2021.5.26 08:37/ Jun
講師・教師は、なぜしゃべりすぎてしまうのか?
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仕事柄、「教える立場」の方々の悩みや葛藤のお話を聞くことが少なくありません。そこには一定のパターン(繰り返される傾向)がありますが、そのなかでも、頻発するのが冒頭の問いです。
曰く
「ダメだってことはわかっているんです。でも、わたしは研修や授業で、わたしばっかり話してしまうんですよね。
いや、頭ではわかっているんです。学ぶ側にしゃべらせなきゃ、と。だから発問をバンバンしています。
でも、気がつけば、相手ではなく、自分がしゃべっている。むしろ、学ぶ側は、キョトンとしている。
そういうキョトンとした学ぶ側を見ていると、より落ち込んで、焦ってくる。それで、わたしは、今日も、しゃべりすぎてしまう。あんなに問いはなげているのに、わたしが答えてしまっている」
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その方その方によって、細かい症状は違いますが、だいたい現場で繰り返されているのは、こういうことかな、と思います。
もちろん、だからといって「教える側がしゃべること」が必ずしもネガティブなわけではありません。「学び手側の思考・行動変容」につながりすさえすれば、「手段」はさして問題ではありません。
なかには「ザ・話芸」を駆使して、学び手側をひきつける方もいらっしゃいます。
しかし、シャバでは、実際には、そうならない事案がまことに多いものです。
先ほどの発話にありますように、迫り来る「教師・講師のしゃべくり」に学び手側が圧倒され、受け身になってしまうことも多々あるようです。ですので、このことには、一定の注意が必要です。
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しかし、それでは問いを先にすすめましょう。
いったい、わたしたちは「しゃべりすぎてしまうこと」をいかにして、わたしたちは防止すればいいのでしょうか。
皆さんだったら、どのように考え、何をしますか? あなたの答えはなんでしょうか?
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この問いにはたくさんの答えがあると思います。
しかし、僕が思う最も有力な答えのひとつは、驚くほど、シンプルです。
それは「待つこと」です。
より具体的には、講師・教師の立場にあるひとが、学び手側に「発問」したとしたら、その後は、腹をくくって、相手からのリアクションを「待つこと」です。相手のリアクションを「待ち焦がれる」まで「待つこと」です。
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かつて「発問」と「答え」のあいだには「間(MA)」が必要だと喝破したのは太田堯さんです(都留文科大学の山辺恵理子さんに教えてもらいました)。
しかし、教える側にたつものは、こうした「間」や「待つこと」が、実は「怖い」のです。恐怖は3段階でやってきます。これを「待つことの恐怖3段階モデル」と僕は読んでいます。
まず第一の恐怖は、そもそも待つこと以前、すなわち「主導権を手放すこと」にあります。
発問(問いを発する)とは、自分がしゃべるのではなく、相手に答えてもらうことです。ですので、教える側は、まず、教える側がもっている「イニシアチブ(主導権)」を学び手側に「リリースすること(手放すこと)」を行わなくてはなりません。
でも、やったことのある方なら、すぐにわかるとは思いますが、これは怖いなのです。
なぜなら、相手が何を言ってくるのか、そして、その発問自体が受け取られるかどうか、わからないからです。
第二の恐怖。
それは「間」、そのものにある恐怖です。間には沈黙が生まれます。教える側にたつものは、その「沈黙」にじっとこらえ、待たなければならない。沈黙は気まずいものです。だから、沈黙に多くの人は耐えられない。
一方、問われている側からすれば、それは「沈黙」ではなく、発問に「考えるための時間」です。問われている側からすると、それは、必要な時間なのです。
しかし、他方、教える側にたっているものにとって、この「長い時間」は、主導権を相手に預けている「宙ぶらりんの時間」です。そこにながれる沈黙は「永遠のもの」のように感じられます。
そうして、ついに「根負け」してしまうのです。
自らの饒舌な言葉で、この「間」を埋めてしまう。自分で問うた「問い」に、自分の言葉で「答え」を埋めてしまう。かくして、学ばれた側は主導権を奪われます。
主導権を奪われた学び手側は、もう二度と、思考し、口を開こうとしません。それはいったん主導権を渡されたのに、それを取り上げられたから、すなわち「裏切られた」からであり、しかも、その方が、実は「楽」だからです。だって、考えなくていいじゃん。発言するリスクをとらなくてもいいじゃん。だから「楽」です。
かくして「饒舌な教師がはりきる授業」には「教える側」と「学び手側」に「共犯関係」が生まれます。
「しゃべくりつつ、待てない教師」と「沈黙して、考えない生徒」は「共犯」なのです。
もっといいましょう。
「相手に考えさせないで押しつけること」と「自分の頭で考えずに沈黙を守ること」は「共犯」であり「コインの裏表」なのです。
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最後に「第三の恐怖」・・・それは、学び手側が返してきたボール(答えや質問)に教える側が「適切」に答えられるか、どうか、ということに関する恐怖です。
学び手側からなげられた「ボール」を、適切に打ち返せなかったらどうしよう。教師は、本質的に、この恐怖とも闘う必要があります。
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さて・・賢明な皆さんは、もうおわかりでしょう。
そうです。
結局「インタラクティブに教えること」とは、こうした「恐怖」と闘うことです。
「インタラクティブに教えること」とは「リスク」をとって、学び手側を信じて「委ね」、「待ち焦がれること」です。学び手側が、きっと何らのリアクションを返してくれることを信じてね。
大丈夫。
あなたが真摯に問うていれば、相手は、きっと答えてくれるはずだから。
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今日は「教えること」と「待つこと」の関係を、「教えることにまつわる恐怖」とからめて考えてみました。そして、このことは民間企業での上司と部下の関係性にも言えることのようにも思います。
せんだって、ヤフーの本間浩輔さんと、ある研修で登壇していた際、本間さんは
「(1on1では、上司は部下に)問いを差し出したら、20秒待つのだ」
とおっしゃっていました。まさに慧眼だと思います。
今、仮に、舞台を「授業」から「1on1」にうつしますと、「上司がしゃべくりまくる1on1」が生まれる理由は、僕が今日論じた「講師・教師がしゃべりすぎになってしまう理由」と本質的には変わらないのかもしれません。
その最大の理由は「待てない」からです。
そして相手を信じて、リスクをとって「パワー」を手放し、待つことができないからです。
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今日のあなたは、学び手の反応を、待てていますか?
今日のあなたは、恐怖3段階モデルに陥っていませんか?
そして人生はつづく
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