2021.2.12 08:29/ Jun
あなたのワークショップは「みんなで、ゲームやって、あー、楽しかったよね」の「お祭りワッショイ」状態になっていませんか?
・
・
・
研修やワークショップなどで、よく多用されるものが、ゲームやエクササイズなどのアクティビティです。
いわゆる座学で、一方向的に講師のいうことを聞くだけよりは、学び手が、積極的に頭を動かし、楽しく手を動かし、没頭できる活動があったほうがいい。
かくして、ゲームを活用したアクティビティ(ex. ゲーミフィケーション)などが、研修・ワークショップなどで活用されます。いまや、企業研修は、種類にもよりますが、「完全無欠の座学オンリー」を探す方が難しいのではないでしょうか。
もちろん、そのこと自体に、問題があるわけではありません。受け身でやらされ感漂いながら授業・研修を受けるよりは、楽しく手を動かした方がいいのだ、と僕は思います。
しかし、一方で、授業・研修をつくる側としては、ここに、あるリスクが忍び寄っていることも、把握しておかなければなりません。
きちんと研修・ワークショップがデザインされていない場合、
「ゲームなどで楽しく学ぶ」ことは、「楽しむこと」自体が「目的」になり、「お祭りワッショイ」状態になってしまいがち
なのです。
別の言葉でいえば、
「みんなで、ゲームやって、あー、楽しかったよね」で「終わり」になってしまい、「楽しめたこと」が目的化してしまう
ということです。
もういちど別の言葉でいえば、
「あのときは、楽しかったね・・・でも、結局、何のためにやってたんだっけ」という状態に、学習者が陥りがちです。
(もちろん、研修やワークショップのなかには、楽しむことそのことが目的であるものもあるかもしれません。その場合は、この議論の範囲外です)
▼
対して、本来、研修・ワークショップなどでは、学習者に考えて欲しいこと、見直して欲しいことなどの「目的」があるはずです。
「楽しさ」は、その目的を達成するための「手段」です。しかし、ともすれば「楽しさ」は、それ自体が「目的」にすりかわり、「本来の目的」を忘れさせてしまう傾向があります。
ですので、途中で学習者に行ってもらうゲームが「楽しければ、楽しいほど」、同時に、しっかりと対策を立てなければなりません。「楽しければ、楽しい」ほど、油断はできないのです。
これを避けるためには、2秒でパッと思いついただけでも、たとえば、下記の3つくらいの対策があるでしょう。
1.事前に学習者に「目的の打ち込み」をしっかり行い、それとゲームを関連付けて、そのうえでゲームに入る
2.ゲームが終わったあとは、もう一度、目的に立ち返る
3.ゲームが終わったあとは、このゲームから何を学べたのか、何が教訓として持ち帰ることができるのかを、自分の文脈に置き換えて考えてもらう
・
・
・
などなど。
もちろん、これ以外にも多々あるとは思いますが、要するに「事前」と「事後」が重要である、ということです。
ちなみに、このことは、間に「対話」を挟んだりするときも同じです。
あいだに差し込む活動が、
インタラクティブであれば、あるほど
楽しければ、楽しいほど
没頭できるものであれば、あるほど
ワークと、事前と事後のあいだには「段差」が生まれます。その段差をしっかりと「埋めて」あげることが重要です。
▼
今日は、ゲームなどの「インタラクティブで楽しい研修」に潜む罠について書きました。
実は、今、中原ゼミの3期生が、ウィズコロナ時代の人事課題・組織課題(中途採用者、オンラインOJT、オンラインミーティング、オンラインフィードバック)をテーマにしたミニワークショップを開発し、それを3月6日に公開させていただくべく準備を進めております。
【参加者募集中・無料オンラインイベント】ウィズコロナ時代の最新研修・ワークショップを企画せよ! 中原ゼミが贈るワークショップの祭典「20’s展」開催!
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12613
このイベントには、すでに300名弱の方々からお申し込みをいただいております(おそらく、近日、申し込み終了になります・・・どうかお早めに!)。
学生たちのつくるミニワークショップのなかでも、ゲームやエクササイズが多用されています。しかし、そういうワークを間に挟むときこそ、注意が必要です。
あなたのワークショップは「みんなで、ゲームやって、あー、楽しかったよね」の「お祭りワッショイ」状態になっていませんか?
そして人生はつづく
ーーー
※昨日は、4年生の卒論報告会でした。はじめての学部生を、送り出しました。ふぅ。という感じです。彼らは、これから社会にでます。社会に出て行く彼らに、少しだけ話をしました。それは「働くこと」についてです。
僕は、「働くとは、届けることだ」と思っています。自ら動き、価値を生み出し、それをしっかり、社会の誰かに「届けること」です。これが、僕にとって「働く」ということです。
あなたがたは、これまで、社会の多くの人々から、「届けられて」きました。今度は、社会の一員として、それぞれの領域で、それぞれの職種で、価値を、社会の誰かに、あなたなりの価値を「届けて欲しい」と願っています。
かつて、森鴎外は、仕事のことを「為事(しごと)」と書きました。事を重ねることが仕事ではありません。「誰かの為」に、行うことが、わたしは、仕事だと思います。ぜひ、「為事」をなしてください。為事は、君らが思っているよりも、きっと楽しいです。
教師の為事とは、社会に「価値発揮できる学生」を送り出すことだと、わたしは思っています。貴殿たちが、社会に出て活躍していただければ、わたしは、社会に価値を「お届け」できたことになり、「私自身の為事」をなしえたことになります。どうか、心ゆくまで知的に暴れてください。
ふぅ。
これで、教師として、もう、何も教えることはありません。
もう、僕は、あなたがたの教師ではありません。
これからは「中原先生」ではなく、「中原さん」と呼びなさい。
社会へようこそ!
卒業おめでとう!
ーーー
【新刊予約発売中】
新刊「学校がとまった日」の特設サイト完成!&予約販売開始中! 緊急事態宣言・全国一斉休校で「学びを継続できた子どもの特徴」は?学びをとめないために学校にできることは?:書籍の内容が概観できます!どうぞご覧くださいませ!
新刊「学校がとまった日」の特設サイト
http://toyokan-publishing.jp/stop/index.html
新刊「学校がとまった日」予約販売開始中(AMAZON)
ーーー
【好評発売中】1on1の失敗・成功ケースをまとめ、映像教材を中原とPHP研究所さんとで開発しました。失敗しない1on1について、具体的なイメージをもって学ぶことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
ーーー
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます!
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q
ーーー
ラーニングエージェンシーさんと中原研究室の共同研究により開発した「女性の視点で見直す人材育成:トランジションサポートプログラム」のご提供がはじまっています。ライフステージに応じて、役割移行を支援する、きめ細かい研修となっています。共同研究の成果は書籍「女性の視点で見直す人材育成」としても刊行されています。
女性の視点で見直す研修 トランジション サポート プログラム
https://www.learningagency.co.jp/service/transition/
ーーー
。AMAZONの各カテゴリーで1位記録!(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。
長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
また残業学プロジェクトのスピンアウトツールである「OD-ATRAS」についても、ご紹介しています。職場の見える化をすすめ、現場マネジャーが職場で対話を生み出すためのTipsやツールが満載です。ご笑覧ください。
対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/learning/od-atlas/
ーーー
「研修開発ラボ」(ダイヤモンド社)が、フルオンライン化して大幅リニューアルしました。人材開発の「基礎の原理」を学ぶことのできるトレーニングプログラムです。どうぞお越しくださいませ!
研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
https://jinzai.diamond.ne.jp/seminar/SEMINAR0495/
ーーー
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
ーーー
中原研究室では、一般社団法人ピアトラストさんとの共同研究で、相互称賛アプリ『Peer-Trust(ピア・トラスト)』の研究を行っています。
相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が導入された職場では、職場のメンバー同士が、お互いの日々の仕事を観察し、そこにキラリと光るものがあったときに「称賛カード」というものをメッセージとともに送りあいます。利用人数20名までは「無料」だそうです。ご興味があえば、ぜひ、ご利用くださいませ。
あなたの会社のリーダー・管理職は「部下の強み」を観察できますか?:相互賞賛アプリ「ピアトラスト」が示唆する「リーダーの条件」とは?
https://www.nakahara-lab.net/blog/archive/12062
ーーー
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約31000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun
最新の記事
2024.12.25 10:57/ Jun
2024.12.8 12:46/ Jun
2024.12.2 08:54/ Jun
2024.11.29 08:36/ Jun