員向け・短時間&動画で学べる 部下育成スキルの動画もございます。中原が新人育成のポイントについて解説しています!
   
短時間&動画で学べる 部下育成スキル・解説動画
https://jinzai.diamond.ne.jp/items/000HD6260/

    
 ーーー
        
新刊「研修評価の教科書」好評発売中です。アカデミックな知見に根ざしつつも、実際の企業のなかで実践可能な研修評価とは、いかにあるべきか。「企業における」研修評価のあり方を論じた本です。質問事例などのワークシートなどもついております。3つの企業事例も含まれています。どうぞご笑覧くださいませ。
   

新刊「研修評価の教科書:数字と物語で経営・現場を変える」
https://amzn.to/3ta9mhf
   
     
 ーーー
  

  
新刊「M&A後の組織・職場づくり入門」発売中です。AMAZON「企業再生」カテゴリー1位を記録しました(感謝です!)。
  
これまで税務・法律の観点からしか語られなかった「企業合併(M&A)」の問題に対して、ひとと組織(人材開発・組織開発)の観点からアプローチし、シナジーを生み出す可能性を考えます。
  
M&Aという「巻き込まれ事故」に関わってしまった経営企画・人事・現場の管理者・リーダーの皆様にぜひお読み意いただきたい一冊です!
  

購入はこちら!「M&A後の組織・職場づくり入門」
https://amzn.to/3v0P0bE
     
 ーーー
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約39000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun   

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.12.25 10:57/ Jun

「最近の学生は、昔からみると、変わってきたところはありますか?」という問いが苦手な理由!?

2024.12.8 12:46/ Jun

中原のフィードバックの切れ味など「石包丁レベル」!?:社会のなかで「も」学べ!

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:54/ Jun

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:12/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.29 08:36/ Jun

大学時代が「二度」あれば!?