2022.1.18 08:47/ Jun
研修は「びっくりするくらい」詰め込めない!
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せんだって「研修開発ラボ」という、「研修企画・研修開発のスキル」を学ぶ人材開発担当者向けのコースを実施させていただきました。
研修開発ラボ
https://jinzai.diamond.ne.jp/lab/
このコースは、中原が監修をつとめ、関根雅泰さん(東大中原研究室OB:株式会社ラーンウェル)、鈴木英智佳さん(株式会社ラーニング・クリエイト)、島村公俊さん(慶応MCCラーニングイノベーション論卒業生・講師ビジョン株式会社)らの専門家が講師をおつとめになっているコースです(ダイヤモンド社さん主催:広瀬一輝さん、永田正樹さんご担当)。
関根雅泰さん(株式会社ラーンウェル)
https://www.learn-well.com/
鈴木英智佳さん(株式会社ラーニング・クリエイト)
https://learning-create.jp/
島村公俊さん(講師ビジョン株式会社)
https://koushi-vision.co.jp/
参加者のみなさまはもとより、登壇くださっている3人の先生方には、この場を借りて御礼を申し上げます。ありがとうございます。
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研修開発ラボでは、
1)研修開発、研修転移、研修評価の実務的知識を学ぶ
2)参加者が自らの研修企画をデザインする
3)様々なフィードバックをえた上で、研修企画をブラッシュアップして実践する
ことをめざします。
せんだっては、中原がファシリテーターとなって、受講生ひとりひとりの研修企画を素材として、みなで議論し、相互にフィードバックさせていただく、いわゆる「ゼミナール」を実施させていただきました。
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皆さんのおもちになった研修企画は、どれも素晴らしいもので、これからの研修転移(研修で学んだことが実践されること)が期待されます。今回のフィードバックの機会をへて、さらにブラッシュアップされることが楽しみです。
が、一方、このセッションを通じて、僕自身は、冒頭のことを常に考えていました。
それが冒頭の
研修は「びっくりするくらい」詰め込めない!
ということです。
といいますのは・・・今、仮に、研修の「尺(長さ)」を「10」として、このことを考えて見ましょう。
まず、研修の尺である、この「10」が、まるまる全部「コンテンツを伝える機会」として使えるかというと、実際の研修デザインでは、まったくそんなことはありません。
・・・と申しますのは、たとえば、研修の最初には、経営陣や講師からの「目的の打ち込み」の時間、参加者自身に与えた事前課題のチェックなどの時間、アイスブレイクの時間などが入り、おそらく「2」ほどを使ってしまいます。
目的の打ち込みの甘い研修は、やる意味がない
と断言していいほど、冒頭の時間は重要です。だから、ここはしっかりと丁寧に行い、参加者を「同じ船」に載せていきます。
また、研修の最後には、アクションプランづくり、アクションプランの吟味と発表、さらには宣言、振り返りなどの、研修転移を高める工夫が入ってきます。
研修転移を高める努力がない研修は、やる意味がない
ので、ここでもたっぷり、「2」ほどの時間を使います。
そういたしますと、10ー(2+2)=6ということになり、残りは、わずか「6」です。
ひとつの「コンテンツ内容」を伝えるのに、レクチャー+ワーク+全体共有などの多様なアクティビティを必要とするということになると、コンテンツにもよりますが、ひとつのコンテンツあたり「2」を使うとします。
ということになりますと、「6 / 2=3」。
つまり、一回の研修で伝えられるものは、3メッセージ(3コンテンツ)くらいということになるのです。
一方、研修開発のビギナーであればあるほど、10の尺があったら、10つのメッセージを伝えられると思っている方がいます。さすがにそこまではいかなくても、5メッセージくらいは伝えられると思っている方はザラです。
もちろん、メッセージを「講師がしゃべること」はできるかもしれません。しかし、発したメッセージを受講生が拾って、きちんと実践できるかどうかは、また別のお話です。
相手にしっかりとメッセージを受け取ってもらい、実践可能な状態にもっていこうとすると、丁寧に丁寧に時間をかけることが必要になるのです。
もちろん、この10とか、2とかは、あくまで「比喩」です。
ぜひ、ご理解いただきたいのは、
研修とは、思っている以上に、詰め込めない!
ということであり
研修とは、何を伝えるかよりも、何を伝えないか、が重要になるということです。
別の例えをいたしますと、
研修デザインとは、伝えたいものにスポットライトをあてて、それ以外は、思い切って、漆黒の闇にすること
です。
そうすることで、伝えたいものに視点をあわせ、確実に伝えることができるのです。
別の言葉でいえば、
研修にとって最も大切なことは、何をしゃべるかではなく、何をしゃべらないか
ということになります。
しかし、このことは言うのは簡単なのですが、実施するのは難しいものです。ついつい、あれもこれも、それも、どれも、というかたちでコンテンツ(オカズ)を詰め込みたくなるのです。 つまり、あれも、これも、それも、どれも、たくさんの「オカズ」が楽しめる「幕の内弁当」のような研修をつくりたくなるのです。
昨日、わたしは研修参加者の皆様に、こう申し上げました。
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皆さんには「記憶に残っている幕の内弁当」がありますか?
多くの方々は「ない」とお答えになると思うのです。
幕の内弁当には、さまざまなオカズが入っていますし、さまざまなオカズをわたしたちはその時点ではちょっとずつ楽しむことができます。
しかし、幕の内弁当は、どの幕の内弁当を食べても同じです。また、いろいろな種類を食べるので、食べたものの記憶は残りません。
記憶に残したいのなら、一点にしぼって、特徴をだすことです。たとえば、北海道森町の「いかめし弁当」、横川駅の「釜飯弁当」のようにね。研修は、あれも、これも、それも、どれも、並べることではありません。伝えたいメッセージを絞りにしぼって、確実に理解してもらい、実践してもらうことです。
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あなたは「記憶に残らない、幕の内弁当のような研修」をつくっていませんか?
自戒を込めて
そして人生はつづく
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職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS(オーディ・アトラス)」が多くの職場で使われはじめています。サーベイはもとより、それをいかに「フィードバック」するかに焦点をあてたツールです。ワークショップも開発しております。どうぞご笑覧くださいませ!
職場診断ツール&ワークショップ「OD-ATRAS」 (パーソル総合研究所・中原の共同開発)
https://rc.persol-group.co.jp/consulting/survey/service/od-atlas.html
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