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2022.4.5 08:27/ Jun

人事の流行語の多くは、ひんまがって、よじれて、ねじれて解釈される!?

「人事の世界って、流行語が好きですよね」
   
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 人事の世界は数年に1度、皆がとびつく「流行語」が生まれます。
   
 わたしも、この業界!?に長くおりますので、いくらでも、それを挙げることができます。
   
 たいていは、どこぞのコンサルか、どこぞの国際基準か、どこぞの省庁か、どこぞの経済団体が、意図をもって「新たな言葉」を鋳造します。これが、最初の着火点になります。
   
 多くの言葉は、ここで終わります。が、なかには、社会に「燃え広がる」言葉もあります。
 きっと「時代の風」をうまくとらえたのでしょうね。なんとなく、その時代時代の人々の琴線にひっかかるものがあったとき、燃え広がります。そうなるとすごいものです。右に左に大騒ぎになり、あっという間に、広がっていくのです。
   
 冒頭の
   
 「人事の世界って、流行語が好きですよね」
    
 は、そんな様子を見ていた学部生が、僕に、ふっとつぶやいた一言です。若いのに、なかなか本質をついてるねー、と思って聞いていました。
       
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 もちろん流行語や、流行語の目指すところ、そのものが悪い、というわけではありません。しかし、ひとつだけ思うのは、「流行語の旗振りをする人事」と「流行語が展開される現場」には、相当の温度差があるのだ、ということです。そこに注意をしないと、流行語がめざす世界は、実現ができません。
   
 たとえば「エンゲージメント(自分の裁量を超えて、熱量をもって働くこととします)」
 ちょっと前のことになりますが、ある現場の管理職の方は、こんな一言をもらしていました。
   

「社長が、エンゲージメントをあげろって言うんですよ。エンゲージメントが生産性に関係するから、あげるぞって。システムも導入して、みんながどのくらい仕事をしているか、見える化していくからって。
   
でもね、給料同じで、ビタ一文あがらないのに、自分の裁量を超えて、熱量をもって働って、そう言われても、現場はピンときません。エンゲージメントって、経営目線の上から用語じゃないですか?
     
しかも、見える化って、結局、見るのは時間なんじゃないかって、もっぱらな噂です。社員のがんばりを定量化するって言うんですけど。ということは、エンゲージメントをあげろってのは、残業しろってことでしょうか。それはエンゲージメントを下げる?なんか訳がわからなくなってきました」

    
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「エンゲージメントが高い」がいつのまにか「長時間労働の強要」になっている。ああ、なんたるねじれ。
  
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 こんな事例はいくらでもあります。たとえば「ジョブ型雇用」
   
 ジョブ型雇用がなんたるか、という定義は、もはや「沼」なので、わたしは立ち入る気は1ミリもありません。ここでは「仕事(職務)にひとをつける仕組み」とだけしておきます。
    
 ジョブ型雇用になれば「自分の職務」がクリアになるので、より「自分の能力・専門性・スキル」が高めなければならない、と人事界隈では言われているようですが。。。。はたまた現場では・・・
  

「ああ、ジョブ型雇用ですね。うちの会社もやるみたいです。要するに、今までは何でもやれって言われていたのが、あなたは、これだけの仕事だけ、やりゃいいよって制度ですよね。自分のジョブだけやればいいので、仕事減ります。いいんじゃないですか。」

  
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「ジョブ型雇用=これだけの仕事だけ、やりゃいいよという制度、自分のジョブだけやればいいので、仕事減ります。いいんじゃないですか」・・・うーん、なんか不安です。
  
 数十年前に「成果主義」とかいうのも言われたな。そのときに生み出された「香ばしい結果」にならなければいいのですが・・・。
     
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 くどいようですが、人事の流行語が悪い、というわけではありません。
 それが「経営」として必要ならば、各社で判断して、やればいいだけのお話です。経営は自由です。どうぞお好きになさっていただきたいと思います。
    
 しかし、わたしが申し上げたいのは、その概念を末端まで浸透させなければ、現場では「とんでもない解釈」が生まれてしまう、ということです。
  
 人事の流行語の多くは、現場で、ひんまがって、よじれて、ねじれて解釈される
  
 という命題が成立するくらい、そのねじれ方がむごい。
    
 人事制度は企画2割、運用8割
   
 ともよく言われます。
 現場に繰り返し繰り返し、制度の目指すところを伝えていかなきゃ、なりませんね。当たり前のことですが。
  
 あなたの会社では、人事用語が、現場で間違った解釈を生んでいませんか?
  
 そして人生はつづく
   
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