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2022.1.25 08:39/ Jun

オンラインワークショップの2つの未来!? : オンラインワークショップに「一手間」かけて「共通体験・共通感覚」をつくりだす!?

オンラインワークショップの2つの未来!? : オンラインワークショップに「一手間」かけて「共通体験・共通感覚」をつくりだす!?
        
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 昨日、僕は、unmeet@neomuseumというオンラインワークショップが無事週末に終了したことを、このブログ記事で報告させていただきました。
       
「会う」とは「ともにあろう!」とする「意志の力」である!? : unmeet@neomuseum2022が無事終了!
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/13710
       
 このワークショップは、著書「プレイフルラーニング」(上田信行、中原淳)から10年たったことの記念で行われるはずでした。ぜひ、もう一度、吉野のneomuseumで対面で行いたいと思っていたものの、オミクロンで、やむなく、オンライン化。
   
 しかし、せっかくやるのだから、ここは腹をくくって、楽しもう。オンラインワークショップの最先端を走るプロジェクトにしたい、と企画者で話し合い、参加者の皆さんにもご協力いただき、なんとか完走することができた、というものです。参加者の皆様、関係者の皆様に、この場を借りて御礼を申し上げます。
   
 経緯の詳細については、先日のブログをご覧ください。
   
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 ところで、一夜あけて考えてみて、何が、このワークショップのデザインとして新しかったのかを、すこし俯瞰的に考えて見ました。
       
 端的にもうしあげれば、unmeet@neomuseumというワークショップには
  
 オンラインでは、通常、不足しがちな「共通体験」と「共通感覚」が生まれていた

 のではないか、と思います。
  
 これらは三宅さんや岩田さんらがデザインしてツールを媒介してつくられてものです。ワークショップで使うツールは、前日までに、参加者の各家庭に送られておりました(関係者の皆様、お疲れ様でした!)。
      

     
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 まず、圧倒的だったのは「おそろいのTシャツ」「おそろいの壁紙」であったと思います。これで「舞台」が生まれ、「さっきまで見知らぬ人々同士」が「わたしたち」になりました(同じ衣装に身を包む、わたしたちのアイデンティティが生まれる)。
     

    
 これらのツールに、けいとさん、ひえこさん(劇団バンビ)らが行ったミュージックビデオ(みなでダンスをする)を即席でつくるワークがあったおかげで、圧倒的な「共通体験」が生まれました。「わたしたち」を、さらに強固な「わたしたち」にするためには、「共通のコト」が必要です。
    
 通常、わたしたちがよく知るオンラインワークショップといえば、
     
 ・ひとによっては画面オフ
 ・どこからアクセスしていて、何をしているかも
 ・誰が参加しているかもわからない
 ・コンテンツは一方向で送信
 ・内容は認知面に偏り、身体性があまりない
    
 ものも少なくないのですが、これらのワークで「今、ここにいて、同じことを楽しんでいる、わたしたち」という気持ちが生まれたように思います。
    

     
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 ふたつめは「共通感覚」です。
 実は、先ほどの写真をもう一度見ていただきたいのですが、今回、岩田さん、三宅さんらから郵送されたツールのなかには「チョコレート」と「紅茶」がはいっていました。
    
 ワークショップがはじまる前に、同じ紅茶をいれて、みなで飲む。
 ワークショップの途中で、疲れたときには、みなでチョコを食べる。
    
 同じものを、同じタイミングで食べる経験と共通感覚を生み出すべく、これらのものは贈られていたのだと思います。 つまり、共飲・共食を通じて、感覚を共有することができたのだと思います。実際、紅茶のなかにはアールグレイ。ベルガモットの香りがよいものもおくられていました。
    
 考えてみれば、オンラインワークショップでもっとも欠けているのは、「におい」や「あじ」なのです。
    
 人間の豊かな五感のなかで、「見る」と「聞く」はオンラインワークショップでも実現できますが、「におい」や「あじ」は、なかなか難しかった。
    
 今回のワークショップでは、同じものを、同じ瞬間に食べたり、かいだりすることでこれを擬似的に再現できました。先ほどの共通体験とあいまって、共通感覚は、さらに強固な「今、ここにいるわたしたち」をつくりだしていきます。
     
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 もちろん、この他にも、「吹き出しツール」と「水性ペン」などで、画面を通してコミュニケーションをしたりするなど、面白いデザインがありました。
  
 ちなみに、、、2日前にオンラインワークショップは終わったのですが、実は、ネット上では、このワークショップのリフレクションを「短歌」で寄せるアフターフォロー?が続いています。昨日、三宅さんから新たなミッションカードが追加されました。短歌でリフレクションというのも面白いものです。
 
  
   
吉野にて
逢えるその日を
待ち焦がれ
逢うと逢わぬの
意味を見つける
(中原淳)  
  
オミクロン
ああオミクロン
オミクロン
おまえも、おれも
今を生きてる
(中原淳)
  
 失礼しました(許可がとれていないので、わたしの駄作だけ・・・)。
  
 いずれにしても、今回のワークショップは、おそらく
  
 一手間かけて、オンラインワークショップを楽しくしようとするひとびとに、様々なヒントを投げかけるもの
   
 になったのではないかと思います。
   
 もちろん、その実現には「一手間」かかるし、コストもかかる。実際、参加者は今回のワークショップに1万円の参加費(実費)がかかっています(企画者側はボランティアで運営しています)。
    
 しかし、一手間かかるけど、楽しい。
 一手間かかるけど、ここは腹をくくって、やりきりたい。
 そういうオンラインワークショップには、こうした「一手間」がこれからさらに工夫されていくのだろうな、と思います。
  
 そして、ここには、オンラインワークショップの未来にまつわる、2つの方向性も見えて生きます。
    
 ひとつの方向性は、
  
・500名ー1000名が画面オフで聞いている、コンテンツを渡すだけのオンラインセミナー(オンラインワークショップ)
  
 です。これはこれからも爆増していくでしょう。
   
 もうひとつの方向性は、
  
・ツールなどに一手間かけて共通体験と共通感覚を生み出すハイエンドなオンラインワークショップ
  
 の二つの方向性です。
  
 もちろん、この2つの「極」のあいだには、グラデーションが存在し、目的に応じて「一手間」の範囲と深さが変わってくるのでしょうけれども・・・。
    
 いずれにしても、ここから、オンラインワークショップの新しいデザイン文法がうまれることを、願っています。
 
 最後になりますが、参加者のみなさま、スタッフのみなさま、本当にありがとうございました。
 今回企画でともにご一緒させていただいた上田信行先生、井上佐保子さん、石戸谷直紀さん、井上けいとさん、秋月ひえこさん、三宅由莉さん、いわた花奈さん、曽和具之先生にも、心より感謝いたします。
   
 次回は、ぜひ、吉野でお会いしましょう!
    
 そして人生はつづく
   

    
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下記のURLのショップから、今回のスタッフのTシャツと共創ツールの書籍の予約販売をなさっているそうです。ここから購入してくださった方にはツールのおまけつきだっそうです。もしよろしければぜひ! 
  
ワークショップとツールの世界は、さらに深化していきそうですね。
    
torois maison online shop
https://troismaison.official.ec/p/00001
   
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 職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS(オーディ・アトラス)」が多くの職場で使われはじめています。サーベイはもとより、それをいかに「フィードバック」するかに焦点をあてたツールです。ワークショップも開発しております。どうぞご笑覧くださいませ!
   

職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS」 (パーソル総合研究所・中原の共同開発) 
https://rc.persol-group.co.jp/consulting/survey/service/od-atlas.html
     
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新刊「チームワーキング」がオンライン管理職研修になりました。JMAMさんからのリリースです(共同開発をさせていただいた同社の堀尾さん、ありがとうございました。中原は共著者の田中聡さんと監修をつとめさせていただきました)。どうぞご笑覧ください! 
     
リリースしました!「チームワーキング研修版」
https://www.jmam.co.jp/hrm/training/special/teamworking/
   
 書籍「チームワーキング」おかげさまで「重版」を重ねております。応援いただいた皆様に心より感謝いたします。
   
    
 
https://amzn.to/3esCOrW
           
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ニッポンのチームをアップデートせよ!           
     
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ひとづくり・組織づくりの大学院での「学び」とは?
https://ldc.rikkyo.ac.jp/news/
       
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中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
       
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。1カ月間は無料トライアルだそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
     
強みの自己認知と意欲を高める『ポジティブ1on1』
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仲間から実際に認められた行動のデータから、自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加されました。職場における相互称賛を、自分の強みの発見と目標設定に役立てられます。
 
自身の強みと職場での関係を定期的に把握できるレポーティング機能も追加!
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000059483.html
   
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
    
ピアトラストお問い合わせ
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ピアトラストの効果まとめページ
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