2021.7.9 08:13/ Jun
現場にかかわる専門家は「2つの言葉」をもっていなくてはなりません。
ひとつの言葉が「専門家としての言葉」。いわゆる「専門用語」です。
もうひとつは現場のひとの話を聞き、彼ら / 彼女らと話し合える「現場の言葉」です。
現場にかかわる専門家は、「現場の言葉」に耳を傾けます。それをときおり「専門用語」に翻訳して、考えます。
しかしながら、彼 / 彼女が自分の思考を外部に語るときには、あえて専門用語をそのまま用いず、現場の言葉に戻して、現場の方々とフラットに話し合います。
この「知的な往還作業」は、とっても骨が折れるものですが、専門家が現場とかかわるときには、これを行わなくてはならないのです。
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河合隼雄・鷲田清一さんの対談「臨床とことば」のなかに「言葉をほぐす」という概念がでてきます。
ここで「言葉をほぐす」とは、専門家が、現場の方々と対峙してしまうとき、あえて「専門家」としての言葉を用いず、それらをあえて「ほぐし」て、現場の方々と話し合うことをいいます。
言葉とは「境界」です。
「いかにも、専門用語でございまっせ!」という、専門家による専門言語の使用は、意図的であれ、非意図的であれ、「専門家と現場の人々のあいだ」に「境界」をつくりだしてしまうのです。
専門家の彼、彼女が「どんなに実務に貢献したい」「どんなに研究の力を役立てたい」といっても、それは届きません。
「いかにも、専門用語でございまっせ!」という言葉の使用は「わたしは、あんたとは違う専門家ですけれども、何か?」と言い放っているのと同じことです。そんな専門家に、現場の方々は、心のシャッターをガラガラ下ろします。不注意な専門家は「シャッターガラガラワードの連発」します。
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それでは、専門家は、専門用語を「捨てる」べきなのでしょうか。専門用語とは「必要ない」ものなのでしょうか。
さすが、二人の碩学は、そうとは1ミリも考えていません。
物事を客観視してみたり、体系化したりするとき。
物事を分節化して、詳細を分析するとき
専門用語は、どうしても必要になるのです。それは、言葉のもつ、もうひとつの性質から導き出される、もうひとつの論理的帰結です。
つまり、
言葉(専門用語)は「スポットライト」
なのです
曖昧模糊、魑魅魍魎、不確実性満載の、この世の中において、わたしたちは、言葉を用いて、世界を照らし出します。そうしたことを可能にするのが専門家であり、専門用語なのです。だから、専門用語は必要です。
言葉(専門用語)は「境界」をつくる
その一方で
言葉(専門用語)は「スポットライト」のように世界を照らし出す
のです。
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現場にかかわる専門家とは、かくのごとく、非常に高度な言語技術を要求されます。
また「現場とかかわること」は、自分をひたすらに「ヴァルネラブル(弱く・矛盾した立場)」におくことになります。
専門家の世界にだけ閉じこもっていれば、専門用語だけで饒舌に話せるのです。現場とかかわることは、自分を「無知の知」の立場におかなくてはなりません。
現場と関わるなんて余計なことをしなければ、自分をヴァルネラブルな立場におく必要もありません。
だから・・・口にだしてこそ言いませんが(だから、不肖・中原が、かわりに、こっそりと教えましょう!)、
専門家のなかには「現場が嫌いな方」が、一定数います
現場の方々と話しあうのが、面倒くさいのです。
そして、
専門家のなかには「現場を低く見る」ひとも、一定数います
なぜなら現場とは「自分のもつ言語体系」がそのまま通じない「やっかいな世界」だからです。
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不肖・中原は「現場が好物」です。
ドロドロとした魑魅魍魎、生臭い世界を目の前にすると、血湧き肉躍ります。
これをどうやって、現場の方々とともに「見える化」しようか。
ここからどうやって「みんなの対話の材料」をつくりだそうか
と考えます。それを考えていると、夜も眠れません。そんなことを繰り返しているうちに、あっという間に20年が経ちました。
難しいことはありません。 現場の方々の前で、「かっこつけなければいい」だけです。
既存の専門用語で説明つかないな、と思ったら「わかりません・・・いっしょに考えませんか?」といえばいい。「なんか、一緒に、やってみませんか?」と言えばいいだけです。
しかしながら・・・他人のことは知りません。大の大人が、どのように意志決定したとしても、それは「お好きになさいな!」です。お互いに、自分は、自分の仕事をしましょう。
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「実務と研究」「実践と科学」・・・そうした世界に魅了されているみなさん・・・あなたは、それでも「現場にかかわる専門家」になりたいですか?
あなたは、現場とかかわるとき「言葉をほぐして」いますか?
あなたの言葉は、現場の方々に届くように「ほぐれて」いますか?
そして人生はつづく
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