NAKAHARA-LAB.net

2020.12.18 08:33/ Jun

あなたのテレワークの生産性は「何」に左右されていますか?

 テレワークの生産性は「何」が決めているのか?
  
  ・
  ・
  ・
   
 昨日の大学院ゼミでは、英語文献購読を加藤走(かとう・かける)さんと伊倉康太(いぐらこうた)さんが担当してくださいました(お疲れ様&感謝)。今日は、そのうち、加藤さんのご紹介いただいた論文をご紹介します。
    
 この論文は、France Be ́langerさんとMary Beth Watson-Manheimさんによる「A multi-level socio-technical systems telecommuting framework」と題された論文で、その要旨を、わたしの主観が入りまくりなようやくで、ざくっざくっと申し上げますと、下記のようなかたちになります。
  
1. 在宅勤務は、在宅勤務単独で考えるのではなく、社会・技術システムの一部として把握する必要がある
  
2. 在宅勤務は、人事システム、技術システム、組織システムといった「サブシステム」の中に、それぞれ位置付けられるものであり、この「マルチシステム」の構造(フレームワーク)のなかで理解されなければならない
  
3. よって在宅勤務の生産性というものは、在宅勤務単独では決められない。マルチシステムのなかでこそ、決まる
  
4. さらにいえば、在宅勤務は、家庭環境の影響を受けうる。つまり、在宅勤務の成否は、家庭というシステムにも埋め込まれている。
  
 ・
 ・
 ・
  
 ていわれてもね・・・。
  
 サンド的には「ちょっと、何、言っているかわかんない!」
  
 だよね。
  
 そこで、2人の著者に便所スリッパで後頭部をひっぱたかれるのを覚悟して、例をだしながら、すごく平たくいうと、こういうことかと思います。
  
  ・
  ・
  ・
  

最近さー、在宅勤務の生産性が議論されるとき、「リモートワーク仕事術」みたいなもんを、ちゃちゃっと研修で導入すれば、生産性があがるよね、っていう考え方があるけど、それ、単純すぎね? 安易すぎね?
  
ていうかさー、在宅勤務がうまくいくか、いかないか、なんて、もっと複雑なわけよ。
  
在宅勤務がうまくいくかどうかってのは、どういう組織なのか、どういう上司がいて、どういう仕事してっか、どういう人事システムなのか、どういうツールを提供されるかによって、決まるわけ。
  
在宅勤務の成否って、そういうふうに、多くの要因に影響を受けて決まるんですよね。だから、それをひとつひとつ整備していかなければならないんです。
    
だからさ、在宅勤務のことを考えるときには、マルチレベル(多くの要因)で考えなきゃねー。だから、なんか枠組み(フレームワーク)つくって、整理して考えなあかんわけです。
  
それをさ「わたしの仕事術」で、ちゃちゃっと数時間の研修受けて、生産性をあげよう、っていったって、そうはいくかのイクラちゃん!なわけよ。
  
もうちょっと深い話をすると、在宅勤務って、会社の要因だけじゃ決まらないわけですよ。だって、在宅勤務って、会社と家庭をつなぐんでしょ。
  
てことは、在宅勤務の成否ってのは、おうちにいる家族の影響もうけるでしょ。まず、在宅勤務者が、男性か女性なのかによっても、全然違う。
  
一般に、在宅勤務には「性差」があるんです。一般には、男性の方が楽。女性は厳しい。女性の方が、仕事と家庭の両立で悩みやすいんだよねー。
  
あと、どういうおうちに住んでいるのか、部屋は確保できるのか、どうか、パートナーは仕事をしているのか、そうでないかによっても決まるでしょ。
  
たかが在宅勤務、されど在宅勤務ですな。いろいろ考えることがあるんで、フレームワーク(枠組み)をつくって、考えてみたほうがいいんじゃないの?

 
 ・
 ・
 ・
  
 詳細は、本文を、ぜひ、お読みいただければと思いますが、だいたい、こんな感じです。まぁ、こう書いてみると、あたりまえのことのようにも思いますが、頭が整理される論文でした。
  
 ちょっと専門的な話をしますと、在宅勤務の研究をするときに、どういった要因を統制変数にすればよいのか、考えるきっかけになりそうです。
  
 個人的には、
  
 在宅勤務の生産性は「家庭環境」の影響を受ける
  
 というのは、まさにそのとおりだと思いました。
  
 パートナーが在宅勤務か、オフィス勤務か?
  
 子どもがいて面倒を見なければならないのか、そうではないのか?
  
 家事労働はどれだけ行わなければならないのか?
  
 そういった要因も見逃せないなと感じます。
 深い。
 
 たかが在宅勤務、されど在宅勤務
  
  ・
  ・
  ・
  
 あなたのテレワークの生産性は「何」に左右されていますか?
  
 そして人生はつづく
  
  ーーー
  
リクルート「キャリアガイダンス」の取材をお引き受けいたしました。特集テーマは「リフレクション」です。リフレクションに関する記事がこちらでお読みいただけます。どうかご笑覧くださいませ!

>リクルート「キャリアガイダンス」「学びに向かう力」を育むリフレクション 
http://souken.shingakunet.com/career_g/?fbclid=IwAR3M-S3RzAEqOsoKV1SfD6VWbb8uCMNbLMOXo7ZSMAl1FSjCHwZBgVUMpSQ


  
  ーーー
  
中原ゼミ、4年生、全員卒論提出できました!(ゼミ内締め切り)四年生、よく頑張った!今日はゼミ内締め切りでした。
  
3年生のミニ卒もつづけ!
修士2年生のお二人も楽しみにしてますよ! 
  
終わった論文が、良い論文! 
 
 
 
  ーーー
     
【好評発売中】1on1の失敗・成功ケースをまとめ、映像教材を中原とPHP研究所さんとで開発しました。失敗しない1on1について、具体的なイメージをもって学ぶことができます。どうぞご笑覧くださいませ!
     
上司と部下がペアで進める 1on1 振り返りを成長につなげるプロセス
https://www.php.co.jp/dvd/detail.php?code=I1-1-061
   
  ーーー
   
【祝・eラーニング完成!】中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース完成しました。リーダー・管理職になる前には是非もっていたいフィードバックスキルを、PC、スマホ、タブレット学習可能です。ケースドラマでも学べます! 
     
中原淳監修「実践!フィードバック」eラーニングコース:Youtubeでデモムービーを公開中!
https://youtu.be/qoDfzysi99w
   
「実践!フィードバック」コース ありのままを共有し、成長・成果につなげる技術(PHP)
https://www.php.co.jp/el/detail.php?code=95123&fbclid=IwAR2he6Z_PTe3YiahcnCv3z9pNRXvrajPwVaRS8LLAYFkbWVH167qHDfYF5Q    
   
  ーーー
  
。AMAZONの各カテゴリーで1位記録!(会社経営、マネジメント・人材管理・労働問題)。
長時間労働はなぜ起こるのか? 長時間労働をいかに抑制すればいいのか? 大規模調査から、長時間労働の実態や抑制策を明らかにします。大学・大学院の講義調で語りかけられるように書いてありますので、わかりやすいと思います。どうぞご笑覧くださいませ!
  

  
また残業学プロジェクトのスピンアウトツールである「OD-ATRAS」についても、ご紹介しています。職場の見える化をすすめ、現場マネジャーが職場で対話を生み出すためのTipsやツールが満載です。ご笑覧ください。
    

対話とフィードバックを促進するサーベイを用いたソリューション「OD-ATLAS」の詳細はこちら
https://rc.persol-group.co.jp/learning/od-atlas/

  ーーー
   
「研修開発ラボ」(ダイヤモンド社)が、フルオンライン化して大幅リニューアルしました。人材開発の「基礎の原理」を学ぶことのできるトレーニングプログラムです。どうぞお越しくださいませ!
    
研修開発ラボ 特別講座「人材育成の原理・原則を学ぶ」
https://jinzai.diamond.ne.jp/seminar/SEMINAR0495/
  
 ーーー
   

     
「組織開発の探究」HRアワード2019書籍部門・最優秀賞を獲得させていただきました。「よき人材開発は組織開発とともにある」「よき組織開発は人材開発とともにある」・・・組織開発と人材開発の「未来」を学ぶことができます。理論・歴史・思想からはじまり、5社の企業事例まで収録しています。この1冊で「組織開発」がわかります。どうぞご笑覧くださいませ!
    

   
 ーーー
    
【注目!:中原研究室記事のブログを好評配信中です!】
中原研究室のTwitterを運用しています。すでに約31000名の方々にご登録いただいております。Twitterでも、ブログ更新情報、イベント開催情報を通知させていただきます。もしよろしければ、下記からフォローをお願いいたします。
   
中原淳研究室 Twitter(@nakaharajun)
https://twitter.com/nakaharajun

ブログ一覧に戻る

最新の記事

2024.12.8 12:46/ Jun

中原のフィードバックの切れ味など「石包丁レベル」!?:社会のなかで「も」学べ!

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:54/ Jun

なぜ「グダグダなシンポジウム」は安易に生まれてしまうのか?

2024.12.2 08:12/ Jun

【無料カンファレンス・オンライン・参加者募集】AIが「答え」を教えてくれて、デジタルが「当たり前」の時代に、学生に何を教えればいいんだろう?:「AIと教育」の最前線+次期学習教育課程の論点

2024.11.29 08:36/ Jun

大学時代が「二度」あれば!?

「人事界隈」にあふれる二項対立図式の議論は、たいてい「不毛」!?

2024.11.26 10:22/ Jun

「人事界隈」にあふれる二項対立図式の議論は、たいてい「不毛」!?