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2020.12.4 08:06/ Jun

「わかりあえない他者」とのコミュニケーションで心がけたい、たったひとつの「極意」とは何か?

 ひとに何かを伝えるときに、一番、気にしていることは何か?
   
 と問われたら、皆さんだったら、何と答えますでしょうか?
  
  ・
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  ・
  ・
  ・
  ・
  
 僕なら、ただちに、こう答えます。
  
「Inter・View(インター・ビュー)をつくること」
  
  ・
  ・
  ・
  
 はて?
 インター・ビュー?
 今日は、この「風変わりな概念」について考えて見ましょう。
  
  ▼
  
 まず「インター・ビュー」とは、
    
 1. インター(Inter :ひとびとのあいだの)
   +
 2. ビュー(View : 光景)
   
 のことです。
  
 端的にいえば「ひとびとの、脳裏に、同じ光景が思い浮かぶこと」
  
 もともとは、スタイナー・クヴァール (著)、能智正博・徳田治子 (訳) 「質的研究のための「インター・ビュー」という本のなかで、出てくる専門用語です。
   
  
    
 クヴァールは、質的研究の聞き取り調査の極意として、聞き取る者と聞き取られる者が、
  
「共通のテーマについて、2人の人間のあいだに、互いのまなざし・光景」
  
 を共有できるように、聞き取りが行われることが重要だとしました。クヴァールによれば「聞き取り調査(インタビュー)とは、インター・ビュー」なのです。
  
 要するに、ひとから何かを聞き取るときには、自分と相手が脳裏に「同じ光景(Inter-View)」を思い浮かべられるように情報を収集しなければならない、ということです。
  
 そして、聞き取りを行った者が、そのことを、そのほかの他者に伝えるときも、同じことがいえますね。
 自分と、そのほかの他者のあいだにも「同じ光景(Inter-View)」が思い浮かぶように、物事を伝えることが重要だということになります。
  
 これに着想を得て、ややぶっ飛んで考えますと、要するに、複数人とのあいだにコミュニケーションが成立するとは(伝えるー伝えられるの関係が成立するとは)、
  
「ひとびとのあいだで、同じ光景が思い浮かぶこと」
  
 なのです。
 さしずめ、下記のように。
  
  
 
 だから、僕は、冒頭の問い「ひとに何かを伝えるときに、一番、気にしていることは何か?」に対して、それは「インター・ビュー」だと答えました。
  
 僕が本や論文を書くとき、プレゼンをつくるとき、どんなときでも、ひとに何かを伝えるときに考えているのは、
  
 自分と相手のあいだに「同じ光景」が思い浮かんでいるか
  
 です。
 それができるように、言葉を選び、論理をつくります。
 僕と、それを読んでくれる方、僕の話を聞いてくれる方とのあいだに「同じ光景」をつくることだけを夢見て。
        
  ▼
   
 ひるがえって、わたしたちがふだん行っているコミュニケーションを振り返ってみましょう。
    
 あなたと、あなたの周囲のひとびとのあいだ(Inter)では、「同じ光景」が思い浮かべられているでしょうか?
  
 ひとによっては、自信をもって「Yes」と言える方もいらっしゃるかもしれませんが、ちょっと自信のない方もいらっしゃるかもしれません。
  
 わたしとしては、脳裏に「A」の光景を見ている。
 しかしながら、
 わたしの周囲の他者は、心で「A’」の光景を見ているかもしれない。
  
 自己と他者とは、なかなか「わかりあえない」ものです。そして、この「わかりあえなさ」の根源は、
  
「A」を見ているひとが、他者は「A’」を見ていることに気づかないことであり
  
「A’」を見ている他者が、わたしが「A」を脳裏に思い浮かべていることはわからないこと
  
 にあるように思います。
  
  ・
  ・
  ・
  
 あなたと、あなたの周囲の他者は「同じ光景」を見ていますか?
  
  ▼
  
 今日は、コミュニケーションの本質を、クヴァールの「Inter-view」のアイデアに着想を得てお話ししました。
  
 さいごに・・・ちょっとぶっ飛ぶようですが、クヴァールの「Inter-View」というアイデアを考えるとき、僕は、いつも、ある歌詞を思い起こします。余談になるかもしれませんが、最後にそのお話を。
  
 僕が思い起こしてしまうのは、爆発的なヒットを記録した、ある歌の歌い出しの歌詞です。
  
 僕が思うに、この歌詞は、ひとびとのあいだに「Inter-view」を喚起することに成功しているように思います。メロディの秀逸さもありますが、ひとびとが、この歌の背後に「同じ光景」を見たからこそ、爆発的なヒットを記録したのかな、とも思うのです。
  
 その歌とは
    
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  ・
  
 イルカさんの「なごり雪」です。
 1975年発売。僕が生まれた年です。45年前!
    

   
 その歌の歌い出しの歌詞とは・・・
  
「汽車を待つ君の横で僕は

 時計を気にしてる

 季節はずれの 雪が降ってる」
    
  ・
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  ・
  ・
  ・
  ・
  
 どうでしょう?
 なんか・・・脳裏に、「同じ光景」が思いうかぶような気がしません?
  
 あまり、ひとけのない田舎の駅
 季節外れに、ちらつく雪のなか
 静かに、ふたりの男女が汽車を待っている
  
 汽車が来てしまえば、
 ふたりには、別れが訪れる
  
 だから、ふたりは
 汽車がくることを待ってはいるが
 本当は待ってはいない
  
 ただ、いま、この時間がつづくことを
 願っている
  
  ・
  ・
  ・
  
 思い浮かびました?
 これが「Inter-view」です(笑)。
  
  ・
  ・
  ・
  
 ひとびとは、なかなか「わかりあえない」ものです。
 そして、「わかりあえない」からこそ、あのひとと「同じ光景」を見たい、と願うものなのかもしれません。
  
 人文社会科学は「役にたつね」、面白いでしょ。
 そして人生はつづく
  
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